番外編33:生存データ(水)の調達システムが招いた完璧なドミノ倒し 〜羞恥と経血に濡れたワンピースをロックオンする狂気のレーダー、そして窓なき密室で執行される歪んだ救済ロジック(ノアの方舟)〜2
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の寺社、教会、特定の宗教団体、結婚相談所、およびマッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の宗教婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の信仰や職業を誹謗中傷する意図は一切ございません。
ガチガチと震えていた狗飼の身体の震えが、ピタリと止まる。
泥水をすすり、生きるために必死にのうつ回っている生存者たちから放たれる、ドロドロとした生々しい「生活臭」への底知れない嫌悪。
すでにボロボロに汚れ、エゴを剥き出しにしている男や中年女性を今すぐ死体(物)にしたところで、出来上がるのはウジのたかる「汚れた死体」に過ぎない。
彼の心が1ミリも動かない理由はそこにあった。
彼の殺人鬼としての美学は、単に「人を殺したい」という快楽殺人ではなく、あくまで【自分の理想を裏切らない、嘘をつかない綺麗な人形(死体)の創造】だからだ。
「見つけた。あの子だ……。あの子こそが、僕が創り上げるべき完璧なエデンの人形だ」
物陰から少女を観測した狗飼のペニスが、かつてない全能感で激しく猛り狂う(ギンギンに横領する)。
あの汚濁に満ちた地獄のド真ん中で、まだ「お淑やかで、清楚で、誰の手にも汚されていない」無垢な輝きを残している生きている女の子。その最も美しい生命のパルスを、自らの手で一瞬にして『永遠に嘘をつかない完璧な物質』へと変換したいという、最悪の芸術家気取りの衝動が、彼の脳内で完全覚醒を果たした。
シリアルキラーへと変貌した怪物は、獲物を見つめる獣の瞳で、少女が「たった一人」になる瞬間を、じっと待ち続けた。
チャンスは、生存システム(ライフライン)の維持という必然のファクトによってもたらされた。
「おばちゃん、私、裏の古い拠水所まで水を汲みに行ってくるね」
少女のお淑やかな声が、薄暗い図書館の跡地に響く。
おばちゃんたちの命を繋ぐため、水という最も貴重な生存データを調達するには、どうしても集団から離れなければならない。
おばちゃんたちは「気をつけてね」「無理しちゃだめだよ」と、彼女のクリーンな優しさに依存しきったエゴで見送った。
誰も彼女が一人になる危険性を直視しようとはしなかった。
少女を神聖な「記号」として奉ることで、自分たちの生存を肯定していたからだ。
ポリタンクを手に、コンクリートの瓦礫の隙間をすり抜けて歩く少女。
常に強欲なモブどもの視線に晒され、完璧な聖女という仮面を維持し続けていた彼女の脳内プロセッサは、集団の視界から完全に外れた路地裏の影で、ようやく「ブラブラ」と弛緩した。
少女は、周囲の瓦礫を見回し、誰もいないことを確認すると、壊れた水道の影に身を隠した。
かつて文明社会(天動説)にいた頃なら、清潔な水洗トイレで処理できていたはずの、生身の人間として避けられない生理的ファクト(排泄)。
それが今や、アスファルトの隅の泥に直接小さな穴を掘り、白いワンピースの裾をたくし上げてしゃがみ込むしかないという野蛮な現実。




