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大岩山から絶望を配信する〜男は耐えろと抜かす世界を、低級霊のウイルスで完全チェックメイトしてやった〜  作者: ひややっこ万次郎
第7章:『確定シグナル(おしっこ)の誓約と、解剖学的ファクト(死体) 〜綺麗事(クリーン)のファイヤーウォールを内側から爆破する、剥き出しのバックヤードログ〜』
198/254

番外編33:生存データ(水)の調達システムが招いた完璧なドミノ倒し 〜羞恥と経血に濡れたワンピースをロックオンする狂気のレーダー、そして窓なき密室で執行される歪んだ救済ロジック(ノアの方舟)〜1

【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の寺社、教会、特定の宗教団体、結婚相談所、およびマッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の宗教婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の信仰や職業を誹謗中傷する意図は一切ございません。

大岩山の頂上からデジタル電磁波ウイルスが東洋の巨大都市を直撃してから数日。

かつて数千万人の虚栄心と「市場価値」の騙し合いが蠢いていた東京は、文字通りの「腐敗の砂漠」へと退化していた。

都市機能を動かしていたライフラインが初日で完全滅滅した結果、エアコンも冷蔵庫も死に絶えたコンクリートの牢獄は、アスファルトの熱に焼かれる巨大な屠殺場と化していた。

緑色に変色し、ガスで膨張したかつてのエリートたちの肉体。

そこへ群がる無数のハエ、皮膚の裂け目から這い出るウジ虫、あるいは甘い体液の臭いに誘われて死体の目や口に真っ黒くたかるアリの列。それが、新世界が突きつけてくる冷徹すぎる自然界のリアルな分解システム(ファクト)であった。

昨日までブランド物のスーツを着て、年収や学歴という傲慢な記号で他者を値踏みしていたエリートたちが、今や泥に塗れたジャージ姿で、道端の泥水を貪り、ゴミ箱をあさって腐ったパンの耳を奪い合っている。彼らの脳内プロセッサからは自尊心が完全にロスカットされ、ただの「飢えた動物」へと退化していた。

その地獄の更地において、崩壊した上野の図書館跡地に作られた小さな救護エリアだけは、奇跡的に「人間の形」を保っていた。

「あぁ……ありがとね、ありがとねぇ……」髪を振り乱し、煤だらけの顔をした中年女性――かつては品の良い主婦層であったろうおばちゃんたちが、バールや包丁を片手にスーパーの残骸から缶詰を強奪し、血みどろのサバイバルを繰り広げるその足元で、涙を流して一人の少女にすがりついていた。

黒髪ストレートに、小柄で華奢な体躯。白いワンピースを煤で汚しながら、お淑やかで清楚な手つきで、自身の貴重な乾パンや水を嫌な顔一つせず分け与えている少女(17〜18歳)。

彼女は、すべての綺麗事(天動説)が消え去ったこの更地で、息を潜めて生き延びようとするおばちゃんたちのドロドロとした「生活への執着(エゴ)」を、その無償の優しさで受け止め、癒やしていた。記号の檻が壊れた世界で唯一、本物の「中身の美しさ」を放つ一輪の異質な聖痕。それこそが、おばちゃんたちにとっての絶対的な防衛線であり、彼女がいるからこそ、この小さな集団は互いを食い破らずに済んでいた。


だが、その神聖な光景を、コンクリートの物陰からじっと見つめる濁った瞳があった。

元・大学病院の検体管理助手、狗飼幽二(いぬかい ゆうじ)。

二十数年間一度も女性経験がなく、ネットの裏コミュニティで「死体ごっこ」をして喜ぶ隠れネクロフィリア(死体愛好癖)の同類どもを「世体裁に怯える腑抜けの養分」と見下し、頭の中の妄想だけで純粋な死体愛好を貫いてきたと自負していた男。

先刻、自殺したばかりの女子大生の遺体に初めての挿入を試みたものの、熱を奪われ、冷たい粘土のように硬化し、「ギチギチ、ギシギシ」ときしむ肉の管という冷酷な解剖学的ファクトを突きつけられ、尊厳を完全滅失した男。

しかし、絶望の過呼吸の果てに、彼の脳内でウイルスの外圧と新世界の狂気が最悪の形で噛み合い、奇妙な逆転のロジックが弾け飛んでいた。(死体は、放っておけばみんな汚くなって、僕を裏切るんだ。あの女子大生が奇跡的にクリーンでいてくれたのは、ついさっき死んだばかりだったからだ……)

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