番外編32:腐敗の砂漠に咲いた奇跡の残光 〜妄想をチェックメイトする解剖学的ファクトと、手首に刻まれた絶望の聖痕〜3
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の寺社、教会、特定の宗教団体、結婚相談所、およびマッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の宗教婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の信仰や職業を誹謗中傷する意図は一切ございません。
頭を抱えて叫ぶ狗飼。
しかし、彼が正気を取り戻して逃げ出そうと顔を上げた瞬間、新世界の真の狂気が彼の視界をジャックした。
高級セレクトショップのショーウィンドウの向こう、そして大通りを見渡せば、すでに東京は社会のブレーキが完全に焼き切れた暗黒の更地。
男女問わず、ウジやアリが群がってドロドロに変色した「汚物としての死体」が数え切れないほど転がり、腐臭を放っている。
その時、妄想の檻を完膚なきまでに調教された狗飼の脳内で、ウイルスの外圧と新世界の狂気が最悪の形で噛み合い、奇妙な逆転のロジックが弾け飛んだ。
(そうだ……死体は、放っておけばみんな汚くなって、僕を裏切るんだ。この子が奇跡的にクリーンで、僕の理想のままでいてくれたのは……ついさっき死んだばかりだからだ……)
ガチガチと震えていた彼の身体の震えが、ピタリと止まる。
涙とゲロで汚れた狗飼の瞳に、濁った、底知れない新世界の狂気が宿っていく。
死体愛好というチープな空想の檻が壊された結果、世界そのものが狂ったこの荒野で、彼の牙は生きた人間を標的にする本物の【シリアルキラー(連続殺人鬼)】としての凶気へと完全覚醒を果たしたのだ。
「だったら、最初から生きてる女の子を探せばいいんだ。生きてるお淑やかな子を僕が見つけて……僕の手で、一番綺麗な瞬間に『嘘をつかないクリーンな物』にしてあげればいいんだ……。
そうすれば、誰も僕を拒絶しない……。僕だけの、永遠のエデンが手に入る……」
自身の熱を奪った女子大生の遺体から這い出た狗飼は、生きた獲物を品定めするような狂気的な笑みを浮かべ、コンクリートの砂漠の奥へと、ふらふらと足を進めていくのだった。
番外編33へ続く




