番外編32:腐敗の砂漠に咲いた奇跡の残光 〜妄想をチェックメイトする解剖学的ファクトと、手首に刻まれた絶望の聖痕〜1
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の寺社、教会、特定の宗教団体、結婚相談所、およびマッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の宗教婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の信仰や職業を誹謗中傷する意図は一切ございません。
チカッ……チカチカチカッ……!
女子大生の枕元に転がっていた、血の海に浸かったスマートフォンが突如として血の赤色に染まり、激しく明滅を始めた。
大岩山の呪いが、今まさにこの路地裏の空間をジャックする。
彼女が死ぬ数秒前、脳の微小管から宇宙の海へ解き放たれた「生涯の記憶、激しい感情、強い未練」という名の消えない痛みのログが、音声付きの超高画質データとして空間に強制デリバリー(配信)され始めたのだ。
『あいつマジで純粋だから、実家の太さも含めて結婚相手としては最高(笑)でもベッドの上ではマジでマグロで退屈だからさ、普段の性処理はマッチングアプリの肉便器たちで済ませてんだよね(笑)』
空間に投影されたのは、彼女が命より信じていた、他校のハイスペックなエリート彼氏の裏チャットだった。
自分の「誠実さ」や「純粋さ」すらも、強者にとっては単なる『都合の良い格付けの記号』として査定され、裏では生体ゴミのように見下されていたファクト。
彼女の精神の防衛線は、ウイルスの初日の配信で完全灰滅していたのだ。
さらに、空間のノイズは、彼女が死ぬ数日前までスマホのメモ帳に吐き散らしていた、クラスの男どもへの強烈な嫌悪のログを音声付きで大放送する。
『ハイスペックな男たちに記号として値踏みされるのも反吐が出るけど、クラスにいる、女子に声もかけられないような気弱で陰気な男の子たちが、毎日毎日、私のことを「無抵抗で従順そうな、都合のいい妄想の人形」として値踏みするように、ちらちら、ちらちら、ジトっとした視線を送りつけてくるのが本当に気持ち悪くて耐えられない……。あいつら、無害そうな顔をして、頭の中では私を自分のオナニーの道具にして汚してる。生きてる男たちの視線に晒されるくらいなら、自ら手首を切り裂いて、ただの物になった方がマシよ――』
「ひっ……う、あ……ぁ……」
狗飼の脳内が完全なパニックを起こしてフリーズした。「死体は生身の女と違って僕を拒絶しない、最も誠実なエデンだ」と信じ込んでいた。
しかし、空間から響く彼女の最期の絶叫は、まさに目の前にいる狗飼のような、声もかけられない気弱なオスのドロドロとした性的視線と妄想そのものが、彼女を手首自決へと追い込んだ最後の引き金(加害者)であったというあまりにも冷徹な真実だった。
自分が「救済者」ではなく「彼女を殺したキモいオスどもの記号」そのものであると突きつけられた瞬間、狗飼の尊厳は文字通り完全灰滅し、絶望の過呼吸を起こした。
だが、大岩山のウイルスが引き起こす絶望のチェックメイトは、そこでは終わらなかった。
血塗られたスマホの画面から、今度は彼女の脳細胞が最後に放った、純粋で無垢だった頃の生い立ちの記憶――【走馬灯データ】が、映画のスクリーンのように路地裏の空間へ超克明に、超リアルに強制投影され始めたのだ。




