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大岩山から絶望を配信する〜男は耐えろと抜かす世界を、低級霊のウイルスで完全チェックメイトしてやった〜  作者: ひややっこ万次郎
第2章:地動説のペンを握れ 〜世界の歪みにチェックメイトされた魂の救済〜
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第6話:真美(まみ)という名の北極星 〜14歳の邂逅と、固定電話越しの死闘〜4

俺は真美さんになりたかった 。真美さんが塾の子供たちを救ったように、俺も、孤独に震える誰かの「本物の理解者」になって、あの時救えなかった真美さんの代わりに、その女性の傷を癒やしてあげたかったのだ 。

だが、そんな俺と彼女の定期的な対話の時間も、俺が専門学校を卒業した21歳の頃、突如として永遠に引き裂かれることになる 。

彼女の身体を蝕んだ、白血病という、あまりにも理不尽で非情な、神様からの2度目の死刑宣告。

一人の女性としてのすべての幸せをシステムと病魔に奪われながら、彼女は1999年、40歳を前にして、静かに、この世界から去っていった 。

彼女が亡くなった後、俺は、彼女の教え通りに自分の「好きなこと」を貫き、アニメーションの技術を磨きながら、ある一つの、個人開発の着ぐるみを作り上げた。

名前は、「泡沫の真白(うたかたのましろ)」。

世間には、ただの愛らしい女の子の着ぐるみキャラとして公開していた。

そして、真白は完成した後、クライアントの元へ旅立っていった。

だが、誰にも明かしていない、俺だけの、そしてこの物語の絶対的な裏のコンセプトがあった。

「泡沫の真白」は――もし、あの子供が大好きだった真美さんに子供が生まれていたら、その子は一体どんなに可愛らしく、どんなに真っ直ぐな子になっていただろうという、俺の30年間の祈りと純愛を込めて仕組んだ『真美さんの、未来の子供の姿』そのものだったのだ。

真美さんが遺せなかった、未来の命。

それを、俺は自分のクリエイティブの覇気のすべてを注ぎ込んで、この世に誕生させ、そして、真白の誕生を喜んでいた

クライアントに引き渡した。

孤児院の先生が、里親を信じて、その子を送り出すように。

布製品が盛んな地域のゆるキャラになったため、「布の娘 真白」と向こうの地域では改名されていたが、どこに行っても

俺の中では彼女は「泡沫の真白」だった。

彼女が亡くなる直前、21歳の俺の手元に遺してくれた、世界で最後の1枚の手紙 。そこには、彼女が自らの命の灯火を削りながら、俺の未来のために紡いでくれた、文字の覇気が刻まれていた 。

『ひややっこくん。人間、集団でいることが必ずしも正しいとは言い切れないよ。

かつてアリストテレスやガリレオ・ガリレイ、コペルニクスといった偉人たちは、みんなが天動説という赤信号を渡っている中で、自分だけの青信号(地動説)を信じて、

孤独に研究を続けた。

当時は狂人扱いされたけれど、今ではそれこそが世界の当たり前になった。

だから、1人でも負けないで。

自分の好きな漫画やアニメの道に向き合っているあなたを、私は世界で一番、ずっと応援しています』

「……真美さん。俺は、1人でも負けへんかったよ」

30年後。47歳になった俺は、大岩山の山頂で、あの手紙の文字を脳裏に鮮烈にフラッシュバックさせていた 。男は耐えろ、成果がなくても金を払い続けろと要求する、YouTubeの結婚相談所やみんなでペアペアという名の、現代の狂った『天動説(赤信号)』の世界 。

そのシステムにハメられ、真美さんのような本物の大人の女性が傷つき、俺のような誠実な男がドタキャンで血を流すなら、俺は、真美さんから受け取ったこの『地動説(青信号)』のペンを以て、世界のすべてを完全破壊(チェックメイト)してやる 。

そして、俺の手元で静かに瞬く「泡沫の真白」の輝き。

大岩山の漆黒の鳥居が、激しい雷鳴と共に明滅する 。

低級霊のウイルスが世界中のサーバーを侵食し、偽物の相談所やアプリの闇を一斉に暴露し始めたその根底には、30年前、固定電話を握りしめて理不尽と戦い、散っていった真美という名の北極星への、そして彼女の遺せなかった未来(ゆきこ)への、俺の生涯をかけた「最大のケジメと、新世界への宣戦布告」があったのだ 。

(第7話へ続く)

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