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大岩山から絶望を配信する〜男は耐えろと抜かす世界を、低級霊のウイルスで完全チェックメイトしてやった〜  作者: ひややっこ万次郎
第7章:『確定シグナル(おしっこ)の誓約と、解剖学的ファクト(死体) 〜綺麗事(クリーン)のファイヤーウォールを内側から爆破する、剥き出しのバックヤードログ〜』
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番外編27:『闘争のアーキテクチャ・レッド』〜1999年冬、通信不全の世紀末ストリートで、少女たちが繋いだ数字のポケベル暗号と、絶望のシェルターを爆破した人情味(エモ・パッチ)の起動ログ〜2

【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の人物、地名、特定の結婚相談所、および動画・書籍・マッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての痛烈な風刺・創作であり、特定の生き方や価値観、性別、信仰を誹謗中傷・否定する意図は一切ございません。あらかじめご了承の上、純粋なビター・ドラマとしてお楽しみください。

【夕方:17:00】 12文字の数字暗号と、公衆電話の闘争


駅前のロータリー。緑色の公衆電話ボックスの前に、さやか、ユカ、真希の3人が並んでいた。

10円玉のパケットを次々と投入し、受話器を握りしめたユカが、あみの持つポケベルの番号をハッキング(プッシュ)する。

1999年当時、ポケベルは文字を直接送るだけでなく、数字の組み合わせでメッセージを伝える「数字の暗号」が若者たちのメインプロトコルだった。

限られた文字数の中で、彼女たちは魂の熱量を数字に変換し、公衆電話のボタンを狂ったような速度でタイピングしていった。最初に送られたのは、親友としての直球の全肯定コード。

0510ー(ドンマイー)


続いて、一人で悩むなという強い連帯のメッセージ。


104ー9(トシキナユー=気にするな)


そして、自分たちがあの日常に戻すためのファイヤーウォールになるという決意のパケット。


3810ー(ミカタヘー)


とどめにさやかが受話器を奪い取り、カタカナ入力モードを駆使して、最も熱い約束のログを出荷した。


アンナノタダノジコダ(あんなのただの事故だ)

1ミリモキニスルナ(1ミリも気にするな)

ワタシハ2ネンノサヤカ(私は2年のさやか)

ガッコウデ(学校で)

カラカウヤツ(からかう奴)

ホウキデブッタタク(ほうきでぶった叩く)


それに負けず、真希もカタカナでエールを送る。


サヤカセンパイモミカタ(さやか先輩も味方)


あみの部屋の机の上で、何度も、何度も、電子アラートを鳴らして受信(デプロイ)される、12文字の数字とカタカナの泥臭い叫びたち。画面に明滅する『0510』や『104ー9』という数字の配列は、記号の冷たさを超えて、あみの凍りついた部屋の空気を確実に揺らし始めていた。


【夜:18:30】 鉄扉の爆破と、聖母たちのリブート


「あみちゃん!! 開けて!!」

返信のないポケベルの画面を飛び越え、さやかたちはあみの自宅のマンションの前に立っていた。

オートロックをユカの指頭でハックし、あみの部屋の重い鉄扉の前に並び、インターホンを連打する。

「あみ! ユカだよ! 真希も、さやか先輩もいる! 意地でもドア開けるまで帰らないからね!」

ガチャリ、と重いデッドボルトが解除される音が響いた。

ゆっくりと開いたドアの隙間から現れたあみは、学校の制服をベッドの隅に投げ捨て、泣き腫らして目が真っ赤に変形(バグ)した、あまりにも痛々しい姿だった。

「なんで……、なんで来るのよ……。私はもう、男たちの前で、みんなの前で、いちばん汚いところを見せちゃったの。私の高校生活は、もう終わったのよ……っ」

床に崩れ落ちて号泣するあみの身体を、ユカと真希が狂おしいほどの力で抱きしめた。

「終わってない! 終わらせるわけないじゃん!!」

「あみ、あんたがどれだけ綺麗好きで、毎日図面を引いて頑張ってたか、私たちが一番よく知ってる! おしっこが出ちゃったくらいで、あんたの実存が汚されてたまるか!!」

そして、さやかがあみの前に膝をつき、その濡れた頬を両手で包み込んだ。

「あみちゃん、聞いて。明日、学校に行こう。ブレザーの襟を最大出力で立てて、1ミリも下を向かずに教室のドアを開けるの。もし、学校の廊下であなたをクソみたいなスペック値踏みでからかってくる男子がいたら、私が学校中のほうきを集めて、全員の脳天をぶっ叩いてロスカット(完全排除)してあげる」

さやかの、17歳とは思えない圧倒的な覇気と包容力(救済の母性)。

さらに、さやかは悪戯っぽく笑って、あみの耳元で囁いた。「それにね、あみちゃん。私もあなたと同じ。

あの日あの場所で、もしかしたら私もあなたと同じ運命を

味わっていたのかもしれないの。

あなたほどの辛さじゃないけど、私だって、駐車場でおしっこするしかなかったのよ。

もし男がグチグチ言うなら、言ってやりなさい。『男の浅いシステムで、私たちのおしっこのパージ(解放)の重さを測ろうとするな』って。

私たちが明日、あなたのファイヤーウォール(盾)になる。絶対に、あなたを一人でストリートに立たせたりしない」


「先輩……、みんな……っ」

1999年の冬の夜、冷え切った引きこもりのシェルターの真ん中で、少女たちの「涙」と「人情」という名の最強のデバックパッチが完全融合した。

あみの網膜サーバーに、再び、死んでいだはずの光(実存のコード)がアップデートされる。

彼女はメンタルが強かったからリブートできたのではない。

さやかという生涯の相棒と、親友たちの不器用な愛というインフラに救い上げられたからこそ、理不尽な世界へ反撃するための「怒りのエンジン」を起動させることができたのだ。

「……うん。私、学校に行く。行くよ……っ!」

社会のファイヤーウォールを内側から爆破し、女性の尊厳を守るための新たな都市インフラをいつか完全にチェックメイトしてやるという、最強の女性建築家ユニット(さやか&あみ)がストリートに産声を上げた、世紀末の熱い夜であった。


番外編28へつづく


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