第6話:真美(まみ)という名の北極星 〜14歳の邂逅と、固定電話越しの死闘〜2
前回のあらすじ:恋愛ビジネスが消滅した後に訪れたのは、本物の強者だけが生き残り、弱者は一瞬で淘汰される「恋愛の超・弱肉強食時代」だった。大岩山の山頂から世界を見下ろすひややっこの脳裏に、30年前――インターネットもスマホもない時代、自身の人間性のすべての源流となった一人の女性の記憶がよみがえる。彼女の名前は、真美――。
彼女は、子供が本当に大好きな人だった。
だからこそ、自分の個人塾を開き、いじめられた俺や、学校に馴染めない子供たちを我が子のように愛し、寄り添っていた。しかし、神様の運命はあまりにも冷酷だった。
彼女の身体は、生まれつきなのか、あるいは何かの病の影なのか、「子供を産むことができない身体」だったのだ。
子供が大好きで、誰よりも子供の未来を願っているのに、自分自身の血を分けた子供を産むことができないという、噛み合わない心と体のアンバランス。
彼女が、日陰の公民館や小さな部屋で一途に個人塾をやっていたのは、心理学で言うところの「行動療法」でもあったのだろう。
子供たちに無償の愛を注ぐことで、彼女は自分自身の心の奥底にある「産めない悲しみ」という傷口を、必死に癒やしていたのだ。
29歳から30代半ばへ。女性として、最も美しく、最も結婚や家庭という未来に憧れ、焦り、悩む年頃。
当時、スマホのない時代。20代後半の男女の主な出会いは、友人知人の紹介や合コン、あるいは当時全盛期を迎えていた『ねるとん型のお見合いパーティー』だった。
真美さんもまた、そんな社交の場で出会った男と、2回ほど、真剣に付き合っていたことがあった。
だが、その男たちは、最初は彼女の気の強さや美しさに惹かれて近づいておきながら、いざ「結婚」という現実の条件、家柄やスペックの天秤に彼女をかけた瞬間、平気で手のひらを返した。
「子供が産めないなら、長男の俺としては結婚はできない」「男は耐えて仕事をするんだから、女はそれくらいの条件を満たして当然だろう」




