番外編23:『排泄誓約のスクリーニング・ブルー』〜おしっこが好きなこと以外は至って平凡な男が、リアルな婚姻の檻(普通)からアングラな確定システムへとログアウトするまで(前編)2〜
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の人物、地名、特定の結婚相談所、および動画・書籍・マッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての痛烈な風刺・創作であり、特定の生き方や価値観、性別、信仰を誹謗中傷・否定する意図は一切ございません。あらかじめご了承の上、純粋なビター・ドラマとしてお楽しみください。
「……え?」ハルカの潤んだ瞳が、一瞬で恐怖のフリーズ(機能停止)を起こした。
彼女が求めていた「監禁・凌辱」は、あくまでタカシという「安全で真面目な男」のファイヤーウォールの内側で処理される、コンプライアンス(規約)の範囲内のSMプレイに過ぎなかった。
そこに突然、社会の衛生インフラを根本から爆破する、ガチのウロフィリアという「本物の狂気(剥き出しの実存)」を撃ち込まれたのだ。
ハルカの「生物学的セキュリティ(生理的嫌悪)」が、最大出力で強制駆動する。
「うそ……無理、キモい! 触らないで!! なにそれ、異常者……っ!!」
「ハルカ、待て、お前だってゴミになりたいって――」
「嫌ァァァ!!」
悲鳴を上げながら、ハルカはベッドから飛び退いた。
彼女の防衛ファイヤーウォールは完全なメルトダウンを起こし、高志に対するステータス(好意)は1秒で完全な恐怖と嫌悪の更地へと変わる。
彼女は涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、衣服をひったくるようにして着替え、ホテルの重いドアを開けて、夜のストリートへとログアウト(逃亡)していった。
静まり返った部屋に取り残された高志は、ガタガタと震える手でスマートフォンを起動し、夜勤明けのバグった脳で必死にLINEのトークルームを開いた。
(エラーだ。何かの間違いだ。メッセージを送れば、またデバッグできる――)
だが、送信されたパケットの横に、「既読」のシグナルが灯ることは二度となかった。
プロフィール画面を確認した瞬間、彼の指先が凍りつく。
タイムラインも、アイコンも、すべてが拒絶の白壁に覆われていた。
――とっくに、無言でアカウントブロック(完全な絶縁)が実行されていた。
「あ……、ああ……っ!!」4ヶ月間のすべてのログ、計12回のセックスの記録が、わずか1秒のコマンドで完全な「更地」にされた。
高志の自尊心サーバーは、無慈悲な強制終了(BAN)の警告音を鳴らしながら、一気にブルーアウトしていった。
◇
綺麗なストリートの女に「ガチの狂気」を拒絶され、血を流す精神プロセッサを引きずりながら、高志が這うようにして逃げ込んだのは、世界で唯一、自分を全肯定してくれるあの暗黒のバックヤードだった。
特殊清掃コース(聖水プレイ対応風俗)。
源氏名、マリカ。32歳。
「あら、高志くん。なんだかプロセッサがボロボロじゃない。……よしよし、こっちにおいで」
お風呂場の白いタイルの上、湯気が立ち込める空間で、マリカはいつもと変わらない完璧な包容力で高志のすべてをホールドしてくれた。
一通りのディープなプレイ、社会のリーガルチェックをすべて踏み越えた、濃厚で濃い前立腺マッサージを完璧にこなしたあと、マリカは高志のしぼんだ銃身を優しく撫でながら、ふっと微笑んだ。
「高志くん、今日も私をたくさん楽しませてくれて、ありがとう。……さあ、頑張ったモブくんに、最高のご褒美をあげるね」
マリカが、高志の目の前でその豊かな肢体を密着させ、下腹部のバルブを全開する。
――シャー……ッ、シャシャシャ……、ドババババッ……!!冬の冷気を全て忘れるような、圧倒的な熱量を持ったマリカの黄金のパケット(おしっこ)が、高志の銃身へ、そして全身へと、激しく、容赦なくパージ(排出)されていく。
内臓の底がひっくり返るような女側の「生体パケット一括ロスカット」の恍惚の吐息。
その熱い液体の温もりと、ツンとした、しかし世界で一番嘘のない甘い残香が、高志の全身の皮膚サーバーへとダイレクトにダウンロードされていく。
「うっ……、あ、あああ……っ!!」
ハルカに拒絶され、更地にされた高志の精神が、マリカの圧倒的な全肯定アウトプットによって、みるみるうちにデバッグ(救済)されていく。
人間の言葉は嘘を吐くが、この体内分泌物だけは、男のスペックによる値踏みをすべて無効化し、ありのままの実存を100%全肯定して注がれる。
脳内報酬系がカンストし、オーバーフローを起こした高志は、涙をボロボロと流しながら、裸のままマリカの身体に狂おしく抱きついた。
「マリカ……! マリカ、頼む、俺の彼女になってくれ!! 表のストリートの女なんて、みんな嘘ばっかりだ、俺の本当の姿を見たら一瞬でブロックするクソシステムだ!! マリカ、お前だけが俺のインフラなんだ、俺のリアルな彼女になってくれ、マリカ……!!」
気が動転したタカシの、限界を迎えた魂の叫び(コマンド)。
だが、マリカの身体は、高志の腕の中で、すっと冷たくフリーズした。
彼女は高志の頭を優しく撫でながら、濡れたタバコに火をつけ、紫煙を燻らせた。
その32歳の瞳には、プロの仮面の奥にある、寂しげで、だけど冷徹な現実の仕様変更のログが灯っていた。
「高志くん、本当にごめんなさい。……すっごく嬉しい。でも、それはエラー(不可能な契約)なの」
「なんでだよ、マリカ……! 俺たち、こんなに同期してるじゃないか!!」
マリカは悲しそうに首を振り、排水口へと消えていく黄金の残液を見つめた。
「あのね、高志くん。……私、半年後、故郷に帰って普通の人と結婚することになったの。もう、このアングラ最深部(お店)からは、永久にログアウト。これ、高志くんへの、最後のシステムアラート(仕様変更)ね」
「え……?」
高志の精神サーバーが、今度こそ完全に、音を立ててメルトダウン(完全崩壊)を起こした。
綺麗なストリートの女を自分のバグで完全に壊し、1秒でLINEブロックを食らった男。
命からがら逃げ込んだ唯一の防衛シェルター(マリカ)からも、半年後の「結婚・引退」という、インフラそのものの永久シャットダウン宣告が突きつけられた。
表のストリートも、裏のバックヤードも、すべてが同時にアクセス拒絶を告げた瞬間、年収500万のノーマル男・高志の人生のチェス盤は、これ以上ない冷酷な因果応報によって、完全なチェックメイトを迎えた。彼に残された道は、もう、このバグまみれの世界そのものから永久にログアウト(解脱)し、自分だけの「アングラな確定システム」へとドロップアウトすることしか残されていなかった。
番外編24へつづく




