番外編23:『排泄誓約のスクリーニング・ブルー』〜おしっこが好きなこと以外は至って平凡な男が、リアルな婚姻の檻(普通)からアングラな確定システムへとログアウトするまで(前編)1〜
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の人物、地名、特定の結婚相談所、および動画・書籍・マッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての痛烈な風刺・創作であり、特定の生き方や価値観、性別、信仰を誹謗中傷・否定する意図は一切ございません。あらかじめご了承の上、純粋なビター・ドラマとしてお楽しみください。
マッチングアプリ『みんなでペアペア』のストリートで、高志が25歳のアパレル店員・ハルカと接続してから、タイムラインは4ヶ月のクロック数を刻んでいた。
ハルカは、世間のトレンドやコンプラ、そして「お行儀の良い綺麗事」を完璧に着こなしているエリート私立女子高出身の、非の打ち所がない優良インフラ(理想の彼女)だった。
年収500万円の大卒という、どこまでも「平凡でノーマルなモブ」である高志にとって、彼女とスマートにメッセージのパケットを交換し、月に2〜3回、4ヶ月間で「計12回」のセックスを重ねてきた実績は、ストリートにおける完全な勝利ログ(無双状態)に見えるはずだった。
だが、6回目の接続テスト――都内の静かなラブホテルのクローズド空間で、ハルカはその完璧なファイヤーウォールを一部解除し、信じられない「裏ログ(本音)」を涙目でパージしてきた。
「タカシくん……お願い、もっと乱暴にして。ゴミみたいに扱って、私を監禁して、凌辱してよ……」
ハルカの脳内プロセッサは、毎日アパレルのフロントエンド(表舞台)で「洗練された綺麗な女」を演じさせられている同調圧力によって、限界まで摩耗していたのだ。
その反動として、夜のベッドでは「綺麗であらねばならない社会的義務からの完全な免責」を強烈に渇望するマゾヒズム・バグを抱えていた。
普通のエリート男なら「え……良い子だと思ってたのにキモいな」とドン引きし、即座にロスカット(拒絶)するセクターだろう。
だが、高志の精神サーバーは歓喜に震えた。
(ああ、お前もか。お前もこのクソみたいな綺麗事の檻(社会)に疲れて、脳がバグってたんだな――!)
高志は彼女のプレイの要求(仕様書)に100%応えた。
彼女を器物のように扱い、支配し、以後2ヶ月間、完璧な「ギブ(与える側)」としてハルカの信頼インフラを完全に掌握した。
お互いにストリートでは絶対に言えない致命的なバグを共有し合っている。
その歪んだ万能感に脳を焼かれた高志は、ついに、自分の最深部に隠蔽していた「ウロフィリア(尿愛好)」の確定シグナルを、等価交換のコマンドとしてハルカへデプロイしてしまう。
「ハルカ……お前がそこまでゴミになりたいなら、俺のすべてをハメ合わせてやるよ。……俺におしっこをかけてくれ。いや、お前ができないなら、俺が今から、俺の生体資源でお前を完全に汚して、チェックメイトしてやる」
それは、20年前の冬の駐車場で、鉄板一枚を隔てた高校生のお姉さんから靴底へ流れてきた「あのしょっぱい熱量」を、目の前のハルカという現実の肉体に強制上書き(パッチ適用)しようとする、タカシの原初の渇望だった。
だが――高志は、致命的な「誤判定」を起こしていた。




