番外編22:『排泄誓約のスクリーニング・ブルー』〜おしっこ愛好以外は至って平凡な男が、靴底を濡らした湯気の起源をカミングアウトし、男女の生体インフラ論で完璧にハックされるまで〜2
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の人物、地名、特定の結婚相談所、および動画・書籍・マッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての痛烈な風刺・創作であり、特定の生き方や価値観、性別、信仰を誹謗中傷・否定する意図は一切ございません。あらかじめご了承の上、純粋なビター・ドラマとしてお楽しみください。
暗い自室で、高志は何度も自尊心サーバーをフリーズさせた。
セックスの最中、彼女の身体を抱きしめながらも、彼の精神は常に「スタンドアロン(孤立状態)」だった。
最も深い実存を暗号化したまま、偽装パッチ(仮面)だけで繋がる人間関係。
それは、どれだけ肌を重ねても、乾いた砂に水を撒くような、圧倒的な通信不全の虚無だった。
◇
そんな高志が、資本主義の最暗部にして、唯一の感情のセーフティネットに辿り着いたのは必然だった。
聖水コース(排泄プレイ対応風俗)。
その世間のリーガルチェックを完全に踏み越えたアングラ・インフラで、高志は運命の固定パッチ(最愛のプレイヤー)と接続される。
源氏名、マリカ。32歳。
全盛期の「若さ」という初期スペックでの勝負を終え、聖水コースというニッチなバグセクターで泥臭く、しかし誰よりもプロフェッショナルに働くベテランの風俗嬢だった。
「高志くん、いらっしゃい。今日は思いっきり楽しんでね」
マリカのインターフェースは完璧だった。
お金を払っているサービス時間中、彼女は本物の恋人のように優しい笑顔で高志のすべてをホールドしてくれた。
最初は、トイレやお風呂で彼女が排出するログを「クローズドに観賞」するだけで満足していた。
しかし、マリカという完璧な全肯定インフラを前に、高志のコマンドは段階的に過激化していく。
かけてもらう。そして、飲む。
一般社会の人間が見れば「狂気」「アウト」「キモい」と一斉にエラーアラートを鳴らすであろうその光景。
しかし、マリカの肌から放たれる温かい黄金の液体を喉に滑り込ませる瞬間、高志の脳内プロセッサは、人生で一度も味わったことのない「圧倒的な救済」に満たされていた。
(ああ、これには、嘘がない……!)
人間の言葉は嘘を吐く。笑顔も、LINEのスタンプも、愛の誓いも、すべてはスペック値踏みストリートを生き抜くための欺瞞のコードだ。
だが、この体内分泌物だけは、タカシが年収500万のモブであろうが、非モテのトラウマを抱えていようが、主人のありのままの実存を全肯定して、ただ熱く、純粋なアウトプットとして注がれる。
マリカはプロ中のプロだったから、そんな高志の限界突破な欲望に対しても、一切悪ぶらず、引くような素振りすら見せなかった。
実は一度、高志は他店への「お試しアクセス(浮気)」に失敗した経験がある。
若さにつられて指名した21歳の風俗嬢に、恐る恐るこのプレイを要求した時、その少女の「生物学的セキュリティ」が完全に作動してしまったのだ。
少女はプロにあるまじき引き攣った悲鳴を上げ、なんとか仕事としてやり遂げたものの、事が終わった後の車内のような無言(フリーズ状態)の冷気は、高志の精神サーバーに致命的なトラウマバグを上書きした。
だからこそ、マリカ「一択」だった。
マリカのいる暗黒のバックヤードだけが、高志が偽装パッチを脱ぎ捨てて「実存」として呼吸できる、唯一の暗号化シェルターだったのだ。




