番外編18:『欺瞞のモンスターパレード(完全チェックメイト) 〜理由のわからない不機嫌の檻に自滅する39歳女子と、裏切りの実況中継(裏ログ)に魂を粉砕された男たちの過酷な運命ログ〜』4
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の人物、地名、特定の結婚相談所、および動画・書籍・マッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての痛烈な風刺・創作であり、特定の生き方や価値観、性別、信仰を誹謗中傷・否定する意図は一切ございません。あらかじめご了承の上、純粋なビター・ドラマとしてお楽しみください。
四、 第四の檻(匿名SNSの誰にも言えなかった秘密) ── 婚姻届直前の自己正当化
そしてついに、サツキが39歳を迎えた運命の夜、タクヤの部屋で婚姻届を提出する瞬間が訪れた。
テーブルの上には、婚姻届と印鑑、住民票、そして黒いボールペンが並んでいた。
タクヤはこれまでのサツキの不機嫌の過酷を乗り越えられた安得から、本当に嬉しそうにそれらを眺めながら、「これでやっと夫婦になれるんだね。明日、一緒に役所に出しに行こう」と笑った。
サツキも笑顔で頷いたが、その指先はボールペンの前でピタッと止まったまま動かなかった。まさにその瞬間だった。
テーブルの上のサツキのスマホがピコンと鳴り、1件のSNS通知ポップアップが滑り込んだ。タクヤの視界に、何気なくその文字が入ってしまった。
【昨日言ってた元仮交際さんとはその後どうなったんですか? 今彼さんと入籍するんですか? それとも条件いい方に行くんですか?】
タクヤの顔から血の気がすっと引いた。
「今彼さんって……俺のこと? 元仮交際って、誰……? まだ連絡取ってるの?」
サツキは慌ててスマホを裏返してテーブルに伏せたが、その手はガタガタと震えていた。
すべては遅かった。タクヤが彼女のスマートフォンを問い詰め、そこに隠されていた【彼女が誰にも言えなかった秘密 ── 数千人のフォロワーを抱える匿名婚活アカウント】のすべてを遡って目にした瞬間、彼の世界は完跡に灰滅(更地化)した。
そこには、二人が出会ってから積み上げてきた真剣な時間のすべてが、見知らぬ他人の「いいね」を集めるための実況ネタ(コンテンツ)として赤裸々にパージされていたのだ。
タクヤの職業、年齢、デートで行った場所、彼の親に挨拶に行った時の辛口な格付け、入籍予定日、そして彼への容赦ない不満。
「条件は元仮交際さんの方がいい。今の彼は優しいけどトキメキは正直弱い。39歳だからもう失敗できない、だから婚姻届を書く最後の最後の瞬間までフォロワーのみんなと一緒に天秤にかけたい」
タクヤが人生を懸けて、婚姻届に名前を書こうとしているまさにその隣で、彼女はスマホの向こうの何千人に「この人で妥協していいのかな?」と問いかけ、見知らぬ他人のリアクションを眺めて自分の結婚を決めようとしていた。
自分という1人の生身の人間が、結婚相手として選ばれてすらいなかったという絶対的な存在の否定だった。
「俺は君のフォロワーに見せるために結婚するわけじゃないんだよ。俺との結婚って、君の中ではただの相談ネタだったの?」
タクヤの声には、怒りよりも深い、底冷えするような悲しみが滲んでいた。サツキはここで、ついに『不倫女の五大罪』の頂点 ── 【嫌われる女性ランキング第1位のサイン:寂しかったから仕方ないと『自分の行動を正当化する』最大の大罪】の盾を振りかざした。
「だって!! 最近タクヤさん、仕事ばかりで私が寂しかったから仕方ないじゃない! あなたが構ってくれないのが原因でしょ! 本名は出してないしあなたには迷惑かけてない、最後はあなたを選ぶつもりだったんだから、悪いのは寂しくさせたあなたの方でしょ!!」
対話の努力を放棄して他所の男やSNSに逃げた自らの弱さを、タクヤ(環境)のせいにして100%正当化する逆切れの責任転嫁。
タクヤは静かに婚姻届を破り捨て、冷徹に一言だけを突き刺した。
「自分の裏切りを俺のせいにして、それでも迷惑をかけてないと思ってるんだ。
その時点で、もう無理だ。今すぐ出ていってくれ」
サツキは婚姻届を書く直前の絶頂から、1秒で人生のすべてを完全ロスカット(破談)され、荒野へと叩き出された。




