番外編18:『欺瞞のモンスターパレード(完全チェックメイト) 〜理由のわからない不機嫌の檻に自滅する39歳女子と、裏切りの実況中継(裏ログ)に魂を粉砕された男たちの過酷な運命ログ〜』5
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の人物、地名、特定の結婚相談所、および動画・書籍・マッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての痛烈な風刺・創作であり、特定の生き方や価値観、性別、信仰を誹謗中傷・否定する意図は一切ございません。あらかじめご了承の上、純粋なビター・ドラマとしてお楽しみください。
五、 終わりのない品定め ── サツキが迷い込んだ「電柱の生体監獄」
タクヤの部屋を追い出され、夜の冷たいストリートへと叩き落とされたサツキ(39歳)は、自分が犯したシステムエラー(裏切り)の致命的な質量を、この期に及んでもまだ1ミリも理解していなかった。
「なんなのよ、どいつもこいつも器が狭すぎるわ。私はただ、39歳っていうタイムリミットの中で、誰よりも失敗したくなくて、慎重に見極めようとしていただけなのに……!
寂しがらせたあっちが悪いのよ。私は何も悪くない。私のこの高い市場価値を理解できない男なんて、こっちからロスカット(損切り)してやるわ!!」
サツキは冷え切った1Kの賃貸マンションに引きこもり、傷ついたプライドの防衛線を守るために、再び「自己正当化の盾」をガチガチに構えた。
そして、誰にも言えなかった秘密の檻 ── 唯一の心の拠り所である匿名の婚活SNSアカウントへと逃げ込み、今回の破談の経緯を「被害者」の体裁でパージ(投稿)した。
画面の向こうからは、彼女の人生に1ミリも責任を持たない何千人ものフォロワーたちの、無責任な同情のノイズが押し寄せてくる。
『サツキさんは悪くないです! スマホを覗き見して勝手にキレる男なんてモラハラですよ!』
『39歳なら天秤にかけるの当然! もっといいハイスペ男が絶対に現れます!』
その安っぽい肯定の沼に脳細胞を浸すことで、サツキの精神は、これ以降二度と「自らの非を認めて対話する知性」を完全失墜(永久ロスカット)させることとなった。
そこからのサツキの人生の進軍は、ただの生きながらの地獄(停獄)だった。
彼女はスマートフォンを開き、毎日マッチングアプリの画面をスクロールし続けるだけの『電柱女子』へと完全退化していった。
いいねは何件か届く。キープできる男もまだわずかにいる。
だが、彼女の指先は、自分からメッセージを送り、デートに誘うという「主導権」のボタンを絶対に押そうとはしなかった。自分から動いて断られるリスクが死ぬほど怖いという、圧倒的な臆病さの檻にハメられていたからだ。
「向こうが本気なら、また頭を下げて誘ってくるよね。私はただ、もっといい年収の、私の不機嫌もすべて受け入れてくれるハイスペックな男が現れるのを、ここで品定めして待ってればいいのよ……」
20代の頃、電柱のようにその場に突っ立って待っているだけで、オスの強者たちがひょいひょいと声をかけて貢いでくれた「古い成功体験」の呪縛。
しかし、現代のシビアな婚活市場において、男の側も「反応が薄い、俺ばっかり頑張って疲れる、次へ進む意思がない女」を瞬時に逆採点し、無言のフェードアウト(撤退)を選択するシステムへとルール変更されていることに、サツキのフリーズした脳は最後まで追いつかなかった。
彼女がキープ(飼い殺し)しようとする男たちは、誰一人として深い関係になる前に、音もなく彼女の前から消え去っていった。
気がつけば、40歳、41歳と、年齢という名の絶対的なタイムリミットの鉄槌が、彼女の残された市場価値を1秒ごとに更地へと削り取っていく。
夜、冷え切った部屋のベッドの中で、誰からも届かない通知の画面を見つめながら、サツキの胸を支配するのは、底冷えするような強烈な飢餓感と孤独だった。
「私はこんなに毎日アプリを見て頑張っているのに、なんで誰も私を愛してくれないの……?」
自分の見栄のために他人の尊厳を蹂躙し、トラブルの責任をすべて環境のせいにして、他人の人生を実況ネタとして消費し続けたモンスターは、一生涯、誰とも本物の「生身の体温」を等価交換することができないまま、自らが組み上げた「不機嫌と傲慢の監獄」の中で、静かに朽ち果てていく運命を辿るのだった。




