番外編16:『終焉のツィゴイネルワイゼン(完全チェックメイト) 〜灰滅する京都タワー(ソドム)と、比叡山頂の聖域で“生体家具(器物)”に転生した全能ナンパ師の純愛〜』2
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の人物、地名、特定の宗教団体、結婚相談所、および書籍・マッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の宗教婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の生き方や価値観、信仰を誹謗中傷する意図は一切ございません。あらかじめご了承の上、エンターテインメントとしてお楽しみください。
二、 地獄のメロディ
── 京都タワー激突その時、下界の京都のストリートの全域、そして比叡山の山頂にまで、あの不気味で哀愁を帯びた音楽が、ありとあらゆるデジタル端末のスピーカーから最大音量で強制配信され始めた。
パブロ・デ・サラサーテ──「ツィゴイネルワイゼン」のイントロだった。
「……おい、下を見ろ」理央が息を呑んだ。
京都タワー付近の上空、どんよりと濁った雲を突き破るように、一台の大型旅客機が異常な高度の低さで機体を激しく狂わせながら進軍してくるのが見えた。
ウイルスの直撃によって、その飛行機の操縦士(40代のエリート機長)の、最も秘匿されていた最悪の裏ログ(性癖)が、全乗客のモニターと地上のすべてのスマホへ同時に大開帳されたのだ。
雲の上のコックピットという聖域から世界を見下ろしていたハイスペックな機長が、そのすべてを剥ぎ取られ、「全裸に革の首輪と手錠」だけをハメられた状態で、女王様のヒールの足元を犬のように四つん這いで舐め回しているプライベート映像──。
哺乳瓶でミルクを口に注がれながら、涙とよだれで顔をドロドロに濡らし、「私は何もできない無力な赤ちゃん(家畜)です」と魂を去勢されて泣き叫ぶ音声付きの映像が、
ツィゴイネルワイゼンの旋律に乗せて世界中へ大拡散されていた。
コックピットの中で自らの人生のすべて(社会的信用・家族・プライド)が一瞬で完全ロスカットされたファクトを脳が検知した瞬間、機長は精神的決壊を起こして発狂した。
「アァ、アァアアアアア!!」という操縦士の絶叫のログが響く中、機体はそのまま、京都の象徴である京都タワーへと、大爆音とともに突っ込んでいった。
轟音──!!!比叡山頂の明王堂の窓ガラスがガタガタと激しく軋んだ。
操縦士の機体が京都タワーの展望台に直撃した瞬間、激しい爆発の炎とともに、地上100メートルの展望台がグラッと斜めにへし折れた。
中にいた観光客や学生たちが、窓ガラスの破片とともにボトボトと下界へ落下していく地獄絵図が展開され、そのまま折れたタワーの巨躯が京都駅へと直撃し、凄まじい大火柱と土煙が下界のストリートを完跡に飲み込んでいった。
「なんて、こと……」メグミが理央の腕にすがりつき、恐怖に身を震わせた。
一真は数珠を静かに回しながら、その炎上するソドムの街を見下ろしてニヒルに笑った。
「神崎、お前たちが持っていた経済の方程式も、都会のハリボテの富も、あの火柱の中で一瞬にして更地になった。
このお堂は今、お前たちの生身の体温を暴徒から守る最初の防衛線(盾)にはなる。
だが、1ヶ月後にお前たちがここで食う米(命のエネルギー)は、お前の持っていたどんな計算式を使っても1粒たりともハック(購入)できん。
お前たちは、すべての記号を奪われたこの山の頂で、ただの手を繋いだ生身の肉体だけで、この滅びゆく日本を生き抜く覚悟があるか?」
理央はメグミの、泥臭くも愛おしい生身の手をこれまでになく強く握り締めた。
「……ああ。俺の恋愛工学も、株の数式もすべて紙屑になった 。だけど、俺は自分の傲慢な天動説を更地にして、ただの一人の男として、彼女の孤独の体温を一生守り抜くと、あなたの前で誓ったんだ。どんな地獄が来ようが、俺はこの手を二度とロスカット(損切り)しねえよ」




