↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大岩山から絶望を配信する〜男は耐えろと抜かす世界を、低級霊のウイルスで完全チェックメイトしてやった〜  作者: ひややっこ万次郎
第5章:『市場価値ゼロの黙示録 〜泥濘のサバイバーと、世界崩壊前夜(ラストナイト)の利他コード〜
126/254

番外編15:『聖域の異教徒ハック(チェックメイト) 〜不信者の夫ときよめられる妻、そして泥を歩む高僧の祝福〜』2

お互いの本当の傷と本音を開帳し合い、これ以上ないほど嘘のない完璧な関係性(信頼)になって、二人は固く手を繋いだまま叡山電鉄の車窓を見つめていた。

◇

京阪出町柳から叡山電鉄で修学院駅まで。

そこから徒歩で20分。ケーブルカーを乗り継ぎ、ついにたどり着いた比叡山の山頂。

二人が向かったのは、千日回峰行を満行した最高位の高僧・一真が、日々信徒に「お加持」を授けている無動寺明王堂のストリートだった。

お加持の時間が終わり、明王堂の最奥にある静寂な一室。ついに一真とサシで向き合うことになった神崎とメグミ。

かつてネットの安全な檻から「タイパもコスパも最悪の、今の時代に1ミリも合わない愚の骨頂だ」と最大級の嘲笑の呪詛(裏ログ)を打ち込んでいた神崎は、目の前の一真から立ち上る、死線をくぐり抜けた本物の人間の野生の覇気の前に、すべての傲慢なマニュアルをへし折られてただ平伏していた。

「一真さん……。俺は、あなたを画面の裏で徹底的にバカにしていた最低のナンパ師だ。女をハックしてコントロールすることだけが勝利の方程式だと信じて、愛なんて非効率なゴミだと切り捨ててきた。

俺の授けるマニュアル(恋愛工学)を完璧にトレースしてモテまくった弟子からは『非モテだったあの頃の方が愛があった気がする』と冷え切った顔で去られ、逆に成果が出なかったモブ足軽どもからは自分の臆病さや不勉強を棚に上げて『お前の方程式なんてただの詐欺だ!』と逆ギレの罵詈雑言(バリゾーゴン)を山ほど浴びせられてきた。

俺の方程式は、外では史上最高峰の恋愛学だと謳っていたが、内心、人を不幸にする欠陥データなのでは?と矛盾した感情も同時に伴って、タワマンの頂上で、人知れず、ずっと孤独に震えていた。だけど、メグミのあの無心の敬意に直面した時、俺のそんな小細工はただの不潔な凶器に変わったんだ。

俺は自分の傲慢な天動説を全部更地にして、ただの一人の男として、彼女の孤独の体温を一生守り抜きたいと、魂の底から誓ってここまで登ってきた」

神崎の血を吐くような自白の質量を、一真は冷徹な、しかし深い体温を宿した瞳で真っ直ぐに見据えていた。

そして、大行満阿闍梨としての剥き出しの悟りのメロディを、静かに神崎へ授けた。

「……神崎と言ったな。お前が命の時間を削り、この狂った情報社会のバグ(人間の生態データ)を透視して導き出したその『方程式(恋愛工学)』。それは決して、ただのハリボテなどではない。お前は、嘘の綺麗事の盾を構えて他者を搾取する都会の泥人形どもとは違う。自らの肉体と知性をストイックに追い込み、孤立無援の荒野で生き抜くために、お前なりの真実(正義)を掴み取ろうと必死に戦ってきたはずだ。お前の方程式には、お前の『労働の命(エネルギー)』が確かに宿っている 」

神崎の肩が、微かに震えた。一真は静かに言葉を重ねる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。