番外編15:『聖域の異教徒ハック(チェックメイト) 〜不信者の夫ときよめられる妻、そして泥を歩む高僧の祝福〜』1
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の人物、地名、特定の宗教団体、結婚相談所、および書籍・マッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の宗教婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の生き方や価値観、信仰を誹謗中傷する意図は一切ございません。あらかじめご了承の上、エンターテインメントとしてお楽しみください。
すべての欺瞞の武器(ハック理論)を脱ぎ捨て、ただ一人の無力な生身の男として、彼は「筋」を通す進軍を選んだ。
大岩山の頂上から世界を完全チェックメイトする悪魔の電磁波ウイルスが放たれる、運命の当日の朝。
神崎理央(31歳)とメグミは、約束の地である「比叡山」の神聖な山頂を目指し、ガタゴトと揺れる叡山電鉄の車中にいた。
窓の外に広がる比叡山の圧倒的な野生の緑のストリートを見つめながら、理央は自らの過去のすべてを、隣に座る垢抜けない中流階級の少女へ真っ直ぐにカミングアウトした。
「メグミさん、俺はあなたに1ミリの嘘もつきたくない。だから、すべてを話す。これまで俺の最高級タワーマンションで一緒に暮らしていたモデルの愛人とは、昨夜完全に別れてきた。
あの部屋の権利と財産はすべて彼女に譲り、手切れ金として【生身の現金1億円】を渡して、これまでの過去を完跡にロスカット(清算)してきたんだ」
メグミは驚きに目を見開いた。
物心つく前からクリスチャンの純血の家庭という環境の檻で育ってきた彼女にとって、「タワマンの愛人」「手切れ金1億円」という世俗のハイスペックの極みのような話は、あまりにも自分の住んでいた世界とかけ離れすぎていて、正直に言えば心臓が飛び出るほどの衝撃だった。
だが、彼女の持つ高い観察眼は、そこに打算や虚飾の誇りが一切混じっていないことを見抜いていた。
理央がこれまで磨き上げてきた頂点のステータス(欺瞞の鎧)のすべてを犠牲にしてまで、自分と対等な生身の人間として向き合うためにどれほど重いケジメをつけて目の前に立ってくれたのか。
その命を削り出した誠意の体温が、メグミの胸の防衛線の奥底に真っ直ぐに届いていた。
メグミは理央の手をぎゅっと強く握り締め、自身の心の最深部に閉ざしていた『心理的防衛線の檻』を外して、生身の本音(過去ログ)を開帳し始めた。
「……神崎さん。ありがとうございます。私の周りにいたクリスチャンの男の人たちは、聖書の素晴らしい御言葉をたくさん知っていて、私を大切にするって言ってくれました。でも、私、心の底ではずっと冷ややかに引いていたんです。彼らは、自分が傷つくリスクや、世俗のストリートを前にした時の自分の【臆病さ】から目を背けるために、聖書のマニュアルを都合よく悪用して自分を羊飼いぶって着飾っているだけだったからら。
いざとなったら自分で責任を取らずに『神様の御心が……✨』って逃げるだけ。そんな去勢された綺麗事の檻の中に、私の生身の孤独を救ってくれたり、男の人の労働を尊重し合える本当の体温なんて、1ミリも存在しなかったんです。だからこそ、私は、あなたについていきたいと思ったんです……」




