番外編12:『聖域の一方通行(チェス盤) 〜頂点のナンパ師が宿したバグと、清楚女子が秘める冷徹な絶望〜』2
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の人物、地名、特定の宗教団体、結婚相談所、および書籍・マッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の宗教婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の生き方や価値観、信仰を誹謗中傷する意図は一切ございません。あらかじめご了承の上、エンターテインメントとしてお楽しみください。
そこに、メグミという女性の底知れない心の防衛線の正体があった。
彼女はクリスチャンの男性たちにもの凄く愛想よく振る舞い、優しく接している。
しかしそれは、異性としての好意ではなく、聖書の教えに従っているだけの「完璧な記号(キリスト教的隣人愛)」に過ぎないのだ。
割り勘にするのも、「男の人にばっかり出させたら悪い」という配慮であると同時に、相手に1ミリの借りも作らず、自らの内側(防衛線)に入らせないための、冷徹なまでの「男への諦め(ロスカット)」の証明でもあった。
理央の脳内ログは、画面に並んでいたあの草食モブ男たちのグロテスクなバグ(本音)を瞬時に暴き出す。
彼らは、聖書のマニュアルを盾にして、内輪の女たちの前では『僕が君を導く羊飼いだ』と言わんばかりに内心では最高に偉そうに虚勢を張っている。
だがその実態は、いざ生身の異性を前にすれば目も合わせられないほど臆病であり、ソドム(罪悪と欲望にまみれた世俗のストリート)の獰猛な人間たちの前へ放り出されれば、一言も自分の意見すら言えずに這いつくばるだけの、去勢された哀れなオスに過ぎない。
彼らは、そのオスとしての絶対的な「臆病さ」と劣等感を隠し、自己防衛するためだけに、宗教という最も安全なパッケージの檻にハメて偉そうにマウンティングを取っているだけなのだ。
メグミの徹底した割り勘という「配慮の盾」は、そんなモブ男たちの欺瞞や下心、そして衣の下に隠された臆病な本音をすべて見抜いた上で、相手に1ミリの借りも作らず、自らの内側(防衛線)に入らせないための【絶対的な心の遮断】でもあったのだ。彼女は優しく微笑みながら、内心では相談所の去勢された男たちを「男」としては一切見ていない、強烈な冷ややかさを隠し持っている。
その冷徹な絶望に気づいた瞬間、理央の脳裏に、かつて裏のアカウントから「非効率のゴミだ」と徹底的に嘲笑の呪詛を打ち込んでいた、比叡山の高僧・一真のあの「剥き出しの悟り」が、ドロドロと溶け込むようにフラッシュバックした。
『世俗の男女は、画面の裏で記号や条件を競い合い、相手を都合よく消費することばかりを考えている。
だが、そんなマニュアルの檻の中に、本物の縁など宿りはしない。
主導権を握ろう、損をすまいと賢ぶる己の傲慢(天動説)を一度すべて更地にして、ただ生身の肉体で泥を踏み締め、相手の孤独の体温に寄り添うこと──それだけが、目に見えない本当の利他であり、信頼の体温なのだ』
理央の脳細胞に、一真の言葉が強烈な正論としてバチッと命中する。
「そうか……あいつらは、自分の臆病さを隠すために、聖書のマニュアルの盾を構えて羊飼いのフリをしてるだけだ。
だから、メグミに1ミリも相手にされてねえんだ。
メグミは、あの男たちの欺瞞を全部見抜いた上で、愛想という名の冷徹な仮面を被ってんだよ。
彼女もまた、この狂った環境の檻の中で、誰にも本音を理解されない、圧倒的な孤独の過酷を生きているんじゃないのか……!
一真の放った剥き出しの悟りが、メグミの孤独を透視するためのレンズとなり、理央の冷え切っていたハックマニュアルを内側からドロドロに溶かしていく。




