番外編12:『聖域の一方通行(チェス盤) 〜頂点のナンパ師が宿したバグと、清楚女子が秘める冷徹な絶望〜』1
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の人物、地名、特定の宗教団体、結婚相談所、および書籍・マッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の宗教婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の生き方や価値観、信仰を誹謗中傷する意図は一切ございません。あらかじめご了承の上、エンターテインメントとしてお楽しみください。
ツーツーという、冷徹で無機質な切断音が最高級タワーマンションの自室に響き渡り、消えた。
大岩山の頂上から世界を完全チェックメイトする悪魔の電磁波ウイルスが放たれる、ちょうど1ヶ月前の令和の夜。
神崎理央(31歳)は、スマートフォンを握りしめたまま、高級絨毯の上にただ生身の肉体で立ち尽くしていた。
彼の目線の先、キングサイズのベッドの上では、誰もが羨むような抜群のスタイルと美貌を持つ、現役のハイスペックモデルの愛人が無防備な寝息を立てている。
声をかければマニュアル通りの確率論でベッドへとハックできき、お互いに市場価値をすり合わせ、形だけの快楽を消費し合う、最高に効率的で洗練された関係 。
これこそが都会のストリートの頂点であり、一般の足軽(男たち)が一生かかっても届かない「完璧な記号」でパッケージされた檻だった。
だが、今の理央の脳細胞を支配しているのは、ベッドの上のきらびやかな美女ではなかった。
ZOOMセミナーの画面の片隅で出会った、あのやぼったく、垢抜けないクリスチャン女性・メグミの、脳裏に焼き付いて離れないあの真っ直ぐな瞳のログだった。
『男の人にばっかりお財布を出させたら悪い。一生懸命働いた大切な命の体温だから』
「ハッ……何やってんだ、俺は。目の前には極上のメスがいて、最高のセックスと勝利の美酒が手に入っている。
なのに、なんで俺はあんな相談所のやぼったい女一人のデータに、ここまで防衛線を内側から揺さぶられてるんだ?
俺は何を考えてるんだよ……」
理央の無敗の方程式(ヤリチン工学)が、激しいシステムエラーの警告音を鳴らし続ける。
なぜなら、メグミのあの労働を思いやる言葉は、セミナー全体のお題に対して彼女が自身の倫理から放った「ただの生身の独白」に過ぎないからだ。
彼女は画面の片隅にいる理央のことなど1ミリも意識していないし、個別の認知すらしていない。
すべてを確率でコントロールし、常に女側から「選ばれる強者」として主導権を握り続けてきた理央にとって、自分が相手の世界に存在すらしていないという「絶対的な一方通行(片想い)」のファクトは、
人生で一度も経験したことのない、逃げ場のない矛盾の檻だった。
理央はフッと冷え切った高級コーヒーに目を落とし、自らの百戦錬磨の市場観察眼で、メグミという存在の真の核心を冷徹に心理分析し始めた。
「……そうだ。もし彼女が、誰に対しても平等に労働を尊重し、割り勘を徹底するだけの無差別な善人(聖女)なら、あの相談所に集まっている去勢された草食モブ男たちの誰かと、とっくに一緒になっているはずだ 」




