番外編11:『聖域の御言葉逆ハック(チェックメイト) 〜二の矢を放った牧師の全面降伏と、欺瞞の檻に結ばれた和解の同盟〜』3
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の人物、地名、特定の宗教団体、結婚相談所、および書籍・マッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の宗教婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の生き方や価値観、信仰を誹謗中傷する意図は一切ございません。あらかじめご了承の上、エンターテインメントとしてお楽しみください。
圧倒的な聖句のカウンターを食らい、自らのフィールドで完全チェックメイトされた牧師は、何も言い返せないまま、這うようにしてその日のZOOM通信を切断した。
だが、物語の因果応報のチェス盤は、そこで止まらなかった 。
対決から3日後、ひややっこのもとへ、あの牧師から再び連絡が入ったのだ。あの時とは一転して、プライドを全てロスカットし、慌てふためきながら命乞いをするような懺悔の声だった。
『ひややっこさん……あの時は本当に悪かった。私のスクリーニング(判断)が完全に間違っていた。実は……彼女の裏のログを調べたところ、教会では絶対に禁忌とされている複数交際、いや、二股、三股を裏でかけていたことが発覚したんだ……』
その報告を聞いた瞬間も、ひややっこは冷たい目を微塵も動かさなかった。
「ハッ……。牧師先生、何をそんなに大騒ぎしている?付き合っているわけでもない段階のアプリの仕様として、女が二股をかけていようが、三股をかけていようが、そんな生態ログは私にとっては1ミリだってどうでもいいんだよ」
ひややっこが魂の底から激怒していたのは、女の不品行というデータなどではなかった。
「問題は、お前たちのその、傲慢な『態度』よ。その女は、自分の複数の男をハックして格付けしていた醜悪な本音を隠すために、あなたという宗教の権力を巻き込み、聖書の言葉を都合よくパージして、私を『不信仰な悪』と決めつけて断罪してきた。他者を悪にハメて保身の檻に逃げ込んだあなたたちに、まずはこの御言葉を返しておこう。
『偽善者よ、まず自分の目から丸太を取り除け。そうすれば、はっきり見えるようになって、兄弟の目から塵を取り除くことができる(マタイ 7:5)』」
ひややっこの容赦のないトゲは、さらに二股の怪物を匿っていた教会組織のシステムそのものを、聖書の絶対的な罰のアルゴリズムで抉り出した。
「そして、神の聖域を汚したあの淫行の怪物にも、その相応しい報いを受け取らせるべきだ。『神は、不品行な者や姦淫をする者をさばかれる(ヘブル 13:4)』
『正気になりなさい。不品行な者、汚れた者、貪欲な者――これは偶像礼拝者にほかならないが――このような者はだれも、キリストと神との国を受け継ぐことはできない(エペソ 5:5)』
聖書の世界において、男の労働をタダで吸い尽くし、綺麗事でパッケージされた生体監獄の中で不品行に溺れたメスがどのような目に遭うか、あなたが一番よく知っているはずだ。彼女は神の国を受け継ぐことはない」
神学のチェス盤において完全に言い含められ、逃げ場を失った牧師は、受話器の向こうでただガタガタと震えるしかなかった。
こうしてひややっこは、自らの圧倒的な正論の力によって教会の最高権力を完全に掌握し、牧師との間に、ある奇妙な『和解という名の同盟』を結んで回想ログをクローズしたのだった。
◇
回想が終わると、誰もいない暗い部屋でひややっこは
1人、ニヒルな笑みを漏らした 。
「お前の出会ったそのメグミという女の『割り勘の体温』が本物かどうかは、私にはわからない 。
だが、彼女の背後にある『環境の檻』がどれほど歪んでいるか。
……さて、全能のナンパ師。お前はこの逃げ場のないチェス盤の上で、一体どう出るかな?」
番外編12へつづく




