番外編11:『聖域の御言葉逆ハック(チェックメイト) 〜二の矢を放った牧師の全面降伏と、欺瞞の檻に結ばれた和解の同盟〜』2
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の人物、地名、特定の宗教団体、結婚相談所、および書籍・マッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の宗教婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の生き方や価値観、信仰を誹謗中傷する意図は一切ございません。あらかじめご了承の上、エンターテインメントとしてお楽しみください。
『ですが、ひややっこさん。そもそもマッチングアプリというものは、神様が用意してくださる「自然な出会い」の摂理からあまりにも遠く離れた、人間の強欲と利己心が作り出した不潔な道具です。
聖書にはこうあります。
「世と世にあるものとを、愛してはならない。もし、世を愛する者がいれば、父の愛はその人の内にない。すべて世にあるもの、すなわち、肉の欲、目の欲、持ち物の誇りは、父から出たものではなく、世から出たものである(ヨハネ第一 2:15〜16)」
あなたが彼女とメッセージを重ねていたとしても、それはただ画面の裏で、肉の欲に従って消費し合っていたに過ぎません。そんな軽薄な場所で、私たちの教会の純潔な羊を誘惑し、生身のカフェへ引っ張り出そうとすること自体が、主の前に大いなる罪なのです。
あなたがそこから退場し、悔い改めることこそが御心なのです』液晶画面の向こうで、高尚な聖書の言葉の盾を構え、上から目線の『神の盾』でマウンティングをとってくる牧師。
だが、それを冷徹に聴き終えたひややっこは、感情を1ミリもブレさせることなく、冷たい目をして静かに唇を開いた。
「何だこの 欺瞞 ( ぎまん ) は」
その一言に、牧師の微笑みがぴたりと凍りつく。
ひややっこは、冷徹な理詰めのトゲを液晶画面の向こうへ一網打尽に突き刺していった。
「信仰の名において、一対一の『対話の圧殺』を強要するのか?
アプリの海で、向こうからよろしくお願いしますと声をかけてきた現実を完全に無視し、いざカフェに誘っただけで男の誠意の投資を全て罪悪のゴミ箱にロスカットする。
お互いに積み上げた『生身の信頼』や本音の対話を、教会の『内輪の環境』を守るための、一時の保身のために一瞬で使い潰すというのか 。
そこから得られるものが、ただの一方も傷つかないための『大嘘の大義名分』以外に見当たらない。正気ではない。『愛は寛容であり親切だ』という、あなたたちの聖書のマニュアル(義務)はどうしたのだ?」
牧師が言葉を失う中、ひややっこは自らの指先をキーボードへ走らせるように、聖書という「最高峰のマニュアル」そのものを用いた逆ハック理論を展開した。
「マッチングアプリというシステムに関して、私にも賛否両論はある。だが、この道具は聖書の御言葉に何一つ反していない。あなたが言う『自然な出会い』とは何だ?
聖書を読めば、神の御心による結婚の多くが、人間の冷徹な『仲介システム』によって成立しているのは明らかなファクトだ。
創世記24章。信仰の祖アブラハムは、息子イサクの妻を探すため、信頼できる老僕エリエゼルを遠くの土地へ派遣した。老僕は条件を吟味し、井戸の傍らでリベカという女性を【選別】して連れ帰った。
あるいはルツ記。未亡人となったルツは、姑ナオミの緻密なマッチング戦略に従って行動し、有力者ボアズとのご縁をハックした。
エリエゼルもナオミも、現代で言えば高度な仲介システムそのものだ。
聖書はシステムを用いた出会いを否定していない。
それにもかかわらず、道具そのものを悪に仕立て上げ、私の誠意を『肉の欲』と断罪する。
どう見積もっても、神も、あなたたちも、傷つけられた私も、三方誰も得をしない。実に愚かな 偽善 ( ぎぜん ) だ」




