番外編9:欺瞞の聖域への逆ハック 〜全能のナンパ師のシステムエラーと、大岩山の神が隠したクリスチャンの暗黒ログ〜1
【読者の皆様へ(免責事項)】この物語は完全なフィクションであり、実在の人物、地名、特定の宗教団体、結婚相談所、および書籍・マッチングアプリ等とは一切関係ありません。作中の宗教婚活事情や心理描写はエンターテインメントとしての創作・風刺であり、特定の生き方や価値観、信仰を誹謗中傷する意図は一切ございません。あらかじめご了承の上、エンターテインメントとしてお楽しみください。
全ての関係を確率とハック理論でコントロールしてきた男が、初めて自らのチェス盤の上でフリーズしていた。
大岩山の頂上から悪魔の電磁波ウイルスが放たれる、ちょうど1ヶ月前の令和。
神崎理央(31歳)は、ZOOMセミナーの画面越しに、あの清楚な女性クリスチャンのプロフィール画面をじっと凝視したまま、どうしても次のキーを叩くことができずにいた。
『男の人にばっかりお財布を出させたら悪い。一生懸命働いた大切な命の体温だから』
これまで出会ってきた全てのメスが構えていた『強欲な品定め(スクリーニング)』の檻が、彼女の真っ直ぐな言葉の前に一瞬で瓦解していた。男の優しさをタダで吸い尽くすセフレホルダーでもなければ、処女の仮面を被って高スペック男を財布ホルダー(ATM)にハメようとする欺瞞の聖女でもない。
そこにあったのは、これまで理央が一度も手にしたことのない、本物の「生身の信頼」のメロディだった。
「クソッ……、なんだこの感覚は。俺の方程式(恋愛工学)が……バグを起こしてやがる」
女の脳内アラームを先回りしてハックする短文を滑り込ませようとしても、指先が冷たく震える。
彼女をいつものようにホテルのバックヤードへと誘導する『作業』のビジョンが、どうしても描けない。
愛という不確実な記号を冷笑し、効率の正義だけで生きてきた理央にとって、自らの防衛線を内側から激しく揺さぶるこの未知の感情は、あまりにも巨大な恐怖だった。
八方塞がりの独白。その時、理央の脳裏に、かつてネットのストリートの片隅で奇妙な情報交換をした、ある年上の男の影がフラッシュバックした。




