第1話『開幕』
第1話『開幕』
20XX年,9月12日
午前7時16分____
おはよぉ、玲華にりあ
混乱した思考をなんとかしずめながら
いつも通り2人にそう挨拶をした。
ーーー
「おはよう、るい。随分と遅いのね」
そう、言い放った紅い差し色が
輝く銀髪の彼女は"九条玲華"
七年前、路地で倒れていた俺を拾い、
育ててくれた恩人。親代わりというか
俺にとっては姉みたいな人だ。
いやぁ、ちょっと色々あって…
「また、夜更かししたんじゃないでしょうね?」
あはは…まぁ、そんなとこ
「はぁ…まったく、何回言えばわかるのかしら」
「まぁまぁ、そんな怒らなくてもいいじゃんか」
そうやって玲華をなだめた白髪に
ピンクの瞳をたずさえた彼女は
"星宮りあ"見た目は訳あって幼いが立派な大人だ。少々、俺に甘すぎる気がするけど…ね。
「りあはるいに甘すぎるのよ」
まぁいいじゃんかぁ、甘くても
「るいが言わないで」
「るいは言えないでしょ」
…はい
「そんなこと言ってないで、早く食べなさい。冷めるわよ?」
はーい…
俺は食卓に並べられた料理を口に運びながら
辺りを見渡していた。
いつもの拠点、騒ぐ子供たち、
玲華にりあがいる。
…ほんとに俺は戻ったのか
気付けば口からその言葉が零れていた。
「…るい?なんか言った?」
いや、なんでもないよ、りあ
「そう?ならいいや」
…気を付けないと
このことは言えない。
頭ごなしに死んで気付いたら
1ヶ月前の朝でしたなんて信じてもらえるわけがない。頭おかしいって思われるだけだ、うん。
とにかくこのことは秘密にしておこう。
それがいい。
ーーー
そうだ、玲華
今日はどこに行くの?
パンを頬張りながら
俺はふと玲華に質問をした。
「昨日、何度も伝えたはずだけど…また忘れたのね…」
玲華は呆れたようにこちらを見る。
ごめん、ほんとにごめん
だからその顔でこっち見ないで、怖いから。
「はぁ…今日は午前に孤児院への配達、午後は特に用事なし、フリーよ。」
「今日は私も行くからるいはお留守番ね」
えぇ!俺、お留守番なの!?
「昨日、玲華が何回も言ってたよー?」
「このおバカさんに何言っても無駄よ、りあ」
え、なんで、ディスられてんの?
え、なんで!?
「そんなことないよねー?ほら、よしよし」
りあー?子供扱いしないで…
すごく虚しくなる。
「りあ、そんなのほっといて行くわよ」
ねぇ、さっきから俺の扱い酷くない?
なんかいつにも増して酷くないかなぁ?
「少しぐらい反省しなさい」
「ちょっとは反省しなね…?」
…はい、すみません
「じゃあ、行ってくるわ、夕方頃には帰るから」
「お留守番よろしくね!るい!」
わかった、行ってらっしゃい
ーーー
いつもと変わらない日常。
なぜか懐かしい気がする。
…帰ってきたんだ
「るい兄!ねぇ、こっちきてー!遊ぼー!」
「今日は私と遊ぶの!」
わかった、わかった
今行くよー!
街に向かって歩く2人を眺めながら
俺はそっと扉を閉めた。
***
20XX年,9月12日
午前10時14分____
俺は自室に戻り、改めて俺の身になにが起きたのか整理することにした。
1ヶ月後の10月12日____
確かあの時…政府にりあが攫われた後、
玲華が単独で救出に向かって捕まった。
それを知った俺は2人を助けに行ったけど
結局、追い詰められて死んだんだよな…
それで、目が覚めると
1ヶ月前に戻っていた…と。
意味不明すぎるんですけど!?
なにがどうしてそうなんだよ!?
(咳払い)
スゥゥゥ↑
色々思うことはあるけど…
やっぱり注意すべきは"アイツ"だ。
俺を撃ち殺した紺色髪の女性。
あの人は一体…何者なんだろうか…
あの速度といい、強さといい、
ただ者ではないことはわかるんだけどなぁ…
そして、なによりも俺の異能力。
遡行再起【レトログレード・リズーム】
あの謎の声によると
俺が"人の手"によって死ぬことを
条件として1年の寿命消費で
特定の過去に戻る。
つまり、ループする。
しかも、俺が他殺される度に
自動でループする上に消費した寿命は
戻らない。らしい。
残りの寿命は50年。
多いようには見えるけどそうでもなさそうだ。
本来、存在しないはずのLv.Vみたいだし
政府にバレたら…捕らえらて実験の材料になるかあるいは死ぬ。どちらかだろうな…
とにかくわからないことが多すぎる。
行動を起こそうにも情報が足らなすぎる。
せっかく戻ったんだ。
玲華もりあも俺が助けないと…
この時の俺は知りもしなかった。
この先、待ち受けている選択も結末も
なにもかも。
第1話 終幕。
次回、第2話『再び』
連載は早いかもしれないし遅いかもしれません。
見切り発車ではじめたのでわかりません!
明日の己月に期待。




