表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
73/80

第73話【天城蓮 最新】

天城蓮。


今度は消さなかった。


画面の候補が出る。


「天城蓮 妻」


「天城蓮 配偶者」


「天城蓮 流出」


「天城蓮 第13妻」


「天城蓮 最新」


美緒の指が止まる。


第13妻。自分の番号。検索候補に、まだそれがある。


自分が検索した履歴なのかもしれない。世間が検索している言葉なのかもしれない。分からない。


どちらでも、胸が冷えた。


美緒は、検索ボタンを押さなかった。ただ、候補を見ていた。


最新。その言葉が、少しだけ引っかかった。


今の天城蓮。美緒が申請を出した後の天城蓮。流出騒動の後の天城蓮。


知りたい。そう思った。思ってしまった。


美緒は、自分に言い訳した。


元妻だから。関係者だったから。自分の流出事件がどう扱われているか、確認しておきたいだけ。手続きに影響があるかもしれない。ニュースになっていたら、知っておいた方がいい。もう好きだから見るわけじゃない。未練じゃない。ただ、確認するだけ。


そう言い聞かせるたび、嘘が濃くなる気がした。


美緒は、宮原の方を見た。


宮原は眠っている。


手を伸ばせば触れられる距離にいる。今の美緒を、美緒と呼ぶ人。分からないと言いながら、隣にいる人。


その宮原が近くにいるのに、美緒の指は天城蓮へ向かっている。


そのことに、少し罪悪感があった。でも、止まらなかった。


宮原は今の近さだった。天城蓮は、失われた中心だった。


近さでは、中心は埋まらない。


美緒は、検索窓に入った名前を見つめた。


天城蓮。


その名前だけで、まだ身体の奥が反応する。


推し。夫。対象者。元夫。まだ正式には元夫ではないかもしれない人。


前に、最近、無理してない?と送ってきた人。あの個室で、お前といると楽だ、と言った人。流出の時には何も来なかった人。申請を出すまで、最後まで何も来なかった人。


それでも、美緒はその名前を打った。


美緒は、候補の「天城蓮 最新」を見た。


押せば、何かが出る。新しいニュース。古いまとめ。誰かの噂。流出の続き。何もないかもしれない。


何もなければ、それはそれで怖い。


自分が第13妻をやめようとしても、世界は何も変わっていないということだから。


美緒は、親指を検索ボタンの上に置いた。まだ押していない。


押したら、次の何かが始まる気がした。


まだ見つけていないもの。見たくないもの。でも、見なければいられないもの。


美緒は、短く息を吸った。


そして、検索ボタンを押した。


画面が白く切り替わる。


検索結果が表示される直前、美緒は一瞬だけ目を閉じた。


見ないと決めたはずだった。


それでも、名前を入れてしまった。


静かすぎる夜に耐えられなくて。


天城蓮の名前を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ