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その後も5人で話をしていたが食堂を閉めると言われたのでそれぞれ部屋に帰っていった。といっても俺とライドは同室なんだけど。
「ソラは明日どうするんだ?」
「街でも見てまわろうかなって。馬車だったから全然見れてないし。ライドはリークさんに刀を見せてもらうんだろ」
「あぁ。すごいぞ、あの刀ってやつ。俺の知ってる剣とは全然違うんだ。片方しか刃がないのに」
「わ、わかったから。その話はまた今度聞くから」
こうなるとライドの話は長くなるんだよな。明日に備えて休みたかった俺はライドの話を遮った。遮られたライドは少し不服そうだったけど納得してくれたのか、渋々とベットに入っていった。
俺もベットに横になる。昼寝をしていたため寝れるか不安だったが、満腹になったこともあり心地よい眠気が襲ってくる。俺はそのまま意識を手放した。
「風が気持ちいいですね」
「そうだな」
俺は今、ネルと2人で街に来ている。最初は1人の予定だったけど朝食時ネルに今日の予定を聞かれ、一緒に行くと言われた。別に断る理由もないので、了承して今に至る。
「こんな風に海を見るのは初めてです」
「俺も(この体では)初めてだ」
平静を装っているが、俺の心臓はバクバクだ。クアールの街ではランクをあげる事に専念していて、こんな風に出かけることなんてなかった。しかも、男女が2人で出かけるなんてデートじゃないだろうか。
「この街もクアールと一緒で賑わってますね」
「へ?あ、そうだな。ライドは厳かだったって言ってたけど昔の話だからな」
考え事をしていたためネルの言葉に反応するのが遅れてしまった。ネルの言う通りイダイの街は負けず劣らず賑わっている。港や市場があるぶん、むしろイダイの方が賑わっているようだ。
港町だけあって市場には魚がたくさん並んでいる。この世界に来て初めて見るものばかりだ。
「おう!そこの綺麗なねーちゃん。弟連れて買い物か?偉いな。どうだい。うちで魚買っていかないかい?」
「おうおう!!俺の方が目つけてんだ。嬢ちゃんうちで買っていきなよ」
「いいや。私の方が先さね。お嬢さん。うちの野菜はとっても美味しいから買ってみな」
1人がネルに声を掛けると他の人たちもこぞってネルに話しかけてくる。やっぱりネルって綺麗なんだよな。ここに来るまでも色んな人が振り向いてたもんな。
それにしても弟か。まぁネルとの身長差を考えるとそうなるよな。これでも伸びてきてるんだけど……。
「す、すみません。ソラさん行きましょう」
ネルは勢いよく頭を下げると俺の手を取って走り出した。目の前を走っているネルを見るもやはり視線は少し上を向くわけで…。男としては身長は高くなりたいところだ。毎日カルシウムでも摂取してみるか。
しばらく走り、ゆっくりとスピードを落としてく。流石についてくる人はいなかったようだ。
「ぶぷっ、ネル焦りすぎ」
「だって、あんなにたくさんの人にかこまれるなんて…もう!!いつまでも笑わないでください」
「くくっ…ごめんごめん。じゃあ行こうか」
笑うのを抑えながら歩き出す。港から離れてしまったが、街中も色んなお店でいっぱいだった。俺とネルは気になったお店に片っ端から寄っていき色んなものを買った。
Bランクになるためたくさんの依頼をこなしてきたため、自由に使えるお金はあるから我慢しないことにした。
「買った買った」
「たくさん使いましたね」
買い物が一通り終わると公園にある噴水に腰掛ける。荷物はそれぞれアイテムボックスに入れているので手ぶらだ。アイテムボックスがなければたくさんの箱を積み上げている漫画みたいなことをする所だった。
「はい。ソラさん」
「ありがと」
先程屋台で買っておいたリモン(レモンみたいな果実)のジュースとサンドイッチを貰う。さっき13の鐘が鳴るのが聞こえた。朝食後からずっと動いていたため約5時間ほど歩いていたわけだ。なかなか濃い5時間だった。
「クアールとはまた違った賑やかさですね」
「だな。みんな活き活きしてる」
クアールはどっちかと言うと冒険者が多くギラギラした目の人達が多かったが、イダイは商人が多い。俺としてはこっちの方が過ごしやすい気がする。
「ですね。クアールも住みやすかったですけど、この街も住みやすそうです」
「そうだな。あ、そうだ。これネルにあげるよ」
ネルに渡すものがあったことを思い出し、アイテムボックスからピンクのリボンのついた手のひらサイズの小さな箱をひとつ取り出す。
「いいんですか?」
「もちろん。開けてよ」
ネルが小箱の中から小さな瓶を取り出す。中にはラベンダーの香りのするポプリが入っている。ラベンダーの香りはリラックスすると聞いたことがあるから、少しは力になれるだろう。
「ありがとうございます。大事にします!!」
瓶を大事そうに抱えているネル。嬉しそうなネルを見ると買ってよかったと思った。というか、女の人にプレゼントを買うなんて前世でもしたことが無いからどれにすればいいのか本当に悩んだ。
瓶の形だってハートだったり可愛らしい動物の形だったり色々あったけれど、フラスコ型を選んだし。店員さんにはペアのアクセサリーをすすめられるし大変だった。
しかもそれをネルが見ていない間に選ぶのが難しかった。世のカップルはこんなこと普通にしてるのかな。
「お返しというわけではないですが、私からもプレゼントがあります」
ネルがアイテムボックスから取り出したのは紺色のリボンがついた長方形の箱だ。俺がポプリを買ったお店と同じ店で買ったようだ。箱を受け取り開けると中から水色のガラス製の万年筆とインクが出てきた。
「これって…」
「ずっとソラさんとライドさんに何かを返せないかと考えてまして。ライドさんには珍しい鉱石を買ったんですが、ソラさんはあまり欲しいものを言ってくれないので。クアールでは色々と勉強されていたようなので万年筆にさせてもらいました」
初めて見るガラス製の万年筆。太陽にかざすとキラキラと輝いていてとても綺麗だ。落としたり力を入れると折れそうで大事に扱う。
「ありがとうネル。すごく気に入った」
「気に入ってもらえて良かったです」
落とすといけないのですぐにアイテムボックスに収納する。ネルも俺があげたプレゼントを収納したみたいだ。
「この後はどうしますか?」
「どうしようか。まだ時間があるんだよね」
「そこの御二方…」
聞いたことの無い声に突然声をかけられ周囲を見渡す。誰が声をかけたんだろう。声をかけた人物を探していると、少し離れたところから手招きをしている人を見つけた。
警戒しつつ、ゆっくりとその人に近づいていく。




