18
「俺たちを呼んだのは貴女ですか?」
「そうだよ。ちょーっとあんた達が気になってね」
俺たちを呼んだというその人はお婆さんだった。黒いローブを着ていてフードを深く被っているため、遠くからではよく顔が見えなかった。
けれどなんであんなに離れていたのに、この人の声が聞こえたんだろう。
「ひひっ。魔道具を使ったんだよ」
「お婆さんもしかして思ってることが」
「どうだろうねぇ」
もしかしてこの人は神様と同じで心の声が聞こえるのだろうか。それとも俺の顔がそんなに分かりやすかったのだろうか。
「ところでお婆さんへ何故私たちを?」
「あんた達が変わってるからさ。ハイエルフの嬢ちゃんに、あのティリル神の加護持ちの坊や」
「なんでそれを…」
「気になるなら鑑定してみればいいじゃないか」
鑑定のこともこの人にはバレているらしい。俺は鑑定を使いお婆さんを見た。
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「な、なんだ!?」
お婆さんを鑑定したが目の前に表れたステータス画面は文字化けしており読めない状態であった。何度鑑定し直しても読めないままだ。
「ひひっ。見えたかい?」
「見えなかった…。お婆さん何者なの」
「秘密だよ。ちょっとあんた達が気になったから声を掛けただけさ」
ここはこんなに暑かっただろうか。先程までは海風もあり心地よいと感じていたはずなのに、今は風は止みじっとりと汗が流れてくる。
「そんな目で見なくても何もしないよ。まったく…今の若いやつらはそんなんかね。いいこと伝えに来たっていうのに」
「いい事ですか?」
「そうだよ。面倒な事に巻き込まれてるんだろ?その事で知りたいことがあればナナバ亭に行ってアイスを1つ。その時に【たっぷりのハチミツをかけて】と注文してみな。いいことが起きるよ」
「それってどういう…」
「さあね。自分たちで確認してみな」
次の瞬間強い風が吹き一瞬眼を瞑ってしまった。すぐに目を開けたが既にお婆さんはいなくなっていた。
辺りを見渡してもお婆さんの姿はない。走って去ったとは考えにくい。なにか魔法を使ったんだろう。それにお婆さんが消えてから先程までの暑さが嘘のように心地よい風がなびいてる。もしかしたら結界でもはられていたのかもしれない。
「ソラさん今のは…」
「俺もわからない。鑑定もおかしかったし」
鑑定のレベルが低い時は、鑑定出来ないことはあってもあんなふうに文字化けすることは1度もなかった。あんな事は初めてだ。
得体の知れないものを前に俺の体は震える。これが恐怖なのか武者震いってやつなのから俺さえもわからない。
「とりあえず今日は帰りますか?それともお婆さんの言っていた場所に行きますか?」
「場所だけ確認しとこう。今は必要ないよ」
その後、ネルと大通りの店を中心にナナバ亭を探したが見つけることが出来なかった。もしかしたら路地裏とかにあるかもしれない。けれどこの街もそこそこ広い。ただ闇雲に探すだけでは見つからないだろう。
「どうしようか……」
食堂で机に顔を伏せる俺とネル。あのお婆さんの言葉のせいで午後はお出かけを楽しめなかった。本当ならもう一度お店を見て回る予定だったのに。
「おう。帰ってきてたのか」
「2人ともお帰りでごじゃる」
「ライド、リークさん。ただいまです」
「どうしたんだ?なんか疲れてるな」
夕食を持って隣に座るライド昼間あった事を話すべきか。チラッとリークさんを見て考える。鑑定のことはあまり知られたくない。そこだけはぼやかしてお婆さんにあったこと、そして言われたことだけ伝えよう。
「へぇ。不思議な婆さんだな」
「ナナバ亭でごじゃるか…。それなら拙者わかるかも知れないでおじゃる」
「本当ですか!?」
「前に1度見たことがあるでごじゃるが……食事処ではなかった気がするんじゃが」
食事処じゃない?だから見つからなかったのかもしれない。俺もネルも食堂や喫茶店ばかりを中心に探していたから。
「ちょっと待つでごじゃる」
リークさんはポケットから紙とペンを取り出すと地図を書いてくれた。
「そこがナナバ亭でこじゃる。ソラ殿達が探している店とは分からないが、行ってみるといいでごじゃるよ」
「ありがとうございます」
リークさんから紙を貰うと無くさないようポケットにしまっておく。今度の休みにでも場所を確認しに行くか。まだ知りたいこともないしな。
先にご飯を食べ終えていた俺とネルは2人を残して食堂からでる。食堂の入口でネルと別れると1人で部屋へと向かう。
「ソラくん。どこか行ってたんすね」
「クリスさん。はい。ちょっとネルと街に行ってました」
「誰かと会わなかったすか?」
「え?誰って…誰にも会わなかったですよ」
なんでそんなこと聞くんだ。それにまたいつもの冷たい目だ。口は笑っているのに目だけは全然笑っていない。何故かお婆さんの事は言わない方がいい気がしてクリスさんには黙っておく。
「そうっすか。変なこと聞いて悪かったっす。じゃあ十分に休むっすよ」
ぱっといつもの笑顔に戻ったクリスさんはそのまま食堂の方に歩いていった。そういえばクリスさんってどんな人なんだろうか。どこか掴みどころない人だよな。明日リークさんに聞いてみよ。
そんなことを思いながら部屋へと向かうのであった。
現在毎日更新していますが、9月からは仕事が忙しくなり更新頻度が落ちます。2日に1ページにするか、週1に3ページ程で更新しようかと考えております。
読んでくださる皆様にはお待たせする事になると思いますがご了承ください。




