悲劇の手紙
あの偽りの罪を被らされてから数日、私は部屋に閉じこもるようになった。
現実からの逃げと思うかもしれないが、今ここに生きているだけで精一杯なのである。
しかし、少しずつ心の傷は回復している。なぜならあれから全くエリスからの連絡がないのだ。ライアンとしては悲しいことだろう。
そういえば、あのパーティーから帰ってきた後からライアンとは全く話していない。日頃そんなに話すことはなかったが、廊下ですれ違ってもちらりともこっちを見らず、まるで町ですれ違った人のようだった。
少しここで私の活動生活の報告をしよう。さっきはあれから外に出ていないといっていたが何もしていないわけではない。部屋でこもって勉強をしていたのだ。もう少しで夏休みが終わるので、少しくらい知識はあった方がいい。
しかも、わたしが国外通報されてからまともな生活につくためには何か特技がないといけない。普通ならほかの国の軍隊に入ったりして生活ができるのだが。何しろ私は女だしかも防御魔法しか使えない、戦争があっても盾になってみんなに気づかれず一人で死んでいくに違いない。
そんなことにならないように私は日々励んでいた。
ライアンはというと毎日のように、稽古をしている。相手は大体、馬鹿四人のうちのだれかで、毎回違う声が聞こえてくる。
そんな平凡な生活を送っている私にまた災難が降りかかってきた。
「お嬢様、手紙が来ております」
「誰から?」
「エリスお嬢様からです」
最悪だ、まだ数日しかたっていないのにまた私をいじめたいのか。私はとりあえずメイドから手紙を受け取り、中身を開いた。
~ アルティアさんへ ~
こんにちは、アルティア元気にしてる。
前のは随分と効いたようね、まさか私もあそこでライアンがあんなとこを言ってくるなんて思わなかったわ。
そんなことはどうでもいいとして、一つ連絡があるわ。
今日の午後あなたの家に遊びに行きます。
別にいじめるために行くわけじゃないわ、今日はあなたに話したいことがありますの。
じゃあ、今日の午後会いましょう。
エリス=クラネット
はぁ、ついに来てしまった私の平凡な生活を乱す本当の悪女が。
しかも今日の午後ってもう少しじゃない。もう少し早めに連絡くらいできないのあの女は。
でもそんなことは言っている暇がなく、私はすぐにエリスからの攻撃を受ける準備をした。部屋の外では誰かが走っているような音が聞こえる。おそらくライアンだろう、女が来るだけのことで何浮かれているんだ。まったく呆れるな。
私はひとまず心を落ち着かせてから身支度をするためにクローゼットから服を出そうとした瞬間、外で馬車の止まる音が聞こえた。
まさかと思ったが、その次には家のベルがチャランと鳴った。
ついに来たか、思ったより早かったな。
確かあの手紙では午後に来るといっていたが、まだ朝早くからではないか。
今更そんなことを言っても仕方なく私は部屋を出て素直に玄関へと向かった。
私が出迎える必要もなくすでにエリスはライアンの完璧なエスコートにより椅子に座ってお茶を飲んでいた。
「まぁ、アルティアさんおはようございます。朝早くから来て申し訳ありません。午後に参ると言っていたのですが、我慢できなくなりつい来ちゃいました。」
「いいえ、お気になさらずのんびりしていってください。私は忙しいのでお先に部屋に帰らせていただきます」
よしこのまま部屋の中に入ればこっちのものだ、鍵をかけて静かにしておけば寝ているとしか思われないだろう。
だがその作戦は、エリスによってすぐにさえぎられた。
「あら?手紙に書いてなかったかしら。私は今日あなたに用事があるの」
エリスの一言にライアンは戸惑っていた。
「エリス何言ってるの、またひどいことされるよ」
「大丈夫よライアン、私の方から頼んでいるのに何かしてくるはずがないわ。お願いアルティアさん少しだけ時間を頂戴?」
これ以上抵抗しても意味がなさそうだ。
「はい、わかりました」
「ありがとうございますアルティアさん。そういうことで、二人っきりになれるところに行きましょう。もちろんライアンはだめよ」
全く素直なものだ。あのライアンでもこの女に翻弄されている。
そういうと私はエリスを自分部屋に連れて行った。部屋に入るなりエリスは質素な感じねと言って馬鹿にしてきた。
二回戦目に突入だ。




