第13話 据え膳を止められちゃう、馬に蹴られますよ
150皿の餃子をつまみ食いし、プロテインバー5kgを平らげ、大生4杯を胃に流し込む。20分でこれだ、なんて考えてたら店長が閉店だよーと。
「早くないですか?まだ22時ですし」
「早いんだけどねー、出せる物全部出しちゃったからさぁ!石川くんのおかげで過去最高の売上だよ!」
この店の歴史は知らないけど過去最高だそうだ。僕の接客スキルは衰えてないらしい、よかった。この調子でバリバリバイトして姉ちゃんたちとここへ飲みに来るんだ、餃子美味しかったしビールもすっごく旨い。プロテインバーもなんか美味しかったな、珍しい。しっとりさせたものは初めて食べた。あれ?待った、プロテインバーを『5kg』?そんなにたんぱく質必要だったっけ…?それによく一気に5kgも胃に入ったな…?餃子も美味しかったけど…美味しいと入るものなのかな?なんだか最近肉体成長が著しい気もするけど、変化と言えばこの世界に来てやたらと暇潰しに筋トレばっかりしてたからかな?あとは程良い敵襲と…姉ちゃん達とのアレか…鎮まりたまえ我がメルヘンボックス…!!僕は節操なくないはずだ…!説得力はないけど僕は弁えられる男子なんだ…!
「ふっ、慣れてるわねぇ石川君」
そう言いながら悪い顔した石島さんが紙束をもってバックヤードに入ってきた。
「すいません関係者以外立ち入り禁止なんですよ」
「客居ないからいいじゃないのよ、店長からも許可は取ってるから安心しなさい」
男絡みだからかな?監視なのか飲み半分なのか…それとも、そういえばその紙束は何だろう?
「あの、それ、なんです?」
「石川君に関するレポートよ。まあこれは後で話すわ、今は女性寮なんじゃないの?」
そう、ある意味ではここからが勝負所なんだ。僕は単に女性寮ってどういう感じなんだろうなあ?って疑問に思っていただけだった。それを教えてくれるというのなら話が早いし渡りに船。まずは制服を着替えるところからなんだけど、あいにく男性更衣室と言うものはこの店に存在しない。そりゃそうだよね、男性が働いているって前に『男性が外にいる』事が驚愕事件だから。事件なんだってさ、僕が立ってるだけで。物騒な話だよ、酔ったお客さんが自己主張通り越して暴力に訴えかけるなんてことはどこの世界でもそうなんだなあと思いながら「はいお客様落ち着いて、大丈夫ですよ、僕を見れば理解るでしょう?僕はここに居ますし、逃げも隠れもしません、必要があれば呼び出しにも応じます。だからそんなことで喧嘩なんてしないでくださいね?僕はここに居ますから」ニッゴリとした笑顔…くそう、さわやかスマイルをいつかマスターしてやるんだから。今はこれが精一杯だけど、お客さんたちは大盛り上がりだったし良かった良かった。まあニッゴリ笑顔のまま着替えようと思ったんだけど、店長も着替えようとしてるので慌てて視線を逸らそうと試みたけどダメでした。店長も店長で僕を食べようと狙ってらっしゃる…ダメです店長、いいじゃないのアナタはワタシのえ、も、の♡なんて迫られた日にはぼくはくるえるけだものになってしまうああどうしよう。
「こらー新人ーとっとと着替えるー!」
あれ?そんなことなかった?
「すいません即着替えます」
慌てて着替えてる一部始終目がずっと僕しか見てなかったのでアリなのかもしれない。店長は着替える事すら忘れてるんだもん。
「店長は着替えないんですか?」
「へ?あ、ああうん今着替えるよー速攻だよぉー!」
顔を真っ赤にしながら脱いでいく、待ってください下着まで着替えるんですか?というかそれはもう全裸です店長…!一切の無駄動作なく一切の躊躇なく店長があられもない姿へ。格闘技経験あるなこの店長、なんでもありの死闘を数度経験しているはずだ。猪突猛進タイプって結構手強いんだよな、冷静に分析してる場合ではないよ!?これ据え膳だよ!もしかしてハニートラップ!?罠のメリット?ん?
「店長、その…何と言いますか…」
「あんたたち私がいる事忘れてないかねえ?」
いつの間にか更衣室にいた石島さんェ…いいとこだったのに…まあチャンスがあるとわかったので、これから
「これから時間をかけてじっくりって顔してるわね」
鋭いな石島さん、歴戦のツワモノ感があるよ…
「違うわよ、そこの発情雌猫に言ってるのよ」
「い、いいじゃないですか!据え膳喰わぬは女の恥ですよ!!」
「…らしいけど?石川君はいいのかしら?でもいいの?石川君、お高いわよ?」
お高くとまってるつもり全くないんですけど…お高いってのはもしや身長の事なのかな?今のところ僕より背が高い女性見かけてないから、何の話なのかわからない…




