第11話 居酒屋デビュー
「いらっしゃいませー!」
僕の大きな声が響き渡る。念願の居酒屋バイト初日、なんだけど…、うーん…女性しかいないのは当然なんだけど、うまく言えないなあ、まあ考えてもどうせ答えは出ないからバイト初日を楽しむことにしよう。恵比寿病院を出る際に電話で美恵さんを嫁に迎える相談をカズ姉ちゃんと唯姉ちゃんに相談したんだ。まあ電話口で美恵さんに代われだ今そっちに行くから待ってだ色々言われたんだけど、もうすでに僕は男性保管省が待っていてくれた車の中でそっちに向かってる事を言ったんだ。とっても安心した様子で「「早く言ってよぉ…」」と綺麗にハモったのがちょっとおかしかった。
新居は江東区のとあるマンションの、一室じゃなくて一棟。なんならタワーマンションだ。それを丸ごと僕らの為にどーんと差し出されたんだ。なんでも一室よりも警備しやすいからだそうで。姉ちゃん達の危険性を考えたら当然だよね。僕は今のところ危機を感じていないから何とも言えないところなんだけど。周りから見たら危ない目には遭ったのかもしれないけど、実際僕はそんなの酷いと朝昼深夜で被害に遭うからもう慣れっこなんだ。なので僕の護衛は必要ないんだけど、やはり男性保管省としてはどうしても保管しておきたいんだろう、石島さんが頑なに却下し続けて結局僕が折れたんだ。まあ僕も条件として「居酒屋でバイトしたい」って言ったら今に至る。展開が早すぎるよ…まあ、引っ越しと言っても僕の荷物はバッグだけだからさ…カズ姉ちゃんと唯姉ちゃんは大慌てで荷物整理に行ってしまったし…警察の女子寮、行ってみたいなあ…石島さんもお客さんとしているからこっそり行ってみようか?
「すいませーん注文いいですかー!!」
「はーい今伺いまーす!」
絶妙なタイミングで話ができない、この居酒屋はなかなか商売繁盛してるんだなあ、流石は石島さん、いい店を知っている。
「お待たせしましたーご注文お伺いしますー!」
にこやかな営業スマイル(友人には不評)でお伺い。
「とりあえず生二つとー、お兄さんのスマイル1つ!」
「かしこまりましたー!生二つと僕のスマイルですねー!ありがとうございまーす!」
とニッゴリ笑顔…自分で言って悲しくなるな…まあ笑顔は絶やすわけにいかないし頑張ってさわやかスマイルを目指そう、うん。
それほど大きくない居酒屋で、煙草もOKなのがあるのかな?お客さんが途切れない途切れない。注文もバンバン入るし飲み食いぶりがちらっと見てて気持ちいい。僕も休みの日に姉ちゃん達と嫁さんで、あと石島さんも一緒に連れて飲みたいものだ。
「オーダー頂きましたぁ!」
「あいよぉー!」
元気よく答えてくれる店長、嶋沢清香しまざわきよかさん。若々しくもダイナミックな凹凸と美しい笑顔がとっても僕のメルヘンボックスによろしくない。邪な考えを抱かないように平常心平常心…こういう時って絶対僕を裏切ってくれるよね、僕の半身なのにさ…
「石川香くん、だね。君があの噂のねえ…」
「噂、ですか?」
「SNSでもちきりだよ?<スゲエデッッッッあれ男じゃね!!??>って画像と一緒に。ちょっと待ってね、面接中でゴメンね?ほら、これだよこれ」
と言って携帯の画面を見せられて、僕が写ってる。うん、別に撮っちゃいけない法律は…な、いよね?同行している石島さんを見たら呆れ果てた顔してたからきっとダメだけど出回りまくりでもう消せないんだろうなあ。別に僕は困らないから撮ってくれてもいいんだけど、でも姉ちゃん達が危ないか…警戒心を強めておこう。姉ちゃん達と美恵さんは絶対に守る。まあそんな決意はどうでもいいんだけど。
「迷惑を承知でお願いです、僕を働かせてはもらえないでしょうか?履歴書は書いても無駄だそうなのであえて持ってきていません。ただ、そこにいる男性保管省局長のお墨付きは出ますので」
これはある意味脅し文句になるのでは?あんまり言いたくないんだけど、こう言わないと話を聞いてくれないだろうからさ…どこの馬の骨かわかんない男がいきなり働かせろだなんてね。




