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五大皇族復活

 ヒルデガルドからシュヴァルーヴェを受け継いで欲しいと言われ、驚愕するラインハルト。


「ぼ、僕がですか!? それに領地と爵位って……二階級特進だけでも身に余りますよ……」


 一度に驚きの波が幾つも押し寄せて来てラインハルトの頭の中は真っ白になった。


「名を継ぐのは嫌か? そなた達一族の領地はアルムルーヴェ一族がずっと預かっていたのだ。いつの日か主に還したいとな。元々そなた達一族の領地だぞ。爵位も功績から鑑みれば伯爵か侯爵が妥当だが、いきなりそれだと貴族どもがうるさいからな」


 頬杖をつきながらヒルデガルドが喋る中、ラインハルトにフィリーネが助け船を出す。


「ラインハルト君。貴方の功績を考えれば階級や爵位に領地も妥当なものなのよ。シュヴァルーヴェの名はいずれ返しておくべきものなの。ローゼマリー陛下の遺言でもあるからね」

「爵位や領地を継ぐのは嫌じゃないです……でもシュヴァルーヴェの名を継いだら将来アルムルーヴェの名を継ぐ者が居なくなります……」


 ラインハルトがシュヴァルーヴェの名を継いだら、将来ヴィクトリアと一緒になった時にアルムルーヴェの名を継ぐ者が居なくなるのを危惧していた。


「ラインハルト……」


 ヴィクトリアが隣に座るラインハルトの手を握り、ラインハルトも握り返し互いの瞳を見つめ合う。

 それを見てヒルデガルドは笑みを浮かべて言った。


「それは将来、そなた達二人が話し合って決めれば良い。孫娘がシュヴァルーヴェの名を継いでも良いし、ラインハルトがアルムルーヴェの名を継いでも構わない。仮にシュヴァルーヴェの名を孫娘が受け継いでも、アルムルーヴェの一族には名を継ぐ者はたくさん居る。なにも本家だけでなく、その為に分家もあるしな。古来から本家の女がアルムルーヴェの名を継がずに嫁いだ者もいるから、然して珍しくない」


 ラインハルトとヴィクトリアが困らない様に逃げ道を用意したヒルデガルドだったが、ラインハルトも急には決められなかった。


「少し考えさせて下さい」

「わかった。シュヴァルーヴェの名を継ぐ場合は五大皇族復活、並びにシュヴァルーヴェ一族の名誉を回復するために一連の真実を話そうと私は考えている。既に三皇族と軍の三長官は了承している。だから孫娘がシュヴァルーヴェの名を継いでも皇帝になれる可能性はあるから心配するな」

「あはは……抜かりがないですね」


 流石は帝国の皇帝ヒルデガルド。

 ラインハルトが心配していた事に先手を打っていた。

 シュヴァルーヴェも皇族として復活すれば、仮にヴィクトリアが名を継いでも彼女の夢。

 皇帝になりたいという夢は守られる。


「ゆっくりと考えるがいい。二人の将来の事だからな。老婆心ながら言わせてもらうと、孫娘がシュヴァルーヴェの名を継いだ方がそなたには得だろう」

「得ですか?」

「アルムルーヴェの名を継ぐ者は数多居るが、シュヴァルーヴェはそなたしか居ない。孫娘が継げば、シュヴァルーヴェの世継ぎ問題は解消する。一世代で終わらせるのは惜しいからな」


 ヒルデガルドのその言葉に二人は顔を真っ赤にさせて、フィリーネは笑い出した。


「恥ずかしいですよ、御婆様!」

「別に恥ずかしがる事はない。身内びいきでは無いが、孫娘は魅力的な女だろ?」


 ヒルデガルドがラインハルトを見ながら言うと、小さく頷く


「はい……ヴィクトリア以外の女性には興味ありませんし、彼女に夢中ですから」

「バカ、御婆様の前で恥ずかしだろ……」


 二人のやり取りを見てヒルデガルドはフィリーネに通ずる物を感じた。


「孫娘はお前に似すぎているな、フィリーネ」

「そうですか? だとしたら曾孫の顔も近い内に見れますよ、御母様」


 したり顔でラインハルトとヴィクトリアを見ながら言うフィリーネ。

 その言葉に二人は頬を赤くしながら俯き、ヒルデガルドは立ち上がり去りながら二人に言う。


「ますますお前に似ているな、フィリーネ。出来れば士官学校を卒業後してから愛の証を私に見せて欲しいものだ」

「はい……御婆様」


 フィリーネとヒルデガルドに集中放火?を浴びて顔を真っ赤にするヴィクトリアにヒルデガルドは笑いかけて言う。


「二人の愛の証を見る日を楽しみに待っている。では、晩餐会でまた会おう」


 ヒルデガルドが部屋を退出するまで三人は頭を下げて見送った。

 ヒルデガルドが退出するとフィリーネも二人に別れを告げる。


「それじゃ私も行こうかしら。艦隊司令長官なんて退屈な仕事かと思ったけど意外と忙しいのよね。二人とも晩餐会でね」


 フィリーネも退出すると二人は互いを見て。


「僕達も戻ろうか。ミルトとリーベが待ってるしね」

「そうだな。待ちくたびれて悪戯をしかねないしな」


 その言葉に笑いながら二人は頷き、部屋に戻ることにした。



 二人がラインハルトの部屋に戻ると、早速ミルトとリーベが抱っこして欲しいとせがんで来た。

 ラインハルトはリーベ、ヴィクトリアはミルトを抱きあげる。


「ラインハルト、少しテラスで話さないか?」


 ヴィクトリアの提案にラインハルトは素直に頷く。


「そうだね。僕も話したい事があるよ」

「じゃ先に待っていろ。お茶を淹れるからな。ほら、ミルトを頼むぞ」

「え、ちょっと!?」


 ヴィクトリアは抱っこしているミルトをラインハルトの肩に乗せた。

 しかしミルトは暴れる事なく、ラインハルトの肩に乗っかり頬を舐める。


「二匹を頼むぞ」

「わかったよ。ちゃんとしないと恐いお母さんに怒られるからね」

「バカ」


 冗談を言うラインハルトに呆れつつ、ヴィクトリアはお茶の用意を始めた。

 テラス席に座り、ラインハルトは陽の光りを浴びながら日光浴を二匹と一緒に楽しんだ。

 するといい香りが漂って来た。


「ラインハルト。ミルトとリーベがお前に似て、しまりの無い顔で日光浴を楽しんでいるぞ」

「あはは。そりゃ僕の子供でもあるから仕方無いよ」

「黙れバカ、子供達に悪い影響を与えるな」

「酷いな~ヴィッキー」


 テラス席のテーブルにお茶と焼き菓子を置きながらヴィクトリアはミルトとリーベがラインハルトに似た表情で親心からか心配になってしまったのだ。

 俗に言う、しまりの無い顔で笑いながらお茶を飲むラインハルト。

 そして焼き菓子を細かく砕き、それをミルトとリーベに食べさせてあげるヴィクトリア。

 夏の陽射しが射し込むテラス。

 無言で時が流れるが、二人にとっては幸せな時間。

 そんな中、ヴィクトリアがラインハルトに核心を突く。


「それで、もうお前は決めているのだろう?」

「あはは……何の事やら」


 愛想笑いをして誤魔化すが、ヴィクトリアには通用しない。


「嘘をつくな。そのしまりの無い顔に書いてあるぞ」

「バレたか……」


 またも愛想笑いするラインハルトにヴィクトリアは体を乗り出して迫る。


「包み隠さず話した方が身のためだ。言っとくが私は嘘が嫌いだぞ、ラインハルト。それにどちらの名前を継いでも私はお前を支えるからな」


 若獅子の鋭い眼光に愛くるしい顔、その光景を目の前にラインハルトは答えを出す。


「僕は――」

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