シルヴィア
「う~ん。ちょっと前までは丁度良く手の平に収まる感じだったのに。これは私の手には余る感じかな~」
「やめ……シルヴィア……そんなに……強く」
ヴィクトリアの抵抗も虚しくシルヴィアは胸を触り続けている。
だがいつまでもやられっぱなしアルムルーヴェなどあり得ない。
すぐに獅子の本領を発揮した。
「やめんか、シルヴィア!」
シルヴィアの魔の手を振り解くが、シルヴィアは無邪気に笑いながらカリーナの後ろに隠れた。
「あはは~怒らない怒らない。ヴィクトリアは笑顔が一番可愛いんだよ?」
「勝手に人の胸を揉むな!」
ヴィクトリアに怒られてもシルヴィアは悪びれずにラインハルトに詰め寄る。
「君がヴィクトリアの想い人かぁ。私はシルヴィア、よろしくね。ヴィクトリアと同じアルムルーヴェだから」
「よ、よろしく」
シルヴィアは綺麗なお姉さんみたいな感じの少女で、やはりアルムルーヴェの血筋を引く人間。
ヴィクトリアと同じ威厳ある雰囲気を感じる。
「フフ、ラインハルト君って可愛い顔してるね。ヴィクトリアの胸が成長したのは君のお陰かな?」
「え!?」
ラインハルトの顔が真っ赤に染まるとシルヴィアはラインハルトの腕を掴みながら体を引き寄せる。
「赤くなって可愛い~」
「ラインハルトから離れろ、シルヴィア!」
ヴィクトリアが離そうと手を伸ばすが、あっさりとかわされてしまい踊りながらカリーナの横に立つ。
「妬かない妬かない。だって少し前までは可愛らしい胸だったのに急に成長したんだもの、お姉さんは驚きだよ。誰かに揉まれてなきゃこうはならないよ。まぁ、察しはつくけどねぇ……」
笑顔でしたり顔をするシルヴィアがラインハルトを見つめる。
思わず苦笑いするラインハルトの前にヴィクトリアが前に出た。
「これは成長期だ! 私だっていつまでも子供じゃないんだからな!」
「ま、確かにヴィクトリアも十六歳だから大人だね。あと二人に言いたい事は……」
シルヴィアが笑いながら二人の間に入る様に耳元で囁く
「ヴィクトリア……出来れば愛の時はもうちょっと声を抑えてくれると助かるかな~って。私も隣の部屋に居たからあれだけど、廊下でずっと待機して居たカリーナや侍女達も困っちゃうからね……あはは」
その言葉を聞いた瞬間、ラインハルトとヴィクトリアの顔は真っ赤に染まる。
真っ赤に染まるヴィクトリアが何か言おうと口をパクパクするが言葉が出てこない。
すると二人に助け舟を出す様にカリーナがシルヴィアに対し咳払いをした。
「おはようございます、シルヴィア様。久方振りの王宮は如何ですか?」
「いや~快適に尽きるね。ライン要塞から……今はライン戦線か。急いでライン戦線から帰って来たからね。今日の晩餐会に出席したら、そのまま前線帰りなんだ。あと中尉に昇進したよ!」
「それはおめでとうございます、シルヴィア様。士官学校を今年卒業したばかりなのに早速の戦果を上げるとは……流石はアルムルーヴェの武人と言ったところですか」
カリーナに褒められて嬉しいのか、シルヴィアは笑顔で踊りながら二人の後ろに立つ。
「まぁね~。上官が負傷して後方送りになったから、代わりに鉄騎中隊を預かる事になったから責任重大だよ。連合軍の鉄騎は数だけは多いから。鉄騎単体の性能なら帝国軍の方が上なんだけどね」
「成る程、頬の銃傷はその時に?」
「うん。指揮を執っていたら敵の狙撃手に撃たれたんだ。ま、代わりに鉄騎の榴弾を食らわしてやったけどね」
頬の銃傷を触りながら喋るシルヴィアにラインハルトとヴィクトリアは苛酷な前線帰りの雰囲気を感じ取る。
「そうですか。ならばヴィクトリア様と一緒に湯浴みされては如何ですか? 王宮のお湯は傷に良く効きますから」
「そうさせてもらおうかな。久しぶりにヴィクトリアと一緒に湯浴みして色々と成長を確認したいからねぇ……」
したり顔の視線がヴィクトリアの胸を見つめ、思わずヴィクトリアは両手で胸を隠す。
「シルヴィア、ジロジロ見るな!」
「いいじゃん、減るもんじゃないしさ。ラインハルト君だったらいいの?」
「ラインハルトは想い人だから見てもいいんだ!」
「え~ケチ。男女差別はんた~い」
再びカリーナが咳払いするとシルヴィアはヴィクトリアの手を掴み、湯殿に向かった。
「あはは、撤退撤退! 行くよ、ヴィクトリア!」
「おい!? ラインハルトすまない、湯浴みをしたら朝食を作ってやるからな!」
ラインハルトは手を振って合図をり、二人の若獅子を見送った。
「シルヴィア様はアルムルーヴェの分家の御方になります。見ての通り、姫様の良き友人で悪意はありませんから悪しからず」
「大丈夫です。話し方で悪い人じゃないのは直ぐにわかりましたから。ヴィッキーも口では迷惑がっていましたけど、声が嬉しそうでした」
シルヴィアに拉致?られていくヴィクトリアを見るラインハルトの優しい瞳を見てカリーナは安堵した。
「御理解頂けて幸いです。我らが姫様が御選びになった殿方に間違いはなかったようですね。さ、ラインハルト様も御部屋で御待ち下さい。お湯とタオルを御持ちしますので」
カリーナの言葉に促される様にラインハルトは自室に戻った。
アルムルーヴェ王宮の湯殿は傷に良く効くと一族の中でも有名だった。
その有名な湯殿に二人の麗しい少女が和気あいあいと入浴を楽しんでいた。
「ねぇねぇ、ラインハルト君の何処が好きなの?」
長い黄金の長髪を頭の上で纏め上げタオルを巻くシルヴィア。
「別にいいであろう、何処が好きだなんて。お互いの気持ちが通じていればいいんだ」
シルヴィアと同じ様に黄金の髪を頭の上に纏め上げタオルを巻くヴィクトリア。
「うっわ~大人~。私も早く素敵な殿方に出会わないかな~」
ヴィクトリアが湯気に隠れるシルヴィアを見るが、明らかに自分よりもスタイルが良く胸が大きい。
思わず自分の胸を触りながら見比べてしまうくらいに。
そんな視線に気づいたのか、シルヴィアがヴィクトリア抱きついて来た。
「なになに、ヴィクトリアったら私の胸を見てどうしたの?」
「いや……以前、ラインハルトの実家に泊まりに行った時、荷物の中から、その……女性達が一糸纏わぬ姿の写真集が出てきたんだ。普通の殿方は胸が大きい女性が好きなのかなと……」
「いきなり重い質問だね。お姉さん、もうちょっと軽い質問かと思ったよ」
「す、すまない。今のは忘れてくれ……」
自分で言って恥ずかしくなったのか、ヴィクトリアは顔をお湯の中に半分沈めた。
「う~ん……殿方全員がそうじゃないと思うけど。ラインハルト君は何か言ってた?」
「いや……何も。ラインハルトは私以外の女性に興味ないし……凄く綺麗だと言ってくれる」
「うわ~お姉さん妬いちゃうよ。なにその男前発言、かっこ良すぎ。それに……」
いきなりシルヴィアはヴィクトリアに抱きついた。
「こんなに立派な胸があるなら普通の殿方は満足でしょうが! どんだけラインハルト君に揉まれてるのよ!」
「ちょっと!? やめろ、シルヴィア!」
シルヴィアのスキンシップから逃れたヴィクトリア。
まだ警戒してるのか、胸を手で覆いながら少し距離を取る。
「ごめんごめん。つい悪乗りし過ぎちゃった」
「まったく……」
シルヴィアがお湯に浸かりながら自身の片腕を伸ばす。
細く綺麗な白い雪肌には小さな傷がいくつもあり、その小さな傷の上をお湯がしたり落ちた。
そしてその腕をなぞる様に、もう片方の手の平で滑らせ言う。
「それに胸の大きい小さいなんて関係無い。大事なのは二人の気持ちが通じ合ってるか。そうでしょ? ヴィクトリア」
自分自身で言った言葉で返されてしまい、ヴィクトリアは笑いながら頷いた。
「そうだな。だがシルヴィア、決め台詞を裸で言われても響かないぞ」
「え~酷いな。ねぇ、もうラインハルト君とは一緒に湯浴みしたの?」
シルヴィアのスキンシップ話が再び始まり、ヴィクトリアはのぼせたのか分からないが、思わず頬を好調させ頷いた。
「まぁ……。ラインハルトも私も、湯浴みが好きだからな……」
「うわ~大人だねぇ、ヴィクトリア。でも共通の趣味があるのは想い人として良いと思うよ。二人の時間がそれだけ増えるしね」
「確かにな。たまには良い事を言うな、シルヴィア」
「ちょっと、たまにはは余計だよ~」
それから女性同士の会話を楽しんでいると、ヴィクトリアが急に湯船から上がった。
「ヴィクトリア?」
「すまない、シルヴィア。ラインハルトに朝食を作ってやる約束があるんだ。きっとお腹を空かして待っている」
「あ、あぁ~朝食ね。それはいち大事だ……」
シルヴィアに有無を言わさず、ヴィクトリアがバスローブを羽織り湯殿から出て行く。
そして一人残されたシルヴィアは湯に浸かりながら天井を見つめ。
「ヴィクトリアって意外と尽くす子か。ラインハルト君が羨ましい~。私も早く素敵な殿方に尽くした~い!」
愛情深いアルムルーヴェの血筋が騒ぐのか、一人寂しく広い湯船に足をバタつかせるシルヴィアであった。




