守る代償
湯殿に向かったヴィクトリアだったがラインハルトの事が気になってしまった。
やはり眠り足りなそうな顔をしていたから、自分が付いて居ない時に魘されていないかと心配になってしまう。
湯船に浸かりながらそんな事を考えていると案の定、ラインハルトの声が聞こえた。
また魘されていると頭を過った。
急いで湯船から上がり、体も拭かずバスローブを羽織って湯殿から出た。
「ラインハルト、大丈夫か!?」
ヴィクトリアがベットルームに入るとそこには二匹の猫とラインハルトが戯れた光景。
二匹の猫はラインハルトの黒髪と同じ様な黒色の猫と、ヴィクトリアと同じ髪色の猫。
ラインハルトが黒猫を抱っこしてると金色の猫が威嚇をしていた。
まるでその光景はラインハルトを取られまいとするヴィクトリア。
「あ、ヴィッキー。この猫達が遊びに来てくれ……て」
振り向いたラインハルトが顔を赤くしてヴィクトリアに言った。
「また見えちゃってるよ……ヴィッキー」
「え?」
ヴィクトリアがバスローブを見ると、羽織ったはいいが腰紐を結んでいない為に生まれたままの姿に近い状態でラインハルトの前に出て来てしまった。
「す、すまない! またやってしまった……」
ヴィクトリアが腰紐を結び直そうとすると、ラインハルトがバスローブを直してくれた。
「ヴィクトリアは綺麗だから男の僕としては嬉しいけど気をつけないとダメだよ。もし他の男がたまたま一緒に部屋に居て見られたら凄く嫌だ」
「うん、気をつける……またお前が魘されていると思って急いでしまったんだ」
自分の事を心配してくれていたという事にラインハルトも嬉しくなる。
「心配してくれてありがとう。僕なら大丈夫だよ。君が傍に付いていてくれたから心強かったし。でも、また魘されて迷惑かけるかも知れないけどね」
ラインハルトが離れ様とすると頬を赤らめたヴィクトリアがラインハルトのシャツの袖を摘みながら言う。
「そ、それなら心配するな……またお前が魘されそうになったら私の心音を聴かせて落ち着かせてやるから……」
「ヴィッキー……」
その言葉を聞いてラインハルトが近寄るとヴィクトリアは静かに瞳を閉じた。
ヴィクトリアが何を望んでいるのか分かっていた為に、ラインハルトも瞳を閉じて互いの唇が触れ合う瞬間。
足元から「ニャー」と鳴き声を発せられ、二人の愛の時間が邪魔される。
二人が足元を見ると、さっきの二匹が二人の足に頭を擦り当てていた。
「こら。リーベにミルト、良い雰囲気なんだから邪魔するな」
ヴィクトリアに怒られても意に介さず、二匹の猫は互いの体をグルーミングし始めた。
「あはは。仲が良い猫達だね。名前は?」
「黒猫がオスのミルト。金色の猫がメスのリーベだ」
「ミルトにリーベ。宜しくね」
ラインハルトがしゃがみ込んでリーベの頭を撫でるとリーベは気持ち良さそうな顔をする。
しかしその手をミルトに引っ掻かれてしまう。
「大丈夫か、ラインハルト。ミルトとリーベは夫婦猫だからな。うっかり構うと相手に引っ掻かれてしまうぞ」
「それを先に言ってよ、ヴィッキー」
引っ掻かれた手を擦っていると傷口をリーベが舐めてくれている。
「ほぅ、リーベが気に入るなんて珍しいな。二匹とも気難しい猫だから、私の家族以外は触れないんだ。どちらか一方に触ると怒るからな」
リーベの相方を抱いているヴィクトリア。
ミルトはヴィクトリアに抱かれて気持ち良さそうな顔をする。
対するラインハルトもリーベを抱くと気持ち良さそうな表情を浮かべて喉を鳴らす。
ラインハルトとヴィクトリアは互いにその光景を見て思った。
ミルトとリーベは自分達にそっくりと。
二匹が抱かれている状態でお互いの猫に触ろうとすると威嚇されてしまう。
「僕達に似てるね、ミルトとリーベって」
「私も思った。そ、それに私達もいずれミルトとリーベと同じ関係になるしな!」
「そ、そうだよね!」
自分達で言った言葉の意味に気づき、今更ながら恥ずかしくなってしまう。
何とも言えない空気が流れていると、ミルトとリーベが抱っこを嫌がって降ろしてと鳴いた。
二匹の猫を解放するなり、ミルトとリーベはお互いの体を念入りにグルーミングし始めた。
「本当に仲が良いんだね」
「あぁ。まだ二匹が仔猫の頃からの付き合いだからな。最初の頃は中々ミルトが他の先住猫達と仲良く出来なくて困っていたんだ。リーベがミルトの遊び相手になってくれて助かったよ。リーベが他のオスにちょっかいを出されているとミルトが威嚇して追い返すんだ」
「ミルトは独占欲が強いんだね」
「どっかの誰かさんみたいだな」
ヴィクトリアの視線に気づき、ラインハルトが抗議した。
「それはお互い様でしょ!」
「お互い様なのは否定しない。私の一族は強欲の黄金獅子だからな。私はお前を独り占めしたいんだ」
もはや開き直りともとれる大胆発言にラインハルトは何も反論出来なかった。
「まぁ僕もヴィッキーを独り占めしたいからね。僕は君のものだから好きにしていいよ」
「うん。私もラインハルトのものだから……好きにして構わない……」
ヴィクトリアが恥じらいながら言う姿にラインハルトは両手を握りながら言う。
「ヴィッキー、今の言葉はグッと来たよ。思わず抱き締めたくなった」
「そ、そうか。別にいま抱き締めてもいいんだぞ」
両手を広げてると、ラインハルトの手がヴィクトリアの腰に回り二人の距離が一気に縮まると再びミルトとリーベが抱っこしてくれと鳴いて来た。
「やってくれるな……ミルトとリーベ……」
またも愛の時間を邪魔さてしまうラインハルトとヴィクトリア。
抱っこしてくれと鳴かれてしまい、二人は二匹の猫を抱っこしてあげた。
抱っこしながらリーベをあやすラインハルトを見ていると、ヴィクトリアはまるで自分の子供をあやす光景に見えてしまった。
「ラインハルト、リーベを我が子の様に構うのは嬉しいが、早く体を拭かないと夕食に間に合わなくなるぞ」
「そうだったね。じゃ手伝いをお願い出来る?」
「うん、シャツを脱いで座ってまっていろ。お湯を支度してくるから」




