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再会と父上

 謁見の間から二人が出るとアデリナが待っていた。

 アデリナは付いてきて下さいとだけ言い歩き出し、二人は付いて行くことに。


「アデリナ、帝国軍は負けそうなのか?」


 ヴィクトリアが聞いてきた言葉に、アデリナは振り返る事なく答えた。


「負けはしません。ですが連合軍は我軍と同じ鉄騎を投入してきました。性能は此方が上ですが、いかせん数は向こうが上です。ですが敵に意表を突かれましたが、戦線は辛うじて膠着状態に持ち込みました。シュヴァルツ候補生の父君のお陰で敵の作戦展開を妨害出来たので……」

「そうか……すまなかった。我らが早く知らしていれば……」

「殿下は悪くありません。もともと連合軍はやる気でしたからね。こちらも察知していましたが、来年度の侵攻予測をしてました。それに敵は連邦だけではなく、連合軍で攻めてくるとは思ってもいませんでした」


 アデリナ達高級将官達は御前会議で来年度の侵攻と予測していたが、完全に敵に意表を突かれた。

 八一号作戦の意味、それは八月十五日に開戦するという意味だった。

 まさか鉄騎を使い、連合軍で侵攻するとは思わなかったのだ。

 ヒルデガルドが危惧していた事が現実になり、帝国に襲いかかってきた。

 帝国の軍事力は連邦相手なら勝るが、連合軍となると四方から敵に攻められてしまう。

 戦略、戦術的に極めて不利になる。

 アデリナに連れられて来るとアルムルーヴェの王宮にある一部屋に案内された。


「私はここまでになります。中で殿下に会いたい御方がお待ちですので。ではっ!」


 アデリナが敬礼し、二人も返礼する。

 ヴィクトリアが扉を開けると白を基調とした部屋の奥にベットが見えた。

 ベットにはヴィクトリアと同じ黄金の髪を持つ女性が居た。

 その光景にヴィクトリアは茫然としていると、女性が声をかけた。


「いつまでそこに突っ立ってるのよ、私の可愛い愛娘」


 その言葉にヴィクトリアは泣きながら叫んだ。


「は、ははうえ……母上!!」


 フィリーネだと分かるとヴィクトリアは駆け寄って抱き付いた。


「あらあら甘えん坊は相変わらずね、可愛い愛娘」

「母上、御無事でしたのですね!」


 フィリーネの胸にうずくまりながら、フィリーネの頬に自分の頬を擦り寄せて愛情表現をする。


「まったく……ラインハルト君が見てるわよ」

「大丈夫ですよ……後でラインハルトにもやってあげるので」

「あらあら。良かったわね、ラインハルト君。後でヴィクトリアがやってあげるみたいよ」


 フィリーネが笑いながら言い、ラインハルトを手招きした。


「ラインハルト君、可愛い愛娘を守ってくれてありがとう。そしてペンダントもね。貴方みたいな勇敢な人はそうそういないもの」

「いえ、僕もフィリーネさんが無事で安心しました。ヴィッキーがずっと心配してましたから、今にも泣きそうな――痛っ!?」


 ラインハルトは不意に頬に痛みが走った。

 よく見るとヴィクトリアがつねっている。


「黙れバカ! 母上に余計な事を言うな!」


 頬をつねられたと思ったら、今度は足も踏まれてしまう。


「ごめんなさい! お願いだから許して、何でも言うこと聞くから! 痛たたた」

「うん、特別に許してやる。後で何でも言うことを聞いて貰うからな」

「ヴィッキーの仰せのままに……まったく、酷い王女殿下だな」


 つねられた頬を擦りながら言うラインハルトをヴィクトリアが睨みつける。


「何か言ったか? 私の想い人」

「べ、別に何も!! いや~可愛いヴィクトリアにつねられたり、足を踏まれて僕は幸せだなって」


 自分でマゾヒズム的な発言をしてしまい恥ずかしくなるが、獅子に食われるよりはマシと思い恥を掻き捨てた。

 その言葉にフィリーネが食い付いて来た。


「ヴィクトリア。ラインハルト君にそんな事してるの?」

「し、してませんよ! むしろ愛し合ってる時のラインハルトの方が……」


 その言葉にフィリーネがラインハルトの方を見る。


「僕だってしてませんよ! ヴィッキーの嫌がる事は絶対に! 酷いよ、ヴィッキー! ヴィッキーがそういうのに興味あるから、やって欲しいって……あ……」

「……バカ」


 自分達で言って自爆したと気付いた時には既に遅かった。

 それを聞いてフィリーネは笑いながら顔が真っ赤になった二人に言う。


「別に二人が良いなら構わないわよ。色々と二人の仲が大変良いみたいで安心したわ。そうよね、()()()()()()()()()()


 フィリーネが二人の後ろにいる人物の名を呼んだ。

 二人が後ろを振り向くと、そこには灰色の髪に軍衣纏った男性がいた。

 しかも双翼の翼を着けているから最低でも帝国軍大将か上級大将、もしくは最高地位の元帥だ。


「父上!」


 ヴィクトリアが抱き付くと男性は彼女の頭を優しく撫でた。


「久しいな、我が愛娘。見ない間に綺麗になったな。愛しのフィリーネの若い頃にそっくりだ」

「本当ですか!? 父上」

「本当だ。フィリーネとそっくりで将来は間違いなく美人になる。父が嘘をついた事があるか?」


 フィリーネと同じく美人になると言われ余程嬉しかったのか、今までに見たことないくらい顔が緩みきっている。


「我が愛娘よ、いつになったら自身の想い人を紹介してくれるんだ?」


 ジークフリートがラインハルトに視線を移すとラインハルトが急いで頭を下げた。


「す、すみません! 僕は……私の名はラインハルト・シュヴァルツと言います。ヴィクトリア王女殿下とは士官学校で一緒に学んでおり……ヴィクトリアは僕の想い人です」


 ラインハルトに続いてヴィクトリアも頭を下げた。


「紹介が遅れてすみません、父上。ラインハルトは私の想い人で……凄く大切な人です」


 二人が拙く紹介するとフィリーネは微かに笑いながらジークフリートを見た。


「愛しのフィリーネ。君が言っていた通り生真面目な男だな」

「でしょ。いかにもヴィクトリア好みの男の子よね。特に優しさの中に強さを秘めてる所や、若い頃のあなたにそっくりよ」

「それは光栄だ。なら二人の愛の証を見るのが楽しみだ。さぞかし可愛い愛の証が見られるからな」

「そうね、軍を退役なり予備役になっても孫の面倒を見るっていう重大な任務を楽しまないとね、ジーク」


 フィリーネとジークが未来の楽しみを話し合っているとラインハルトとヴィクトリアは顔が真っ赤になってしまう。

 顔が真っ赤になったラインハルトにフィリーネがジークフリートを紹介してくれた。


「ラインハルト君、その人はジークフリート・フォン・アルムルーヴェ。帝国軍予備役上級大将で可愛い愛娘の父親よ、一応ね」

「一応は酷いな。私も現役復帰の通達が来て、この度帝国軍元帥に昇進だ。もちろん君にも艦隊司令長官着任と元帥昇進の通達が来ているぞ」


 ジークがフィリーネに手紙を渡すと、彼女は手紙を開くなり溜息をつく。


「やれやれ、人事部もやけで昇進させてくるとわね。予備役召集までして……」


 手紙を見るフィリーネの険しい表情にヴィクトリアが訊いてきた。


「母上、帝国軍は厳しいのですか? それにシュネーヴィの皆は?」


 その言葉にフィリーネは真剣な表情でヴィクトリアに話した。


「戦況は厳しいけど大丈夫よ。メモリースティックのお陰で難とか敵の出鼻を挫いたからね。シュネーヴィは撃沈され……ペトラにテレーゼ、ルシアン以外の艦橋要員は戦死。敵戦艦と相討ちに持ち込んだけど、敵の主砲が艦橋に直撃してね……」

「そうでしたか……」


 帝国軍最新鋭戦艦シュネーヴィをもってしても相討ちに持ち込むのが精一杯だった。

 そしてシュネーヴィ撃沈は帝国軍を震撼させ、方針転換を迫られた。

 護衛艦無き大型艦は飽和攻撃に弱く、大型艦は小回りが利かない為に如何に高性能な武器を持っていても敵になぶり殺しにされるという事実に。


「私を含めて生き残った三人は五体満足で無事よ。ルシアンなんて病院食が不味いと言って、病院から脱走しようとしてるくらいだもの」

「ルシアン大尉ならあり得ますね、母上」


 三人が無事で、ルシアン大尉の話を聞いたら不思議と笑いが込み上げて来た。

 するとジークがラインハルトの肩を掴む。


「さて、暗い雰囲気から明るくなって何よりだな。すまないがラインハルトを借りるぞ、我が愛娘」

「父上?」


 心配そうにヴィクトリアはラインハルトを見るとジークが笑い出した。


「心配するな。ちょっと彼に渡したい物があるから私の書斎に行くだけだ。お前はフィリーネに似すぎていささか独占欲が強過ぎるな。それだと彼も息苦しいのではないか?」

「そうなのか、ラインハルト?」


 ジークとヴィクトリアがラインハルトを見る。


「息苦しくなんかないよ。ヴィッキー以外の女性は興味無いし、僕は君のものだからね。可愛いヴィクトリア」

「バカ……恥ずかしいだろ」


 ヴィクトリアは頬を紅潮させ、ラインハルトの袖を摘まむ。


「わ、私もラインハルト以外の男性は興味無いからな。それに……私はお前のものだ」

「うん、大好きだよ。愛しのヴィクトリア」

「私もだ……愛しのラインハルト」


 二人が熱くて甘い愛の語らいをしてるとフィリーネが咳払いして、二人は慌てて離れた。


「何だったら二人の為に部屋を用意するから好きなだけ愛し合って構わないわよ? ねぇ、ジーク」

「そうだな、なんだか私達の若い頃を思い出す。愛の証を見る日も意外と近いかもな」

「そうね、フフ」


 フィリーネが笑いながらヴィクトリアを見ていると、彼女は顔を真っ赤にして言った。


「父上に母上、やめて下さい!」

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