消えゆく星たち
真夜中の海でシュネーヴィと連邦艦隊との戦闘が始まる。
シュネーヴィの方から戦端の幕が切って落とされた。
「噴進弾、一番から二十番全弾発射ッ! 続けて電磁砲の射界に入り次第、砲術長の任意で発射しなさい!」
フィリーネの指示の元、真夜中の海に無数の噴進弾が打ち上げられた。
真っ直ぐと噴進弾は設定された目標に飛んで行く。
そして電磁砲の射界に連邦艦隊を捉える。
「電磁砲発射ッ!」
アルミンの叫びと同時にシュネーヴィの電磁砲が放たれる。
発射された衝撃の波紋で巨大な白波が立つ。
電磁砲の砲弾は闇夜の海に一筋の光の線を描きながらカプール級駆逐艦一隻とバーミガム級巡洋艦一隻を撃ち抜いた。
電磁砲の砲弾を受けた瞬間、カプール級駆逐艦は艦橋部分が吹き飛び爆散する。
バーミガム級巡洋艦は艦首部分に命中し、前部砲塔の弾薬庫からの火災を起こしながら艦首が沈んでいく。
「艦尾電磁砲発射ッ!」
アルミンが続けて発射トリガーを引き、艦尾電磁砲が発射される。
再び衝撃の波紋で巨大な白波が立つ。
電磁砲の砲弾は見事にカプール級駆逐艦二隻に命中して爆散した。
「四隻撃沈……残り十一隻!」
フィリーネが残存艦艇を読み上げていると、続けて噴進弾が連邦艦隊に襲い掛かる。
連邦艦隊は回避行動を取りながら迎撃用の噴進弾を打ち上げ、迫り来る噴進弾は近接防御火器が曳光弾を放ちながら闇夜の海に火線を描く。
「一番艦から三番艦、八番艦から十番艦は撃沈! 六番艦と七番艦、十三から十五番艦は噴進弾が命中せず! 連邦艦隊から噴進弾が十二時から十五時、十八時から二十時の方角から来ますッ!」
ペトラからの報告にフィリーネは直ぐに指示を出す。
「取り舵一杯、最大戦速! 近接防御火器で迎撃! 電磁砲次弾装填急いで! 主砲一番、右舷の七番艦を指向、主砲二番は左舷に回り込む六番艦を指向して撃ち込みなさい! 三番主砲は十五番艦に発射ッ!」
シュネーヴィの五十一センチ砲が雄叫びを上げ、近接防御火器が連邦艦隊の噴進弾を撃ち落としていく。
だが向こうもシュネーヴィも互いに最大戦速で動いている為か主砲が外れてしまう。
シュネーヴィの至近で爆発する噴進弾。
そしてシュネーヴィの右舷船体に三本の水柱が立ち上る。
連邦艦隊は噴進弾の中に数本の噴進魚雷を混ぜていたのだ。
爆発の衝撃でソナーが雑音を拾ってしまい回避出来なかった。
「ミハエル副長、被害報告! 」
「右舷に魚雷が三本被雷、右舷各所にて浸水! 右舷に傾斜してます、艦長!」
「左舷に注水して水平を保って! 応急修理班は浸水を止めるのよ!」
その瞬間、シュネーヴィの左舷艦尾付近に水柱が二本上がり、トライトン級戦艦の砲弾が三番主砲付近に命中する。
「機関出力が低下、並びに機関室にて浸水が発生! 三番主砲付近にて火災発生!」
「くッ! なぶり殺しにする気ね連邦艦隊……噴進弾、後方にいるトライトン級戦艦に目標設定の後に発射! 電磁砲は射界に入り次第、駆逐艦と巡洋艦を沈めなさい!」
シュネーヴィから放たれる噴進弾の流星にトライトン級戦艦は近接防御火器で迎撃するが何発かは命中し火災が発生した。
またその際に両舷にいたバーミガム級巡洋艦二隻がトライトン級戦艦を守ろうと前方に出た所を艦尾電磁砲が撃ち抜いた。
「残り三隻!」
連邦艦隊の残りはカプール級駆逐艦二隻とトライトン級戦艦一隻。
電磁砲の射界に捉えたいが、カプール級駆逐艦もそれを知ってか、シュネーヴィの両舷に入り込み噴進弾を撃ち上げながら魚雷も撃ち込む。
「面舵一杯、囮魚雷発射! 近接防御火器で迎撃!」
シュネーヴィは機関出力が低下しながら出せる最大の速度で逃げた。
しかしシュネーヴィの近接防御火器でも防ぎきれない程の噴進弾が襲い掛かる。
艦首から艦尾の両舷にかけて命中し、魚雷も命中する。
そんな中、シュネーヴィの艦首電磁砲が駆逐艦の一隻に砲弾を撃ち込み爆散、主砲一番と二番で夾叉させて、残る駆逐艦を沈めた。
「艦長! 三番主砲の弾薬庫に火災延焼、近接防御火器の半数以上が機能不全、主砲一番二番、システム故障し動きません! 更に右舷からの浸水が酷く、既に艦の傾斜が制御出来ず沈降しています!」
「まだよ! まだ一隻いるわ! 刺し違えてでもあの一隻を沈めるのよ!」
ミハエル副長の悲痛な報告にフィリーネは叫んだ。
そしてトライトン級戦艦も火災を沈めると真っ直ぐシュネーヴィに向かって来る。
フィリーネ達はシュネーヴィに早く動いてと祈った。
シュネーヴィも持てる力を振り絞り、旋回しながら艦首の電磁砲に捉えようとする。
トライトン級戦艦もシュネーヴィが向かって来ると気付くと全砲門でシュネーヴィの息の根を止めようと撃ち込む。
砲弾がシュネーヴィの主砲や近接防御火器を破壊していく。
至る所で火災が発生し、黒煙の尾を引きながら少しづつだが確実に捉えようとする。
そして遂にシュネーヴィは射界に捉えた。
「電磁砲発射ッ!!」
シュネーヴィから電磁砲が放たれた瞬間、トライトン級戦艦の主砲も放たれた。
シュネーヴィの電磁砲はトライトン級戦艦の艦橋を吹き飛ばし爆散する。
そしてシュネーヴィの艦橋に主砲弾が命中し、フィリーネ達は白い光の中に包み込まれた。
八月十三日。二十一時四十五分、シュネーヴィ爆沈。
連絡挺が岸に辿り着き浜辺に降りた瞬間、ヴィクトリアは誰かに呼ばれた気がして振り向いた。
彼女の視線の先には闇夜の海に輝く爆発が二つあった。
「母上……母上!!」
「ヴィッキー、ダメだよ!」
「離せラインハルト! 母上が……母上が!!」
必死に爆発があった方に行こうとするヴィクトリアをラインハルトは必死で押さえた。
「離せバカ! 母上を一人で行かせられるか!」
「このバカ! まだ分からないのか!」
ラインハルトがヴィクトリアを引き倒して爆発があった方を指差す。
「いい加減分かれ、このバカ! あそこに君が行った所で何が出来る!? 殺されるだけだ! あそこに行ってただ殺されるのと、帝国に敵襲来を報せる方……どっちがフィリーネさんが喜ぶ? それでも行きたいなら行けばいいさ! 僕はフィリーネさんから与えられた任務を一人でもやるよ」
ラインハルトの言葉にヴィクトリアは今にも泣きそうな表情をする。
「フィリーネさんなら大丈夫だよ。案外、あの爆発は連邦艦隊かも知れないし、君のお母さんは簡単には殺られないよ」
「ラインハルト……私は……」
言葉を詰まらせるヴィクトリアをラインハルトは起き上がらせて強く抱き締めた。
「大丈夫だから信じよう。君のお母さんは強い女性だからきっと大丈夫だよ。それに泣いちゃダメだから……皇帝になりたいなら泣いちゃダメだ」
「う、うるさい! お前に言われなくても分かってる……母上が誰よりも強いのは私が一番知っている!」
「そうだったね、ごめん……」
ヴィクトリアを落ち着かせる為、頭を優しく撫でラインハルトは訊いた。
「ヴィッキー、一緒にフィリーネさんから与えられた任務をやり遂げようよ?」
「……わかった」
ヴィクトリアも頷き、二人は連絡挺から非常用のリュックを背負い、一路西を目指した。
目指すは四季国の通信基地だ。




