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反攻開始 と襲撃者の正体

 二人が隠れた山小屋に忍び寄る影。

 先程まで降り続いた雨はいつの間にか止み、木々から滴り落ちる滴の音以外は静かだ。

 山小屋の窓からは微かに光が漏れ、山小屋の中に人がいる事が分かる。

 それを確認すると影はゆっくりと山小屋に近づくと三方に別れて行く。

 一人が先行して山小屋の扉横に付いた。

 扉のノブに手を掛け鍵が開いている事を確認すると突入した。

 部屋の中に入るなり、右から左に撃ち続けて部屋中を蜂の巣にした。

 しかし、部屋の中には誰もいないと分かると、襲撃者の一人は無線で外にいる仲間に連絡する。


ネガティブ(発見出来ず)。山小屋の周りはどうだ?」

『……』

「おい、応答しろ!? チッ、山の中だと電波が悪いな……」


 襲撃者が山小屋から出てくると直ぐに自分の身体に赤い点が付いているのに気づいた。

 しかも赤い点は二つだ

 襲撃者の目の前にはヴィクトリアとラインハルトが銃を構えている。


「諦めて投降するのだな。お前の仲間は既に倒した。死にたくなければ武装解除をお薦めするぞ」


 ヴィクトリアが投降を呼び掛けるとラインハルトは更に詰め寄る。


「諦めて下さい。武器を捨てて投降を。二対一では勝ち目がありませんよ」


 すると襲撃者はあっさりと銃を捨てて両手を上げた。


「わかった、投降する。仲間はどうした?」


 襲撃者の質問にヴィクトリアが答えた。


「仲間? 悪いが二人なら罠に嵌まって一人は穴に落ちて串刺しだ。最後の一人は丸太で吹き飛ばした時に肋が折れて死んだ。残念だがな」

「そうか……それは残念だ!」

「ラインハルト! 危ない!!」


 襲撃者はつま先を蹴り上げて泥をラインハルトの顔にかけて視界を奪う。

 その隙に襲撃者はラインハルトを羽交締めにして腰のホルスターから拳銃を引抜き、ラインハルトの蟀谷に当てる。

 しかも片手には安全ピンを外した手榴弾を持っている。


「銃を捨てろ! ブリキ女!! 捨てなければガキを殺す!」

「その者を殺せば、お前を必ず殺す! 言っとくが、我らアルムルーヴェに二言は無いぞ!!」


 ヴィクトリアの焔の瞳が紅く輝く。

 ラインハルトはヴィクトリアが本気で怒っていると気づき、襲撃者に投降を促した。


「投降を勧めます。彼女は殺ると言ったら必ず殺りますよ!」

「うるさい! どうするブリキ女、俺を殺したら手榴弾が爆発してガキは死ぬ。分かったら武器を捨てろ! 淫蕩なアルムルーヴェの女が!」

「ヴィッキーはそんな女じゃない!!」


 ラインハルトが襲撃者の手に噛みつき揉み合いになる。

 襲撃者の手から手榴弾を奪い、そのまま手榴弾を口に突っ込む。

 その瞬間、襲撃者のが見た最後の光景はラインハルトの瑠璃色の瞳が蒼く輝いている姿だった。

 ラインハルトは襲撃者を山小屋の中に蹴り飛ばした瞬間、山小屋は爆発した。

 木片が空を舞いながら落下していく中、ヴィクトリアはラインハルトの元に走った。


「ラインハルト! 大丈夫か!?」

「大丈夫だよ、ヴィッキー……」


 ヴィクトリアはラインハルトの身体が怪我してないか急いで確認した。


「バカ! 下手したら死んでいたぞ!!」

「ごめん、ヴィッキー。アイツが君に酷い事を言うから頭にきて、つい……」


 その瞬間、ヴィクトリアはラインハルトを強く抱きしめた。


「黙れバカ……。私は本気で心配したんだぞ。お前が死ぬかもと思ったんだ……」

「心配かけてごめんね。自分の想い人が酷い事を言われたのに我慢らなかったんだ……」

「あんなの私は気にしていない。私はお前が無事ならいいんだ。だが、私の為にお前が怒ってくれた事は凄く嬉しく思うぞ……」


 ヴィクトリアを見ると今にも泣きそうな顔をしている。

 ラインハルトはヴィクトリアを落ち着かせる為に頭を優しく撫でてあげた。


「泣いたらダメだよ、ヴィッキー。皇帝を目指すなら泣いちゃダメだ」

「黙れバカ……そんな事は、お前に言われなくてもわかってる! ちょっと目にゴミが入っただけだ」


 二人は罠で殺された襲撃者を調べる。

 何か襲撃者の身元が分かる手がかりを探したのだ。

 襲撃者は完全装備だ。防弾ベストに、二人が持っている銃は帝国では見た事が無い。

 だが肩に着けたワッペンに見覚えがあった。


「ヴィッキー、これって……」

「ああ。見慣れない銃を持ってる筈だ」


 そのワッペンは赤と白のコントラストの下地に無数の金星が描かれている。

 それは帝国とラインハルトに因縁がある国。


「どうして連邦軍がヴィッキーを狙うの?」

「私だって知らない。奴らの恨みを買った覚えもないし、強いて言うなら御婆様……皇帝陛下が奴らに恨まれるくらいだ」

「じゃ皇帝を殺れないから、孫娘のヴィッキーを狙ったとか?」


 ラインハルトの推察にヴィクトリアは首を横に振る。


「第一にそうだとして奴らに得があるか? 孫娘を殺したところで連邦には得が無い」

「確かに……。ヴィッキーを狙っても連邦には何も得が無いね。仮に皇帝を狙っても、失敗したら戦争になるよ?」

「私が知るか。奴らの思考が少しでもまともなら普通は戦争なんてやらない。帝国と連邦では国力、軍事力共に帝国が有利だからな。連邦に自決願望があるなら話は別だが」


 ヴィクトリアの自決願望という言葉にラインハルトは苦笑いした。

 きっと連邦には自決願望なんてものは無いし、彼らが聞いたら『くたばれアルムルーヴェ!』と言うに違いない。

 二人は襲撃者の遺体から装備を取り外した。

 予備弾倉に拳銃と拳銃のホルスター。

 それと防弾ベストも着こんだ。


「ヴィッキー、防弾ベストを着ると体温調節が難しいから気を付けて。君は暑いのが苦手なんだから」

「わかってる。わたしを子供扱いするな!」


 防弾ベストのサイズ調整をラインハルトが手伝ってあげながらアドバイスするとヴィクトリアに噛み付かれてしまう。


「心配だから言ったんだよ。ヴィッキーを心配する権利ぐらいあるだろ?」

「ある。ムキになってすまない。言っとくが、私だってお前を心配する権利はあるんだからな。だからさっきみたいな無茶はしないと約束しろ」


 ヴィクトリアからの言葉にラインハルトは頷いた。


「約束する。でもヴィッキーの身に危険が迫った時、僕は降りかかる火の粉から君を守る為にどんな事でもするからね」


 ラインハルトが真剣な表情で『君を守る』と言われてしまい、ヴィクトリアは想いが高ぶってしまいそうになる。


「わかった。私もお前を守る為にどんな事でもすると約束する」

「嬉しいよ。こんな状況じゃなきゃ君を抱き締めているよ」

「なんだったら今抱き締めてもいいんだぞ? 私の想い人」


 ヴィクトリアは両手を広げ、ラインハルトを見るが、ラインハルトとヴィクトリアの愛の語らいを邪魔するかの如く、二人の間を無数の銃弾がすり抜ける。

 急いで二人は山小屋の残骸に隠れたが、銃弾の雨が降り注ぐ。


「ヴィッキー! 本当に彼らの恨みを買ってない!? 連邦は君にご執心みたいだよ!」

「黙れバカ! だが知らない間に恨みを買ったかもな」

「この攻撃からして、かなりの恨みを買ったと思うよ!」


 ラインハルトのいうとおり襲撃者からの攻撃は反撃の暇を与えない。

 しかも横隊一例で銃撃し、端から一人づつ距離を詰める間に他の人間が掩護射撃を繰り返す。

 次第に襲撃者達が山小屋に近付いていく。

 二人も何とか反撃するが多勢に無勢だ。

 その瞬間、襲撃者と二人の間に境界線を描く横に白い発煙筒が投げ込まれた。

 辺り一面、白い煙に包まれて互いの視界を奪う。

 そして白い煙の中から一人の人間が二人の前に現れ、呆然と立っている二人に言葉を掛けた。


「死にたくなければ一緒に来い!」


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