愛の証の意味
ラインハルトは湯殿から戻ると本当にヴィクトリアがまだ起きていたのには驚いた。
午前二時前で寝ていると思ったが、車の中で少し寝ていたからラインハルトと同じく眠れないのだろう。
「まだ起きてたんだ、眠くない?」
「大丈夫だ。お前こそ眠くないのか?」
「車の中で少し寝たけど流石に眠いかな……」
ラインハルトはあくびをしながらソファで寝ようと寝床を整えているとヴィクトリアが不思議そうな表情で聞いてくる。
「お前は何処で眠る気だ?」
「何処ってソファだけど? ベットはヴィッキーが寝るから使えないし」
「ベットで一緒に寝ればいいだろ。あんなに大きいのだから」
「でも……いいの? 僕が一緒に寝て……」
確かに二人くらい楽に寝れるベットだが、ラインハルトも男の為に気を使う。
いくら想い人同士でもまだ関係が浅いから抵抗があると思ったのだがヴィクトリアには無いみたいだ。
「別に構わないから先に行っていてくれ。私も直ぐに行くから」
「うん……わかったよ」
心なしかヴィクトリアの声に緊張感が感じ取れたが、ラインハルトは言葉のままにベットルーム向かう。
ベットの左右には間接照明があり優しい暖色の明かりが仄かに光る。
窓の外には運河に併設されている倉庫のアンバー照明が部屋に射し込み優しく包み込んでいた。
ラインハルトはベットに座るなり外の幻想的な運河の景色を楽しんでいると部屋の明かりが急に落ちた。
部屋はベット脇にある間接照明と運河の照明がラインハルトを照らす。
「ラインハルト……待たせたな」
「なんだ、君が明かりを落とし……た……」
ラインハルトが振り返るとそこにはヴィクトリアが立っているのだが、格好がさっきと違う為にラインハルトは放心情態になる。
それもそのはず。
目の前には白い下着姿のヴィクトリアがいる。
いつぞやの水着と同じ様に彼女の白い肌が運河の照明に照らされ眩しい。
しかもバスローブは彼女の足元に落ちていた。
「え? ……ヴィッキー!?」
「あまりジロジロ見るな。その……私だって恥ずかしいんだ……」
恥じらう様に手で胸元を隠しながらヴィクトリアは顔を赤く染める。
ラインハルトには何が何だか分からなかった。
いつもの十八番『ジロジロ見るな』の言葉にも恥じらいが感じ取れる。
放心情態のラインハルトにヴィクトリアが声を掛けた。
「早くお前も服を脱げ。流石に私だけこの姿だと恥ずかしいだろ」
「ちょっと待ってよ、ヴィッキー! どういう事なの!?」
我に帰ったラインハルトはヴィクトリアに理由を聞いた。
どうなったらこんな展開になるのか頭が混乱する。
「お前が言ったのだろ、私の愛の証が欲しいと。一通りの流れは母上から教わったが、私だって初めてなんだからな。その……優しくしてくれると嬉しい……」
恥じらいながら言うヴィクトリア。
あまりの可愛さに思わず抱き締めたくなるが、ラインハルトは言葉の意味を何処かで掛け間違えた可能性があると思い必死に思い出す。
ベアトリクスやアレクシア教官にレベッカ。
誰もが同じ様な答えを言っていたが、誰一人として本当の意味を言っていない気がしてきた。
意を決してラインハルトはヴィクトリアに問い掛ける。
「愛の証が欲しいって……お付き合いしたいって意味じゃないの?」
だがヴィクトリアからの言葉はラインハルトを驚愕させてしまう。
「ちょっと違う。父上から聞いた意味は、愛の証が欲しいは君の子供が欲しい……詰まりは私の子供が欲しいって意味だ……」
「えっ……僕はお付き合いしたい意味って教えられた……」
つまり愛の証が欲しいを男性が言う場合は、君に自分の子供を産んで貰いたいという意味になり。女性が言う場合は、貴方の子供を産みたいという意味だ。
そしてラインハルトは知らない間にヴィクトリアに自分の子供を産んで欲しいと言い、ヴィクトリアもそれを了承した形が今の状況になる。
ラインハルトはベアトリクス達に聞いた意味をヴィクトリアに言ったら、それも当たってるが帝国に古くから伝わる意味はヴィクトリアが言っていた方らしい。
そして、みるみる内にヴィクトリアは顔を真っ赤に染めて、ラインハルトにいつもの決め台詞と抱き合わせで平手打ちを食らわせた。
「バカッ!!」
平手打ちの威力は列車砲のグスタフドーラに負けないくらいの破壊力。ラインハルトの体はベットから床に転げ落ちた。
ヴィクトリアは床に置いてあるバスローブを着込むとラインハルトに背中を向ける様にベットに座る。
ラインハルトは急いで起き上がり、ヴィクトリアに謝った。
「本当にごめん。そういう意味とは知らなかったんだよ」
「もう知らん! お前は床にでも寝ていろ!」
ラインハルトは背中越しに必死に謝る。
「お願いだから許してよ。たとえ君の言った意味を知っていたとしても、何度でも僕は君の愛の証が欲しいとヴィッキーに言うよ」
「本当か? 私は嘘が嫌いだからな」
ヴィクトリアが僅かだがラインハルトの方に顔を向ける。
「本当だよ。ヴィクトリアの愛の証が欲しい」
その言葉にヴィクトリアは顔をラインハルトの方に向けてくれた。
その表情は穏やかで白い肌を紅潮させて可愛らしかった。
「ならば証明してみせろ。お前の本気をな」
正しく『傲慢にして強欲の黄金獅子』らしい言い方だ。
「わかった……本気をみせるよ」
「!?」
ラインハルトはヴィクトリアの体を強く抱き寄せて、そのまま口づけをした。
唇から互いの温もりが伝わる。
「僕の本気……信じてくれる?」
「うん……信じる。私もお前の愛の証が欲しい」
その言葉を言うと今度はヴィクトリアの方から口付けを交わす。
「ラインハルト……さっきも言ったが、私は初めてなんだ。だから……優しくしてくれると嬉しい」
恥ずかしそうに言うヴィクトリアを思わず抱き締め、ラインハルトは耳元でそっと囁く。
「君の嫌がる事はしないよ。それに僕だって初めてなんだから、お手柔らかに」
「黙れバカ……」
ヴィクトリアのバスローブをそっと脱がせて彼女をベットに横にならせる。
そして若獅子達は愛を確かめ合い、愛を深め合って朝を迎えた。
陽の光が海に反射して、眩しい光がラインハルトは目覚めさせる。
目の前には可愛らしい王女殿下こと、ヴィクトリアが横になっていた。
「ヴィッキー……起きてたの?」
「早く目が覚めたから、お前の寝顔を見て楽しんでいたんだ」
まだ眠そうな顔をするラインハルト。
目蓋を擦る仕草がヴィクトリアの母性本能を擽るのか、思わずラインハルトの頭を何度も優しく撫でてしまう。
「まだ寝ていて構わないぞ。時間になったら起こしてやる」
「ありがとう……ヴィッ……キー」
そのままラインハルトは再び眠りについた。
しかもヴィクトリアの手を握りながら体を丸め込ませる。
そのラインハルトの可愛さたるや、またもやヴィクトリアの母性本能を擽るのか、寝ているラインハルトの体をギュッと抱き締めてしまう。
たとえ本当の兄弟はいなくてもラインハルトは本質的には末っ子気質なのだろうと感じてしまい、守ってあげなくちゃいけないという想いで気持ちが高ぶってしまう。
そうしてる内に時間過ぎていき、今度はヴィクトリアが寝てしまいラインハルトが目覚めた。
体を起こすと寝ているヴィクトリアに注意されてしまう。
「急に体を起こすな。私もお前も一糸纏わぬ姿なんだぞ」
「ごめんごめん」
ヴィクトリアに言われてラインハルトは自分達の格好を思い出した。
あれから愛を確かめ合ったから、二人とも何も身につけていない、言わば生れたままの状態なのだ。
ヴィクトリアも体を起こしながら恥ずかしそうに言う。
「私の初めてがお前で良かった。ラインハルトが私の事を大事に想ってくれている事が伝わって、私はすごく嬉しかった」
「僕もだよ。愛し合ってた時の愛情表現は凄く情熱的でびっくりしたけどね」
「黙れバカ! 仕方無いだろ……お前を想う気持ちが高ぶったのだから。それにお前の愛情表現だって凄かったぞ」
手で胸もとを隠しながら言うヴィクトリア。
その言葉にラインハルトの表情はシュンとしてしまう。
「ヴィッキーを喜ばせようと頑張ったんだけど……」
「別に責めていないから気にするな。それにお前の愛情表現は……良かった……」
「なら良かった。僕もヴィッキーの愛情表現は良かったよ……」
互いに顔を真っ赤にしながらヴィクトリアは自分の耳を触る。
「ごめん。耳痛む?」
ラインハルトの心配そうな表情にヴィクトリアは首を横に振る。
「いや、お前が耳ばかり弄るから……」
「だって、ヴィッキーが耳を弄ったり頭を撫でてあげると凄く嬉しがって、もっとやって欲しいってせがむから」
「それ以上言うな! 恥ずかしいだろ……」
ラインハルトは、あの日ベアトリクスに言われた通りにしたら効果覿面だったのは言うまでもない。
ラインハルトはベットから立ち上り、床に脱ぎ落とされていた服を着ると再び湯殿に向かう。
そして振り向き様にヴィクトリアに聞いた。
「もし良かったら一緒に湯浴みする?」
その言葉にヴィクトリアは頬を赤らめながら頷き、二人は湯殿に向かった。




