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第三話「宇宙から来た超兵器」

「あたしがアラブの胡散臭い石油王から買ったこの魔術カード…今こそ使いどきじゃない!?」

「クミ!!ジェットパックはもう持たない!!落っこちるぞ!!」

「わかったわかった!!『FLOAT(反重力)』!!」

タケウチとクミの身体が宙に浮き上がる。

「魔術カード!本当だったんだ!!」

「よーし!この距離なら一か八かだ…。喰らえッ!!!!最大出力…ッ!!!『超越究極電磁キャノン』(エクリプス・キャノン)ッ!!!!」


時は数時間前。


コツン。

イテッ。

「タケウチちゃん、なんか空から降ってきたよ?」

すっかりクミと帰るのも日常となってしまった。そのせいで一人で帰るのは最近なんか物足りない。私はカッコいい一匹狼だったはずなんだけどな。

「で、何が落ちてきたの?見せて見せて。」

私の冷たい手のひらの中で、小さい知恵の輪のような何かを二人でのぞき込む。

その瞬間。

眩しい光と共に、二人の周りの空間に映像が広がっていった。

その内容は凄まじいものだった。

空から特大サイズのオレンジの球体が降ってきて、地球を粉々にする…。と言ったもの。

「これって…。」

クミがバインダーに挟んでいる大量のメモをパラパラとめくる。何枚か落っこちてるけど大丈夫なのだろうか。

「『宇宙人からの宣戦布告!』」と書かれたオカルト雑誌の切り抜きをこちらに見せてきた。だからバインダーからそのままちぎったら破れて…。あーもったいない。

「だから!これ!!」

クミがぷんぷん怒りながら資料を見せてくる。

「何々…?『UFOからの謎の落下物が花崎町付近で次々と発見されている…。』と。相変わらずオカルトが好きだな、クミ。」

怪物に呪いに透明人間に神様に。この目でいろいろ見たが宇宙人は見た事ないぞ。なんでもありだからと言って宇宙人なんているはずが…って。花崎町ってここじゃないか。

「まさか。謎の落下物ってのがこれだって言いたい訳?」

私は呆れた顔.gifを顔面で再生しながら、ぷりぷりと怒るクミを前にする。

「だから!これって宇宙人からの予告なんだよ!!地球をオレンジの球体で破壊するって!!」

ばっかばかしい。


「そういえば。うちに遊びに来ないか。たしかクミは来た事なかったはず。」

しかし。技術者たるもの好奇心を忘れてはいけない。

この落下物…仮称「ペア・リング」を分析してみようではないか。私はペア・リングを優しく握りしめ私のラボ…こと自室にクミを案内するのだった。


ラボ。私の自室であり、ゼロからこのサイボーグになる環境を作った叡智の結晶。今や特許料だけで生計が賄えるため、高校生にして一人暮らしをしている大天才の住処である。

「すご~い!!」

私の本革製の椅子に容赦なく座るクミ。まあ別にいいけど…スライムが座っているのはなんだか複雑な気分だが。

まあそれはともかくだ。私特製万能解析装置、「リソリューション」をペア・リングに使用してみようではないか。

この「リソリューション」はシャーペンの芯からゲーム機まで分子レベルで解析・チューンされた人工知能による用途推定までしてくれる我ながらヤバい発明品だ。


まさか。ありえない。

このペア・リングに用いられている金属の主成分は地球で採取が出来ないものであり、どこをどう解析しても映像が流れる機構ではない。しかし一部がSDカードと同じくケイ素でできている。その中に入っていたデータはアルファベット6文字分のごくわずかなもの…。「N」、「O」、「T」、「I」、「C」、「E」…。ふむふむ。「Notice (お知らせ)」…か。

チューンされた人工知能による用途推定は…推定不能。そりゃそうか。

少なくともこの装置が地球では取れないものであることは信じざるを得ないようだ。見せた映像が未来に起こりうることである保証はないが…。万が一のこともある。対策…こと「超越究極電磁キャノン(エクリプス・キャノン)」を早々に実装可能にしておこうじゃないか。

私がこの結論に至る頃には、クミはソファーですやすやと眠っていた。


チリリリリリ…。

ペア・リングから甲高い音が響く。

どうやら開発中に寝てしまったようだ…。幸い完成はしたみたいだがまだ実戦段階では…。

「ねえ!タケウチちゃん!!外!!」

太陽が二つ…?まさかな。

私はクミを抱えて急いで外に出る。増量ジェットパックを背負っているので二つ目の太陽…ことオレンジ色の球体に近づくことは容易い。

簡易版リソリューションで測定するが高エネルギー体であること以外測定不能。太陽ならば測定は簡単なはず。簡易版リソリューションをポイと投げ捨てて球体にもっと近づきに行くのだった。だんだん地上が見えなくなっていく。腕の増強装甲に霜がつく。

「クミ、ここから先は宇宙空間だ。酸素マスクをつけた方がいいかもしれない。」

スライム人間に酸素が必要なのかは知らないが、念には念を入れよという言葉がある。まあ少なくとも私はいらないが。生体組織がないので。

しかし、だ。いつも騒がしいクミが今日はいつにもまして静かだ。寒さに弱かったりするのか…?とクミの方をふと目にすると。


「…どうせ私なんか。」

急にどうした。

「どうせアンタもあたしのこと馬鹿だって思ってるんでしょ…。」

髪型や服装が変わっている。さっきまで制服だったはずなのにロックバンドのボーカルみたいな服装になっている。ずっと抱きかかえてるのだから服装が変わるなんてありえないはずなのに。

「仕方ない。あたしが手伝ってあげるよ。ほらッ!!狂宴の時間だァ~~~~~~!!!!!!!!」

キャラ変わりすぎだろ。

クミのポケットから出ているメモ帳をパラパラと開く。

「スライム人間は温度によって人格が変化する。基本的に気温が低い程刺々しく、高い程温厚になる。」

はぁ?なんじゃそりゃ。

とか思っている間にどこからともなくクミはギターを取り出し私の背中で器用に弾く。

上手いな…。いけないいけないそんなこと言っている場合じゃなかった。

「馬鹿は馬鹿なりに役に立たないとなァ~~~~~~!!!!!!!ヒャッハー!!!!」

未知の原理でジェットパックの出力パフォーマンスが上がっていく。いや、これがこの前オカルト研究会で調べていた「マナ」ってやつなのか…?いずれにせよこれならスペースデブリにならずに済みそうだ。


高エネルギー体に接近完了。サイズはそこまで大きいわけではないがドクドクと鼓動している。肥大化する可能性も考えるべきだ。

測定したところ熱は放っていないようである。クミは声を荒げすぎて疲れたのか眠ってしまった。

高エネルギー体にそっと触れる。その瞬間に私の仮想ニューロンにビジョンとメッセージが流れてきた。

「C」「R」「A」「D」「L」「E」。

「Cradle」ゆりかご。つまりこの中には何かが眠っていると仮定するのが妥当だ。

そして…。このビジョンを見た時に頭を抱えてしまった。

この「ゆりかご」は「地球を貫通して目的地へ向かおうとしている」。

つまりこの状況の最適解は…。地球を守るためには…。


「ゆりかご」の破壊。


時間がないんだ。ごめんねと心では思いながら、まずは腕部格納型チェーンソーを取り出し切断を試みる。当然傷一つ付かない。

距離を取りレールガンとミサイルを発射。爆炎の中からはさっきと全く同じ様子の「ゆりかご」が地球に刻々と接近している。

このままだとまずい。地球が粉々になるのは目に見えている。

ペア・リングの「お知らせ」ってこういうことなのね。それにしても期間短すぎない!?と思うけど。

もたもたしている間にもう地上が見えてきている。ジェットパックの推進剤もそろそろ尽きるという絶望的な状態。ゆっくり落下するので精一杯だ。


「あ〜よく寝た…。って何あれ!!」

クミが起き始めた。

「起きたてほやほやで悪い!!ジェットパック本体も推進剤ももう無理そうだ!!なんとかしてくれ!!」

私はもうダメだと頭を抱えているとクミがあ!とカバンを漁り始めた。

「あたしがアラブの胡散臭い石油王から買ったこの魔術カード…今こそ使いどきじゃない!?」

どれだっけどれだっけと探している。どんぐりなんてカバンになんで入れてるんだ。

「クミ!!ジェットパックはもう持たない!!落っこちるぞ!!」

「わかったわかった!!『FLOAT(反重力)』!!」

クミがカードを掲げると朽ち果てるように消えて行った。

その瞬間。ふわっと二人の身体が宙に浮き上がる。まるで水中を泳ぐかのように、空中を進むことのできる感覚になる。

「魔術カード!本当だったんだ!!」

「よーし!この距離なら一か八かだ…。クミ!目つぶってな!!」

エネルギーチャージ完了。改造した左腕のメーターは緑色に輝いている。

排熱のため左腕のカバーをパージする。露出するカーボンのフレームがキラキラと輝く。

「喰らえッ!!!!最大出力…ッ!!!『超越究極電磁キャノン』(エクリプス・キャノン)ッ!!!!」


ゆりかごは粉々になり、2つのちいさな星が落っこちて行った。

ごめん、中の赤ちゃんたち。心の中で謝りながら、ひとまず地球が守られたことに安堵する。あ、そういえば。

「馬鹿だなんて思ってないよ。」

「何が?」

「なんでもない。」

きょとんとするクミの前で、片腕が吹き飛んだ私はそれでもカッコつけるのだった。


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