第十四話「オカルト研究会、解散!?」
「さすがにもう俺の節約術でもどうにもならないので活動費稼いできてください!」
あの事件から一ヶ月。オカルト研究会は今日も資金難だ。レプティリアンが頭を抱えている。
「わかった!今日もカフェ『狛犬』で頑張ってくるね!」
クミも張り切っている。私も頑張らないと。
あの後リーダーを失った怪異連合は解体。トキコは晴れて自由の身となった。
トキコ曰く、「私に私怨のある怪異もいるから気をつけなきゃ。」とのことだ。
そりゃあ都合がいい。怪異を調査するオカルト研究会に再び帰ってきてもらうことになった訳だ。
カランコロン。
カフェ「狛犬」の扉を開けると、トキコがホールで働いていた。
「よう、トキコ。」
「萌え♡萌え♡忍♡」
いつからここはコンセプトカフェになったんだ?店長、何を仕込んだ?
「いやぁ。可愛い忍者の子が働いてくれるって言うからせっかくだから色々してもらおうと思って。」
ニコニコ笑いながら弁明する店長に私とクミはすっかり呆れ果ててしまった。
「トキコも何とか言ってやりなよ。」
というかここは純喫茶じゃないのか。店のイメージは大事にした方がいい。
「楽しいから大丈夫!むしろ新しい自分になれたって感じで…。」
呆れた。コイツもノリノリだった。
そんなこんなで帰り道。私とクミとトキコの三人でバイトから帰るのにはすっかり慣れてしまった。私はいつから一匹狼ではなくなってしまったのだろうか。
次の日。
「よーし!今日はオカルト研究会百八十不思議!ケース27!『裏庭に咲くバロメッツ』!」
クミがいつにもまして元気よくメモを指差す。
バロメッツ。羊の入った実の成る植物と言われていて、肉はカニの味がするらしい。
冬なのになぜ植物系を調査するのか。秋にやるべきだろう。クミの無計画さは相変わらずだな。
「で?今回の調査はいつやるの?昼でもできそうだけど。」
トキコが口を挟む。その通りだ。わざわざ深夜の学校に忍び込まなくても昼に調査できるならそれでいいのではないか。
「それがね…?夜になると『バロメッツを狙うコカトリス』が寄ってくるって噂なの!」
クミ、何を言っているんだ。コカトリスは鶏。主食は穀物だろう。なぜ植物だか動物だか分かんないカニの味のする羊を食べるんだ。
「よくわかんないけど…。コカトリスも調査できるから一石二鳥ってことかな。鳥だけにね。」
トキコも納得が早い。オカルト研究会はこれで大丈夫なのか?
ーーーーー
俺は浅野。花崎高校の歴史教師だ。
職員室では「深夜に忍び込む生徒がいるらしい。」と噂で持ちきりになっている。
そんな悪い生徒には教師として厳格な態度で接さなければならない。見回りを強化して、しっかり叱るぞ。
ということで、いつもは外部の業者に任せていた見回りを今日は俺自身が見回ることにした。夜の学校は少し怖いが…。教師はヒーローだからな。都市伝説にも、不良にもビビってられない。
深夜。
残るは裏庭だけだ。校内の見回りは何事もなく終わったのだが…。
ザッ、ザッ、ザッ。
3人の人影がこちらに歩いてきた。
あれは…。竹内と新井と復学した福原…!?
「こら!ここで何をやっている!!」
「先生!危ない!!後ろ!!」
新井が叫ぶ通りに後ろを振り向くと、巨大な鶏、いや。尻尾が蛇のため「コカトリス」、か。とにかく。バケモノが咆哮を上げていた。
ーーーーー
時は戻り。深夜。
いつものエアロジャンプと高跳びの術で校門をやすやすと跳び越える。
深夜の学校はこれで何度目だろうか。もはや数え切れないほど通い詰めている気がする。今日は巨大な敵を想定するため通常ボディである。
そんな中、トキコの目はギラッとしている。まさに任務モード。
「コカトリスの対策はどうする?」
「尻尾が蛇になっていて、頭があるから死角がない。だから前と後ろから同時に叩きのめす。行けるか?」
私は戦術をトキコに話す。もちろん、と返すトキコと私はこれまで相対してきた相手とは思えないくらい息ぴったりだった。
裏庭。鶏小屋があり、植物がいっぱい咲いている。そして、これまでの怪異ファイルは2階の廊下ばかりだったから新鮮だ。
鶏小屋の鶏は、夜中でもコケコケと元気に鳴いている。あれ、鶏が一羽多いような…。見間違いか?
その時は一羽多い鶏の尻尾が蛇になっていることに気づかなかった。
「ないな〜。」
バロメッツを探すクミ。こんな簡単に咲いているはずが…。
ん?何か羊のような鳴き声がする。近寄ってみると、バロメッツが咲いている。まさか本当に咲いているとは。
「冬が旬…なのかな?」
トキコは呑気なことを言っている。
「こら!ここで何をやっている!!」
ゲーッ。あれは歴史教師の浅野。一番面倒くさいのに見つかってしまった。
そんなことはどうでもいい。一旦それは置いておいてバロメッツがここに咲いているということは…。
「先生!危ない!後ろ!!」
コケェェェェェェェ!!!!!
クミが指差す先にはコカトリスが羽根を広げ威嚇していた。
「クミ、浅野先生を連れて隠れてろ。ここは私とトキコで何とかする。」
「しかし教師はヒーロー。お前たちを見捨てるわけには…!」
そんな啖呵を切る浅野先生。このコカトリスを見て立ち向かおうとする胆力は評価したいが、脚がプルプルしている。
「大丈夫です。私たちは戦闘経験があるので。」
「先生!ここはタケウチちゃんとトキコちゃんに任せて隠れましょ!隠れててもできることもあります!!」
浅野先生は微妙な表情を浮かべ、クミとともに物陰に隠れるのだった。
「あとバロメッツの採取を手伝ってください!これが目的なので!」
浅野先生は渋々クミと共にバロメッツを袋に入れていく。
「行くぞトキコ。作戦は分かってるな。」
私はトキコに目くばせし、ひとまず鶏の頭から距離を取りマニガトリングを発射する。
「蛇は好きじゃないけどッ…!」
トキコは分身の術で分身しながら蛇の方の頭を撹乱していく。
脳みそは繋がってないらしく、蛇の方は右に、鳥の方は左に避けようとして千切れそうになっている。
「タケウチ!こっちは蛇の頭を落とした!トドメは譲るよ!」
トキコの担当、蛇頭の方は決着がついたみたいだ。
こっちも頑張らないと、とアツアツになった盟神太刀で鳥の部位ごとに分割。巨大な肉塊がゴロゴロと転がっていった。
家庭科室。
せっかくのコカトリスとバロメッツの肉。トキコ発案でバーベキューをすることになった。
「本当にカニの味するねこれ…。」
「ところでなんでコカトリスはバロメッツを狙ってたんだろ?」
「鶏は穀物食、蛇は肉食のはずだよな?」
巨大な焼き鳥とバロメッツのお肉をつつきながら、私たちはずっと思ってた疑問を口にしていた。
そうすると浅野先生が口を挟む。
「三人は詳しくないみたいだが、コカトリスの主食は草だ。ヨーロッパの伝承に、毒耐性のある草を主食にすると書いてある。つまり今回のバロメッツは『毒耐性のある草』だったんだろう。まさか本当に存在するとは思わなかったが…。」
「で、だ。竹内、新井、福原。君たちは非公認のオカルト研究会だったよな。同じオカルト研究会の山田も連れて明日職員室に来なさい。あと今日はもう帰るように。」
浅野先生は神妙な顔つきで誰よりも焼き鳥を食べ、職員室に戻っていくのだった。
次の日。
「まさか…解散じゃないよね…。」
クミが心配そうな顔をしてこちらを見る。不安すぎだ。
「誰よりも焼き鳥食べてたし大丈夫じゃない?」
楽観視するトキコ。それもそれでどうなんだ。
「またなんかやったんですかアンタら…。」
レプティリアンは事情を知らないから一番可哀想である。
私の態度としては、解散なら解散で受け入れ一人で怪異退治を続ける。そうでないならまあこれからもよろしく、といったスタンスだ。
ガチャリ。
職員室のドアを開ける。
「おう!来てくれたか!オカルト研究会の皆!たった今!!オカルト研究会が公認になったぞ!!今日からお前たちは『オカルト部』だ!!そして顧問は俺だ!!」
ノリノリの浅野先生が笑顔でこちらを向いて話しかけてくる。
「そうと決まったら早速部室に行かなきゃな!俺の伝説研究の本でも置くかな!!俺こういうのが好きで歴史教師になったんだよ!!」
浅野先生はとても楽しそうである。
私たちは拍子抜けしてしまった。
「と、とりあえず…コーヒーでも飲みます?」
部室に戻ったレプティリアンが私のタンブラー、クミのピンクのマグカップ、トキコの紫のマグカップ、レプティリアンの緑のマグカップ、そして新たに追加された青い浅野先生のマグカップにコーヒーを注ぐ。
「「「「『オカルト部』結成記念として!乾杯!」」」」
みんなでコーヒーを掲げながら、新たな始まりを祝うのだった。




