第十三話「帰ってきてよトキコちゃん」
まずい。まずいぞ。後ろを見ると耳なし芳一とそのファンクラブであろう怪異たち。
前を見ると真っ白な大蛇。前門の虎、後門の狼とはこのことだ。
「今は私が『長』です!平家の霊ども。私に従いなさい。」
真っ白な大蛇が号令を挙げると武士たちがカシャカシャと集っていく。
と、ふと気づくと右腕の盟神太刀が高温を放っている。
ここは…。
「クミ!夜伽…いや、トキコを頼んだ!」
ここは私が全部蹴散らしてハッピーエンドにしてやる。私の物語は私が決めてやるんだ。
「させませんよッ!」
白蛇はクミを追いかけて行ってしまう。私は平家の霊の相手をするので精一杯だった。
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はあ。はあ。はあ。
あたしは夜伽ことトキコちゃんを抱えながら走っていた。
「あの時を思い出しますねェ!!」
白蛇がシュルシュルと廊下を這う。あたしは立ち止まって。いつものタケウチちゃんやあの時のトキコちゃんみたいに立ち向かうことにした。
「あら?お二方足を止めてどうしたんです?降参でもしたくなりましたか…?」
「あたしね、本当はあの時死にたかったんだ。後を追いたかったの。」
「ではお望み通り…。」
白蛇は舌を出したりひっこめたりしている。
「でもね。」
「でも今はタケウチちゃんがいる。オカルト研究会のみんながいる。」
「だからさ。トキコちゃん。今は身体が辛いだろうけど、今だけ。勇気を貸して…!魔術カード…!『FLAME(情熱)』!!」
カードを掲げる。朽ち果てるように消えていくと共に体に力が漲ってくる。
「これであたしも戦えるね。トキコちゃん。見てて。」
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平家の霊を相手にするのはあまりにも簡単だった。
そういえば霊になっている時点で朝敵である。盟神太刀の「正しさ」はもう限界突破していたのであろう。ブレードも真っ赤であり、むしろ盟神太刀の方から動いている気がするレベルである。
しかし数が多い。耳なし芳一が琵琶を弾くたびに数が増えているような気がする。
マニガトリングで芳一を狙い打とうともガトリングのブレで狙いが定まらない。
まあ塩も練りこんでいるので平家の霊たちは粉々になっていく。完全な無意味というわけではないのだ。
しかしこれでは消耗戦になってしまう。これを打開しなければ…。
ん?耳なし芳一って確か…。
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魔術カード『FLAME(情熱)』。火事場のバカ力を出すことのできるカード。
炎のように燃え上がる情熱を肉体のエネルギーに変える。感情により出力が上がり、反動は来ない親切設計。
そんなカードをこの状態のクミが使えばどうなるか。
「あたしは…!絶対に守って見せる…!!」
巨大化するあたしの腕。スライム人間は身体のサイズも自由自在なのである。もはや白い大蛇の太さなどゆうゆうと掴めるほどに強化されていた。
「こけおどしなど聞きませんよォ!?」
白い大蛇はあたしを舐めている。
ガシリ。メリメリ。
あたしの怒りと守りたい気持ちを一身に込めて握りつぶす。
気づいた時にはもう白い大蛇は元のサイズに戻り、ペチャンコになって動かなくなっていた。
白い大蛇がペチャンコになったのと同じくらいにトキコちゃんが目を覚ました。
「私は…。取り返しのつかないことをしてしまった気がする…。」
夜伽と呼ばれた忍者の面影はもはやなかった。
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耳なし芳一ってのは全身にお経を書いて透明化する話だったはず。では今カリアミムナノマシンアーマーの表面の模様をお経の文字にしたらどうなるのか?実験してみよう。
結果は面白い程うまくいった。
「どこにいった!」「わからない!」「見えない!」
混乱している平家の霊たちの中で、芳一だけがあたふたしている。
耳のない芳一のためにわざわざ顔面ディスプレイに中国語で「快点回去(早く帰れ)」と書いてやったらありえないほどビビって立ち退いていった。
「おーい、クミ。こっちはやったぞ。」
「あたしも。」
クミの声が聞こえる。
さて、あとはさめざめと泣いている夜伽…改めトキコだけだ。
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「私は人を傷つけた。人間を裏切った。怪異連合も裏切った。人の敵だし怪異の敵なんだ。居場所はもうないんだ。」
トキコちゃんは泣いている。
少なくともここにいる誰も敵だと思ってないけど…。とりあえずカフェ「狛犬」に行って店長さんに何とかしてもらおう。あたしやレプティリアンくんを普通の人の見た目になるように偽装してるのは店長だし。そして、一緒にまたパフェでも食べよう。
だからさ。
帰って来てよ、トキコちゃん。




