第十二話「夜伽 ―眼―」
あたしね、本当はあの時死にたかったんだ。でもあたしバカだからさ、飛び降りることしか頭になかったんだよね。あたしスライム人間だからさ、何回やってもダメで。
トキコちゃんがあの時あたしをかばって白い大蛇に飲み込まれちゃって、そのまま食べられちゃったと思ってた。だから、後を追いたかったの。
でもね。今はタケウチちゃんがいる。タケウチちゃんのおかげで、トキコちゃんの形見のオカルト研究会を守ろうと思えたんだよ。そのおかげでこうやってまた会えたしさ。
だからさ。トキコちゃん。今は身体が辛いだろうけど、今だけ。勇気を貸して…!魔術カード…!『FLAME(情熱)』!!
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数分前。
ベベンベンベン!!!!!!!
「今日は随分と派手じゃないか。」
睨む夜伽を前に私は軽口を叩く。
「絡繰人間ッ…!」
「夜伽殿。拙者助太刀致しましょうか。」
平家の亡霊が刀を抜こうとする。多対一だとだ〜いぶ困るが。
「いらんッ!!私が決着をつける。」
何か焦りのある彼女を前に、私は少し不安を感じ取ったのだった。
「あッ…あぁッ…。」
いざ行かんというところで急に夜伽が頭を抱えて苦悶の表情をする。
「…クミちゃん…。」
夜伽の口から信じられないワードが飛び出してきた。
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私はトキコ。高校生にして甲賀流忍者の末裔で、表向きには薬屋の娘。裏向きには忍術の継承役を行っていた。忍術の継承役という役割はかなり重要で、全ての忍術を極める必要があった。
そして私の親友、クミ。スライム人間で、ちょっぴり抜けてて好奇心旺盛な明るい子。
私たちは共通して、人とはちょっと違う立場に置かれていた。
忍者やスライム人間であることは隠さないといけないし、そのせいで気まずい空気になったこともあった。
そんな中。
「オカルト研究会!やろうよ!!ほら!会計もつれてきた!」
クミちゃんが同じクラスのレプティリアンと一緒にオカルト研究会をやろうってもんだから、私も入ることにした。やらないっていっても突っ走っちゃうクミちゃんをほっとけなかったから。
私たちは怪異退治をしながら、楽しい毎日を過ごしていった。
あの日までは。
「じゃーん!花崎高校百八十不思議!動くホルマリン漬け!」
ニコニコしながらクミは自作のメモを取り出す。
「なになに?面白そうじゃん!」
「理科室のホルマリン漬けの真っ白な蛇いるでしょ?あれ、夜になると大蛇になって廊下を走るんだって~~~~!!!!!」
クミの表情はいつだって楽しそうだ。大蛇くらいなら忍術で何とかできるか。と思っていた私が甘かった。
目の前には人一人丸のみなど余裕の巨大な蛇が立っていた。手裏剣もウロコで弾かれるんだから吹き矢なんて効くはずもない。忍刀やクナイを刺す隙も無い。下半身はもはやのまれかけている。
かくなるうえは…!
「トキコちゃん!トキコちゃん!!」
「クミ、私を置いて逃げて。」
私は真っ白な大蛇を相手に一人で立ち向かうことを選んだのだった。
そして。
私は知っている忍術を必死で使って大蛇に抗った。
「お主。人間にしては結構な腕前。その才能を摘むのは惜しい。」
急に大蛇が話し始めたのだ。
「怪異連合。怪異たちが集まり保護し合う連合だ。人間をやめて怪異とならないか。傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲。人間の悪性は見てきただろう?沢山見て見ぬふりをしてきたのは知っているぞ。そんな『地獄』より我ら怪異が支配する、完全で完璧な『長』が支配する世界に共に歩もうではないか。」
私は納得してしまった。この世界には沢山の人間による悪性がある。学校でいろんな社会問題を見てきた。クラスのカーストも見て見ぬふりをしてきた。私たちは事実上ハブられグループだった。だから。
「今日からお主は『夜伽』。通夜を共にする者という意味じゃ。」
トキコという名前を捨てて、「長」から貰った名前、夜伽となったのだ。
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時は今。怪異連合本部。
「白蛇。お主、何を企んでおる?何故夜伽を輸送や護衛の任務に就かせたがる?」
「ただの趣味ですよ『長』。美しいでしょう?『かつての親友を自分の手で抹殺するなんて』。」
「白蛇、見損なったぞ。我の意向を…ウッ!!!!」
白蛇の尾が「長」の腹に突き刺さる。
「今日から私が『長』ですよ。退きなさい、一般怪異。」
「さてさて、夜伽が親友を殺す瞬間を見に行きましょうかね。」
白蛇はシュルシュルと花崎高校2階の理科室へ向かうのだった。
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「夜伽!」
倒れる夜伽を抱える。あの時のパワーが嘘のように華奢な身体だ。
私は冷静に判断し、霊たちと対話可能か話してみる。
「あの。」
「わ!絡繰人間!!これ以上来るのであれば斬るぞ!!」
耳のない怪異がビビっているが…。
「戦うつもりはないんです。」
弁明をする私。どうやらわかってもらえそうだ。
「いいや、戦ってもらいますよ。夜伽という…。『裏切者の始末』の戦いをね。」
白い大蛇がギロリと三人を睨みながら、目の前を陣取っていた。




