最終話「サイボーグとスライム」
冬も開け、暖かくなってきた頃の話だ。
あたしは知っている。タケウチちゃんの誕生日があと1週間後であることを。そのためにオカルト部のみんなでサプライズパーティーをすることにした。場所はカフェ「狛犬」。
店長はニコニコ笑顔で快諾してくれた。
そうと決まれば早速準備しなきゃ。
ケーキを作って、飲み物を用意して、クラッカーを買って…。
あれ?トキコちゃん?なに険しい顔してるの?というかいつの間にか壁に矢文が刺さってるし…。えーっと何々?果たし状…?
「すまん、『私に私怨のある怪異』だ。決闘をしに行ってくる。なぁに。私は強いからな。すぐ戻ってくる。」
「待ってトキコちゃん!私も行く。」
あたしがカバンを持つと、浅野先生に引き止められた。
「これ、持っていきなさい。何かの役に立つかもしれない。」
渡されたのは「伝説図鑑」。
あたしははい分かりました!と元気に返事をし、トキコちゃんを追いかけるのだった。
「ハァ…俺たちは買い出し担当…ですか。」
レプティリアンくんは浅野先生の前で困ったポーズをしていた。
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怪異連合の残党からは果たし状の矢文がよく届く。おかげで私の家の壁は穴だらけだ。許さん。この前なんか残された漬物の幽霊だった。意味がわからない。私がお前に何をしたと言うんだ。
本人曰く、「貴様が『残された白米の霊』を祓ったせいで漬物の立場は散々だ」とのことだがそれは構成員の「夜伽」として怪異連合に入らない敵対勢力の排除という任務に従っただけであり、クレームなら「長」に言ってくれ。
今回の果たし状は…。「ねじりこ」からだ。
どんな怪異だったか覚えていないが、相方のねじりおを始末されたことに憤っているらしい。
仕方ない。クミちゃんやレプティリアンくんがいる時に来られても困るから私から指定された時間に行くしかないんだ。
深夜。
「半人間。貴女のせいで私のターゲットが減ってしまったのだけれど?ねじりおがいなくて、男の子をねじ切れなくなっちゃったの。どう責任とってくれるのかしら。」
マネキンのような容姿のねじりこがこちらを睨んでいる。きっとそれだけではなく、大事なパートナーを失った怒りもあるのだろう。
「私はもう夜伽ではありません。ただの忍者ですが。」
できるだけ荒らげないように冷静に返す。
「まぁ、都合のいい。じゃあ殺せるわねッ!!!」
ねじりこが上半身を回転させながら迫ってきた。
ーーーーー
時は戻り。
「先生、タケウチさんの誕生日プレゼント何にします?」
「うーむ。サイボーグの身体だからな。何を渡せば喜ぶのだろうか…。」
レプティリアン、こと俺と浅野先生は2人でお店を巡っていた。
「このネックレスはどうだ!」
「高いし校則違反だし何よりジャラジャラしたものは好きじゃなさそうですよ。」
浅野先生はプレゼントを選ぶのも好きらしい。ワクワクしている大人って見てると憧れるんだよな〜と思いつつ、現実的な態度で嗜める。
「イヤホンジャックとかどうですか?」
「そもそも竹内はイヤホンなしでも音漏れなく音楽聴けそうだが…。」
「それもそうですね。」
浅野先生との会話もなかなか弾む。怖い先生だと思ってたけど、結構いい先生なのかもしれない。
「ひとまずケーキ買いに行きますか。」
「いや。手作りケーキというのはどうだろうか。山田、料理はできるか?俺はできないが。」
前言撤回。この大人はハチャメチャだ。
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トキコちゃんを見つけた時にはもう深夜になっていた。しかもマネキンと戦闘している。
えーっとえっと、あたしにできることは…!!古代の伝説から都市伝説まで完全網羅された「伝説図鑑」とあたしのメモをパラパラめくる。
うーん…あれは「ねじりことねじりお」!
夢の中に現れて、その夢を見た人を次の日ねじ切る怪異…のはずなんだけどねじりこ、つまり女の子が見た際に現れて、女の子の体をねじ切る方しかいない。ねじりおは隠れているのかな…。ともかく、あたしが援護するしかないね!!
上半身を高速回転させて手刀を繰り出すねじりこ。
トキコちゃんは苦戦していた。
トキコちゃんの主武装は手裏剣、クナイ、忍刀。近接武器だらけで近づけない相手には弱いんだ。
どうしよう…。このままじゃトキコちゃんが負けちゃう…!!
「トキコちゃん!これ使って!」
あたしは行商人から買ったカードの最後の一枚を投げた。
『FLASH(高速化)』。多分だけど、スピードを強化できるやつだよね。
「ありがと!『FLASH(高速化)』ッ!!」
トキコちゃんがカードを掲げると、カードは朽ち果てるように消えて行き、その時にはもうねじりこは既にバラバラになっていた。
「半人間のあんたなんかにッ…!」
ねじりこは捨て台詞を吐き、砂になって消えた。
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『FLASH(高速化)』のカードを使った途端、相手の腕の回転がスローモーションに見える。反射神経にまで作用するとはびっくりだった。私はスピードタイプの戦術をよく使う。速度によって近づき、速度によって威力を増し、速度によって避ける。そういう戦法だ。
だがしかし。反射神経までは人間レベルである。決して相手の動きがスローに見えたり、意識外から飛んでくる銃弾に気づいてすぐ反応できるわけではない。
このカードは速度と共に反射神経を強化するらしい。クミちゃんもすごい切り札を隠し持ってたみたいだね。
まずはゆっくり回っているねじりこの腕の関節を切断。忍刀でスパリスパリと切っていく。相手はもはやこの時点では気づいてすらいないだろう。
そこから全身バラバラにしていく。
その後怪異には必ず存在する「核」をクナイで貫き制圧。ねじりおと「核」の位置が全く同じで助かった。
この間、クミちゃんのまばたき1回分の出来事だ。
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誕生日当日。
「え?レプティリアンくんと浅野先生でケーキ作ろうとしたの…?」
クミちゃんは困惑しながら慣れた手つきで生クリームを泡立てている。
トキコちゃんもテーブルクロスの敷き方がプロレベル。流石だ。
店長もニコニコしながら飾り付けを手伝っている。
浅野先生と選んだプレゼントを用意して、あとはタケウチさんを待つだけ。
この時間が一番緊張するな〜。
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タケウチちゃんはちゃんと来てくれるだろうか。どんな反応をするのだろうか。あたしは完成したケーキを前に、ワクワクしてそわそわしていた。
「こっちは準備できたよ~!」
トキコちゃんが呼ぶ。店長も心なしかいつもよりニコニコしているような気がする。
浅野先生とレプティリアンくんもなんか距離近くなったみたいだし。
デルタちゃんとトライちゃんも飾り付けられて嬉しそうだ。
あとはタケウチちゃんが来るのを待つだけ。
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オカルト。貴方は好きだろうか。
私は好きだ。私の世界を広げてくれたものだから。クミや店長に振り回され、トキコと戦い、浅野先生やレプティリアンに知識面で助けてもらう。
オカルト部のみんなのおかげでここまで来れたんだ。
深紅のポニーテールが風で揺れる中、私はフッと微笑み、呼び出されたカフェ「狛犬」の扉を開けるのだった。
「誕生日!おめでとー!!!」
ーENDー
最終話です。ありがとうございました。




