第十話「店長の休日」
わたしのやってるカフェ「狛犬」も今日は定休日。いつもニコニコしているわたしだけど、今日はニコニコしてられない事情があるわ。
そう。卵の特売日。いくら「どうとでも」できる私でも、勝ち取りたいものはあるの。
クミちゃんのオムライスの腕もあがったことだし、わたしも頑張らないと。そのためには卵をいっぱい買って、対抗できるようにオムライスを練習しなきゃね。能力でなんとかするのもいいけど…。それじゃ面白くないわ。ちゃんと「実力で」勝たなきゃ。
そんなこんなで卵を買いに行こうとしたんだけど、いっぱい困ったことがあったの。
特売に行かなきゃなのになんと銃を持った不審者さん。
「貴様ァ!理か!?」
不審者さんが銃をわたしに向ける。こわいわ…。
「え〜?ことわりってなんです?わたしは卵を買いに来ただけです~。」
「なんだ、紛らわしい!俺はこの世界の『理』を探しに来たんだ!とっとと失せろ!」
パチン。
不審者さんが後ろを向いた隙に、どこか遠いところに行ってもらったわ。
これもお仕事。わたしの箱庭はわたしが手入れしなきゃね。
お次は「ひろってください」って書かれた段ボールに入った宇宙人二人。ゆりかごに乗って別の星にいく予定が狂っちゃったみたい。名前はデルタとトライって言うのね。黄色と赤の鮮やかな身体と赤ちゃんみたいな体格が…かわいい!
行く当てもないみたいだし。うちに連れて帰ることにしたわ。これでおひとり様一パックまでの卵の特売もわたしとデルタちゃんとトライちゃんで三パックまでになるしちょうどいいわね。
とか言ってたら目の前にトラックが突っ込んできたから軌道を曲げたり、デルタちゃんがいつのまにか雑草を食べようとしてたから止めたり、トライちゃんが側溝に落ちそうになっちゃったからおてて繋いであげたりいろいろ事件があってやっとスーパーについたのよ。
そうしたら売り切れてた…。仕方ないと諦めかけてたんだけどね。
「これ、よかったら要ります?俺も卵の安さにつられたんですけど、しょんぼりしてる顔見てられなくて。」
正義感の強そうな男性が一パック譲ってくれたわ。教師はヒーローなので!ってカッコつけてたけど。ちょっとカッコよかったわよ。
卵も買えたし、クミちゃんに内緒でさっそくオムライスの特訓だ!
デルタちゃん、トライちゃん、味見お願いね?
一つ目。
真っ黒こげ。
これにはデルタちゃんも苦笑いしてたわ。もったいないからなんとかしたけど。
二つ目。
今度はちゃんとデルタちゃんの身体みたいなまっ黄色。焦げ目はちょっと残っちゃったけど、それも味よ。
お味は…。
「×!!!!!!!!」
トライちゃんがひっくり返っちゃった。そんなに美味しかったのかな?わたしもいただきま〜す。
しょっぱ。砂糖と塩を間違えちゃった。
三つ目…。はちょっとズルしちゃった。
プロ級のオムライスを現実を捻じ曲げて再現したんだけど…。
「×!!!!!!!!!」
トライちゃんは不正に気付いたみたい。これじゃダメ?ダメよね〜…。
そんなこんなでオムライス対決当日。
わたしのオムライスはキレイな薄焼き卵に真っ赤なチキンライス。もちろんケチャップで♡もね。砂糖と塩もちゃんと確認したわ!これで勝利間違いなし!
いざいざクミちゃんのオムライスを拝見…。
なにこのオムライス?なんか…。おしゃれじゃない?
「えっ?ドレスドオムライスですけど。」
らせん状にねじれた半熟卵とデミグラスソースのかかったオムライスを前に、わたしは膝から崩れ落ちた。




