↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マギ・エンジニアリング  作者: 竜屋
冒険者編
81/111

第74話 接触

【シーン①:食堂】

 街道を抜ける風が心地よい季節になっていた。

 芽吹きを終えた新緑が、街道に濃く映えていた。

 

 エルフの里の騒動から、一年半が経っていた。

 ヒュドラ撃退からしばらくはエルフの里に逗留したが、レオンたちは冒険者稼業に邁進していた。

 その結果、先日、全員がダイヤランクへ到達した。

 フルダイヤランクのパーティは、ラインバッハの冒険者ギルドでも多くはない。

 

 

 夕刻。

 レオンとヴェリスは、小さな街道町の食堂にいた。

 城塞都市での定期補充を終え、ラインバッハへ戻る途中だった。

 

 卓上には、少量の肉、煮込みスープ、欠片ほどのパン。

 成人男性一人分と考えても少量。酒もなかった。

 向かいにはヴェリスが座る。

 ガウィンとヘレナは別行動を取っている。

 

 特別なことは何もない。

 ただの帰路。

 そのはずだった。

 

 

 椅子が引かれた。

 視線を上げる。

 

 男が、断りもなく座った。

 

 黒い短髪の青年。

 年の頃は二十前後。

 笑みが、顔に貼りついたまま動かない。

 

「おぬしがレオンか」

 いきなりだった。

「最近、ご活躍と聞く」

 初対面のはずだ。

 しかし、距離が近い。

 

「マスター」

  耳元で、ほとんど音のない声が届く。

「認識阻害、常時展開」

 レオンの視線がわずかに鋭くなる。

 

 観察する。

 違和感。

 

 男の口角があがった。

 

「流石は、ギニアスの人形じゃ。よく見ておる」

 

 一瞬。呼吸が止まる。

 

 その情報は、外に出ていない。はずだ。

 知り得る者は限られる。

 

 思考より先に、警戒が立ち上がる。

 レオンはゆっくりと鼻で息をした。

 

 

「用件はなんだ」

 短く問う。

 

「はっ。怒らせたかの」

 男は肩をすくめる。

 悪びれた様子はない。

 

 男は、両手を卓について、ゆっくりと体を起こした。

「今日は挨拶だけじゃよ。

 いずれまた、な」

 

 問いに答えない。

 会話が成立していない。

 

「ガレリウスと申す」

 男は、また笑った。

 

 それだけを言って、男は背を向ける。

 振り返りもしない。

 そのまま、店の外へ消える。

 

 

 レオンは視線だけで見送った。

 追う理由はない。

 しかし、男が出て行った扉から、目が離せなかった。



【シーン②:】

 レオンは思考を整理する。

 

 あの男の顔、格好、動作を思い出し、頭の中の解析者に確認する。

≪照合ありません。情報が不足しています≫


 認識阻害魔法を使用していた。

 同様の魔法を、エルフのフェルシオーネが耳を隠すために使用していた。

 おそらく、あの容姿のすべてが偽装。

 

 動作、口調にも違和感があった。

 青年の容姿に、老人の口調と動作。

 容姿を若くするのであれば、口調も動作も偽装すべきだ。

 偽装に粗がある。

 

 何より発言が問題だ。

 ヴェリスの名前も、存在も知っていた。

 さらに、ギニアスとの関係も知っていた。

 

 ヴェリスの記録は冒険者ギルドにない。

 名も、声も、存在も、外に出ないようにしている。

 ヴェリスの詳細を知るのは、エルフの里の一部とガウィン、ヘレナのみ。

 漏洩はエルフの里からか。

 いや——ガウィンもヘレナも、この場を外している。接触の機会はある。

 

 

 問題点を整理する。

 情報漏洩の可能性と男の正体。

 

 判断材料が足りない。

 

 取るべき行動を定める。

 警戒レベルを上げ、メンバーと合流。

 安全性確保を最優先。

 

 最悪を想定する。

 

 

 定期補充を終えた帰路だった。

 その認識が、変わる。

 

 

 卓上に視線を戻す。

 食事は冷え切っていた。

最後までお読みいただきありがとうございます!

もし「面白い!」「続きが気になる」と思ってくださったら、

★や感想で応援していただけると、執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。