↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マギ・エンジニアリング  作者: 竜屋
冒険者編
78/111

第71話 ヒュドラ

【シーン①:遺跡の外】

 遺跡を出た瞬間、空気が変わった。

 

 静かすぎる。

 風はある。葉は揺れている。

 だが、音がない。

 鳥の声がしない。

 

 レオンは足を止めた。

 一瞬だけ周囲を見る。

 いったん保留する。

 

「……戻るか」

 短く言って歩き出す。

 フェルシオーネは何も言わず、後に続いた。

 

 

 頭の中では、別の計算が回っている。

 

 装置の修復は現実的ではない。

 構造は理解できても、再現ができない。

 

 停止は可能。

 漏洩は止まらない。

 取るべき選択肢は一つ。

 

――放出。

 

 残存魔力をすべて吐き出させる。

 それを受ける先は、ヴェリス。

 レオンは視線を横に向けた。

 

「ヴェリス」

「ナニ」

「全量を受けた場合、どれくらいかかる」

「概算、三年」


 三年。

 

 その間、漏洩は続く。

 ヴェリスも動けない。城塞都市の遺跡への定期補充が滞る。

 目的が果たせない。

 

「短縮、可能。

 タダシ、損耗リスク増大」

 

 レオンは思考を止めない。

 短縮。

 リスクあり。

 

「……許容範囲の問題だな」

 

 ただし。

 エルフ側にとっては違う。

 遺跡の魔力は、防壁の根幹だ。

 それを失えば、里は裸になる。

 反対が予測される。

 理解はできる。

 それでも、選択は変わらない。

 

 

 歩を進める。

 やがて、気配が戻ってきた。

 

 ざわめき。

 声。

 足音。

 張り詰めた空気。

 

 異常が、顕在化していた。

 

 

【シーン②:エルフの里】

 里は、騒然としていた。

 エルフたちが行き交い、声を張り上げる。

 普段の静けさはない。

 

「おい!」


 背後から声が飛ぶ。

 振り返ると、ガウィンが駆けてきた。後ろにはヘレナもいる。

 

「やばいのが来てる」

 息は乱れていない。

 どこか楽しげだった。

 

「何だ」

「ヒュドラだ」

 短く言い切る。

 

 フェルシオーネの表情が固まる。

「……それは本当ですか」

「ああ。遠目に見えた。

 真っ直ぐこっち来てる」

 

 レオンは動じない。

「規模は」

「でかい。丘みたいなもんだ」

 ガウィンは笑った。

「首が何本かなんて、数える気も失せたな」


 ヒュドラ。

 多頭の蛇型魔獣。

 再生能力が異常に高く、毒もある。


 この規模なら、別物だ。

 

 

「狙いは」

「遺跡だろうな」

 ガウィンは肩をすくめる。

「魔力に引き寄せられているようだぜ」


 理屈は通る。

「長老は」

「会議やってる」

「行く」

 レオンはそれだけ言って歩き出した。



【シーン③:長老の樹】

 内部は、張り詰めていた。

 円形の空間。

 半樹の長老の前にエルフたちが集まり、議論している。

 

「防壁を三層にするべきだ」

「魔力が足りない」

「時間を稼げばいい」

 声が交錯する。

 

 フェルシオーネが前に出る。

「遺跡の調査は終わりました」

 視線が集まる。

 長老の声が流れ込む。

「報告せよ」


 レオンが口を開く。

「装置は故障している」

 ざわめきが止まる。

「魔力は漏れている状態だ。

 停止しても、漏洩は止まらない」

 空気が変わる。

 

「……では、防壁を強化するしかない」

 誰かが言う。

「持たせるしかないな」

「時間を稼ぐ」

 議論がまとまりかける。

 

 レオンは首を振った。

「無理だ」

 短い否定。

 視線が刺さる。

 

「相手はヒュドラだ。

 防壁では持たない」

 

「ならばどうする」

 別の声。

 レオンは一拍置く。

 

「迎撃する」


 一瞬、静寂。

 

 

「……正気か」

 若いエルフが吐き捨てる。

 それを皮切りに、エルフの否定が噴出する。

 

「あれを撃破する?不可能だ」

「規模を見たのか」

「首の一本でも樹を砕くぞ」

 

 レオンは動かない。

 

 別の声が続く。

「あんなもの、相手にできるはずがない」

「時間を稼げば、被害を抑えられるのでは」


「無理だ。崩れる」

 レオンが被せるように言う。

 

「防壁はいずれ破られる。

 その前提で考えろ」

 若いエルフが一歩踏み出す。

「なら、どうしろと言う」


 レオンは視線を上げる。

「迎撃が不可能なのは、現状の戦力だけで考えているからだ」

 空気が止まる。

 

「遺跡の魔力を使う」

最後までお読みいただきありがとうございます!

もし「面白い!」「続きが気になる」と思ってくださったら、

★や感想で応援していただけると、執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。