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マギ・エンジニアリング  作者: 竜屋
喪失編
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喪失編 エピローグ 旅立ち

【シーン①:道】

 街道を二人の影が往く。

 まだ低い陽が背後から差し込み、影を長く引き伸ばしていた。

 乾いた土を踏む音が、規則的に続く。

 乗合馬車がそれを追い越してゆく。車輪が跳ね、薄く泥が飛ぶ。

 御者は一瞥をくれただけで、何も言わず去っていった。

 平穏な二人旅に見える。

 そう見えるように整えている。


 春になっていた。

 冷えは残っているが、風は柔らかい。

 遠くの畑には淡い緑が広がり始めている。



 レオンにとって誤算だったのは、旅の支度だった。

 ヴェリスを連れて旅立つからには、極秘でなければならない。

 実家暮らし、周囲の目がある中で、準備をする。

 

 金が要った。

 学院時代に購入した本を手放した。

 散歩と称して狩りをし、小銭を稼ぐ。

 

 気づけば、冬を迎えていた。


――タイミングが悪い。


 冬の旅立ちは、この地方では死に直結する。

 魔獣より、盗賊より、寒さは恐ろしい。

 装備では補いきれない領域がある。

 即座に動きたいレオンを、踏みとどまらせるには十分だった。


 結果として、待機を選択した。

 ヴェリスを神殿奥に留め置き、季節が移るのを待つ。

 焦る気持ちはある。

 しかし、生存率を優先する。


 雪が解け始める。

 地面が露出し、泥が増える。

 移動はしづらいが、凍結よりはましだった。



 ここ数日は晴れ間が続き、街道は雪のぬかるみから脱却していた。

 道端には草が萌え始めている。

 水たまりに空が映り、踏むたびに揺れる。


 途中、小さな荷車が立ち往生していた。

 車輪がぬかるみに取られている。

 老人が一人、困り果てていた。


 レオンは足を止める。

 状況を確認する。

 荷は軽そうであり、力点を変えれば動く。

 だが、地面は柔らかく、足場が取れない。

 ひとりでは難しい。


 レオンはヴェリスの手を取った。


 触れた瞬間、流れが変わる。

 自分の内側とは異なる魔力が、経路に入り込む。

 押し込まれるのではない。

 自然に接続される。


 外部供給。


 意識を合わせる。

 身体強化の詠唱を組む。

 体への負担を抑えつつ、荷車を動かせる出力に制御する。

 流れは安定している。

 問題はない。

 

 薄い光がレオンを包んだ。


「押すぞ」


 短く言い、車輪の位置を調整する。

 角度を変え、力を一点に集める。

 

 荷車が動いた。

 そのまま押し出す。

 荷車は道に戻った。


 老人は何度も頭を下げ、礼を言った。

 対価は断った。

 必要な処理だっただけだ。


 再び歩き出す。

 悪くない、と思った。



 分かれ道に差し掛かる。

 右へ行くと王都。


 石標は風雨に削られ、文字が薄れている。

 それでも判別はつく。


 この分かれ道に見覚えがあった。

 数年前に馬車に乗って、この道を右に行った。

 揺れの少ない馬車。整備された道。

 当時は、それが基準だった。


 何かの感情が、胸の奥で動いた。

 懐かしさなのか、感傷なのか。

 定義できない。

 レオンは思考を止めた。


「マスター」

 立ち止まっていたレオンに、ヴェリスが声をかける。


「なんでもない」


 視線を上げる。

 進む方向は決まっている。


 左の道へ進路を取る。

 踏み跡は少ない。

 整備も行き届いていない。


 目指すは、商都ラインバッハ。

 大河に面した冒険者の街だ。


 情報は断片的だが、目的には合う。

 人が集まり、物が流れ、魔石も動く。


 道は続いてゆく。

 足音は変わらない。


 レオンは空を見上げた。

 雲は薄く、青が広がっている。


 世界は広い。

これにて「喪失編」は終了となります。


最後までお読みいただきありがとうございます!

もし「面白い!」「続きが気になる」と思ってくださったら、

★や感想で応援していただけると、執筆の励みになります!


次回から、「冒険者編」へ入ります。

また、冒険者編の予告動画も作成しましたので、

よろしければあわせてご覧ください。

https://youtube.com/shorts/RhhVim0rVx8


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◆喪失編 設定資料◆

【主要キャラクター】

・レオン・ライナー

  年齢/外見:15歳の男性

  性格・特徴:冷静な分析家。人間関係が苦手。言葉少な。

  役割・関係性:主人公。ライナー家長男。魔術学院で魔力の器を損壊して魔力半減。

・カール・ライナー

  年齢/外見:40代男性。黒髪総髪。顎髭

  性格・特徴:厳格かつ戦闘能力高。状況判断能力に長ける。身体強化魔法の使い手

  役割・関係性:レオンの父。辺境守備隊隊長。

・クララ

  年齢/外見:レオンより一つ上の女性

  性格・特徴:優しく行動的。おせっかい。普段はおっとりだが、トラブル好き。二面性。

  役割・関係性:レオンの幼馴染。

・グスタフ・ヴォルス

  年齢/外見:40代男性。無骨

  性格・特徴:高い戦闘能力。豪快だが知略家。大剣を正確に扱い、戦場で判断力が高い。

  役割・関係性:ルーカスの父。熟練冒険者。

・クラウス

  年齢/外見:柔和な男

  性格・特徴:魔道具を駆使する魔術師

  役割・関係性:グスタフのパーティーメンバー。熟練冒険者。


【魔法】

・ミラージュ

  幻影魔法。レオンのオリジナル魔法。幻影を投射する。


【その他】

・マギアギア

  約千年前に「三賢者」のひとりが作成した、自律行動する人形型魔道具。

  白い躯体と頭部から藍色の管がいくつも伸びる。

  特大の魔石を精錬圧縮加工した魔力核を原動力としている。

  性格はおとなしく、マスターに忠実。製作者の趣味で、マスターには少し甘えた感じで接する


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