第40話 限界
【シーン①:破断】
爆炎が、空間を埋める。
視界の端から端まで、赤。
熱と圧が同時に押し寄せる。
――広域制圧。
想定通り。
アブソーブで耐性を上げ、レオンは踏み込む。
まだ熱の舞う爆炎の外縁へ、最短距離で侵入する。
風を撃つ。
「ヴェントダート」
細く鋭い風の矢が走る。
直線。最短。最速。
クラウディアの前面に、光が展開される。
シールド。
――引き出した。
次の瞬間。
風を重ねる。
「ヴェント」
爆炎の残滓を巻き上げる。
煙が広がり、視界を奪う。
同時に、影を走らせる。
幻影、突撃。
――欺瞞して裏を取る。
だが。
白い線が、煙を裂いた。
「レイ」
一閃。
幻影が消える。
煙幕に穴が開く。
「レイ」
後続の光線が、こちらにも飛んでくる。
「パリィ」
弾く。
――見えている。見られている。
分析が一つ進む。
一拍の後、クラウディアの周囲に光の収束が見られる。
二本。
三本。
四本。
連射。
軌道修正なし。
純粋な出力で押し潰す。
――切り替えた。
二本は避ける。
一本は弾く。
残り一本。
「シールド」
足が止まる。
正面から受ける。
しかない。
圧力。
視界が揺れる。
「……受けたわね」
声。
その瞬間。
受けた光が、伸びる。拡張する。増大する。
照射。
一本の光が、押し続けてくる。
――照射型。
押し込まれる。
足が沈む。
床が軋む。
シールドを維持する。
維持。
維持。
維持。
「降参しなさい」
声が届くが、無視する。
計算する。
――照射型光線魔法。高コスト確定。持続には限界がある。
ならば。
――耐えきればいい。
シールドの効率は最適化済み。
消費は削っている。
問題ない。
「ここで耐えきれないような、甘い最適化はしていない」
口の中で、言葉が形になる。
押される。
さらに押される。
魔力を流す。
流し続ける。
――出力差はある。
――だが、制御で埋める。
「出力差などという生まれつきの才能に負けるわけにはいかない」
流す。
流す。
流す。
圧力に手が震える。
それでも力を込める。
違和感。
わずか。
だが、確実に。
――減りが早い。
魔力の流出量が、想定と合わない。
消費ではない。
漏れている。
どこかからか。
抜けている。
流しているのに、満たせない。
計算が、ずれる。
誤差。
拡大。
――おかしい。
ノイズ。
……原因は――
魔力枯渇。
先日の損傷。
回復しきっていない。
だから、漏れる。
だが。
――関係ない。
「今はそれを言い訳にできない」
押し返す。
さらに流す。
さらに流す。
シールドが軋む。
光が、押し込んでくる。
「いい加減にしないと、危険よ」
声。
遠い。
意味を持たない。
出力がわずかに落ちた。
クラウディアの表情が曇って見えた。
――まだいける。
――まだ足りる。
――まだ耐えられる。
計算を、無理やり維持する。
破綻を認めない。認められない。
押し込む。
押し返す。
押し込まれる。
その瞬間。
何かが、割れる音がした。
内側。
体の中心で。
視界が白く弾ける。
力が抜ける。
意識が途切れる。
――届かなかった。
[Critical: HardwareAbortion]
Cause: Structural attrition due to excessive resource extraction.
Object: Core_Mana_Storage (Accumulated Fatigue Detected).
[Error: RuntimeException]
Cause: Operation continued beyond safety depletion point.
Status: Negative_Resource_Access.
[Warning: ResourceDepletion]
Source: InternalStorage(100%)
Status: Total Drain (Accelerated by pre-existing micro-leakage).
[Critical: SystemCorruptionDetected]
Status: Structural damage to Mana_Container.
Report: Storage capacity reduced to 42% of original specifications.
Detail: Irreversible sector failure. Recovery: Unlikely.
Initiating Emergency Shutdown of User Interface...
[System: Rebooting...]
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