第35話 対抗戦・後編
【シーン①:激戦】
観客は熱狂していた。
昨年の王都での開催と比べて、熱気が段違いだ。
観客席には褐色の肌を露出した応援が目立ち、指笛が響く。
異国にいるような錯覚すら覚える。
それでも、クラウディア人気は健在で、レオンの落ち着きもいつも通りだった。
向こうの入場門から、冬都校の代表が現れる。
レオンはそこに知った顔を見つけた。
――ドルト。
あの重力魔法の使い手だ。
ふと、昨日見かけた影は、ドルトではなかったかと思う。
今となっては確かめるすべはない。
警戒だけは強める。
試合が開始される。
やはり、ドルトが冬都校のアタッカーだ。
猛然と突っ込んでくると、派手に爆炎魔法をばらまく。
レオンは爆炎をかわすと、素早く隠れる。
遮蔽から遮蔽へ細かく動き、的を散らす。
最初は様子見。
それが戦いのセオリーだが、ドルトにはその考えはない。
爆炎の次は、得意の重力魔法だ。
レオンが隠れる遮蔽を端から潰そうとしてくる。
もちろん岩壁のような障害物は重力魔法で壊れないが、その付近にいるレオンを範囲で捕えようと、雑に連発する。
魔力にものを言わせる戦法だ。
「ヴェント」
数発の詠唱で呼吸を読んだレオンは、ドルトの次の詠唱に合わせて風で砂を巻き上げる。
詠唱途中の口に砂が入り、詠唱が中断される。
「卑怯な」
ドルトが非難の声を上げる。
レオンは目を合わせたまま、笑みを返した。
「ライト・マクシメル・ループ3」
閃光が三つ、ドルトの周りで炸裂する。
目くらましされたドルトへ、レオンの剣撃が迫る。
辛うじて受け流す。
ドルトの剣技はなかなかだ。
むしろ、剣技の授業を疎かにしていたレオンには難しい。
距離を取りながら、床に触れる。
罠を仕込む。
視界の端で、クラウディアが動いた。
コマンダーとしての位置を保ちながら、バックアッパーの射線を遮るように味方を誘導している。
無駄がない。
レオンの動きを、すでに前提に組み込んでいる。
「レオン!左前方から!回避」
クラウディアの声にレオンは右前に転がる。
今いたところを風の刃が通過する。
相手のバックアッパーからの牽制攻撃だ。
戦局は複雑になってゆく。
「フラムボルト・ループ3・レイト」
高所から重力魔法を連発するドルトへ、あえて遅延をかけて三連発にした炎を飛ばす。
有利なポジションを追われ、次のポジションを探すドルト。
その瞬間、ドルトの足元が沈んだ。
膝下まで地面にめり込む。
罠。
気が付いたときには遅い。
「テラモデファイ」
レオンが地面を硬化させる。
抜けない。
ドルトの表情が変わる。
余裕が消えた。
魔力にものを言わせる戦法が、初めて機能しない。
自分より格下のはずの相手に、流れを握られている。
その事実が、ドルトの次の判断を遅らせる。
ドルトの焦りが伝播する。
冬都校のバックアッパーもコマンダーも、ドルトのフォローに向かおうとする。
「いまです」
レオンの合図に、クラウディアの一撃が煌めく。
「レイ」
一条の光の束が、冬都校のバックアッパーを撃った。
吹き飛ぶ。
そして、立ち上がれない。
ドルトはまだ足が抜けない。
一対三。
魔法戦で数的不利は絶望だ。
ほどなく決着がついた。
歓声が上がる中、客席に応えたクラウディアは、レオンに静かに微笑みを送った。
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