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マギ・エンジニアリング  作者: 竜屋
魔術学院編
38/111

第35話 対抗戦・後編

【シーン①:激戦】

 観客は熱狂していた。

 

 昨年の王都での開催と比べて、熱気が段違いだ。

 観客席には褐色の肌を露出した応援が目立ち、指笛が響く。

 異国にいるような錯覚すら覚える。

 それでも、クラウディア人気は健在で、レオンの落ち着きもいつも通りだった。

 

 向こうの入場門から、冬都校の代表が現れる。

 レオンはそこに知った顔を見つけた。

 

――ドルト。

 あの重力魔法の使い手だ。

 

 ふと、昨日見かけた影は、ドルトではなかったかと思う。

 今となっては確かめるすべはない。

 警戒だけは強める。

 

 

 試合が開始される。

 

 やはり、ドルトが冬都校のアタッカーだ。

 猛然と突っ込んでくると、派手に爆炎魔法をばらまく。

 レオンは爆炎をかわすと、素早く隠れる。

 遮蔽から遮蔽へ細かく動き、的を散らす。

 

 最初は様子見。

 それが戦いのセオリーだが、ドルトにはその考えはない。

 

 爆炎の次は、得意の重力魔法だ。

 レオンが隠れる遮蔽を端から潰そうとしてくる。

 もちろん岩壁のような障害物は重力魔法で壊れないが、その付近にいるレオンを範囲で捕えようと、雑に連発する。

 魔力にものを言わせる戦法だ。

 

「ヴェント」

 数発の詠唱で呼吸を読んだレオンは、ドルトの次の詠唱に合わせて風で砂を巻き上げる。

 詠唱途中の口に砂が入り、詠唱が中断される。

 

「卑怯な」

 ドルトが非難の声を上げる。

 レオンは目を合わせたまま、笑みを返した。

 

「ライト・マクシメル・ループ3」

 閃光が三つ、ドルトの周りで炸裂する。

 目くらましされたドルトへ、レオンの剣撃が迫る。

 辛うじて受け流す。

 ドルトの剣技はなかなかだ。

 むしろ、剣技の授業を疎かにしていたレオンには難しい。

 

 距離を取りながら、床に触れる。

 罠を仕込む。

 

 視界の端で、クラウディアが動いた。

 コマンダーとしての位置を保ちながら、バックアッパーの射線を遮るように味方を誘導している。

 無駄がない。

 レオンの動きを、すでに前提に組み込んでいる。

 

「レオン!左前方から!回避」

 クラウディアの声にレオンは右前に転がる。

 今いたところを風の刃が通過する。

 相手のバックアッパーからの牽制攻撃だ。

 

 戦局は複雑になってゆく。

 

 

「フラムボルト・ループ3・レイト」

 高所から重力魔法を連発するドルトへ、あえて遅延をかけて三連発にした炎を飛ばす。

 有利なポジションを追われ、次のポジションを探すドルト。

 

 その瞬間、ドルトの足元が沈んだ。

 膝下まで地面にめり込む。

 罠。

 気が付いたときには遅い。

 

「テラモデファイ」


 レオンが地面を硬化させる。

 抜けない。

 

 ドルトの表情が変わる。

 余裕が消えた。

 魔力にものを言わせる戦法が、初めて機能しない。

 自分より格下のはずの相手に、流れを握られている。

 その事実が、ドルトの次の判断を遅らせる。

 

 ドルトの焦りが伝播する。

 冬都校のバックアッパーもコマンダーも、ドルトのフォローに向かおうとする。

 

「いまです」

 

 レオンの合図に、クラウディアの一撃が煌めく。

 

「レイ」

 一条の光の束が、冬都校のバックアッパーを撃った。

 吹き飛ぶ。

 そして、立ち上がれない。

 ドルトはまだ足が抜けない。

 一対三。

 

 魔法戦で数的不利は絶望だ。

 ほどなく決着がついた。

 

 

 歓声が上がる中、客席に応えたクラウディアは、レオンに静かに微笑みを送った。

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