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マギ・エンジニアリング  作者: 竜屋
幼年編
14/17

第14話 繋がる式

【シーン①:自室】

 机の上に紙が広げられていた。

 白神祭で見た紋様を、記憶だけを頼りに書き起こしたものだ。

 完全ではない。

 線は抜け、接続も曖昧だ。

 だが、それでも異様だった。

 

 規則がある。

 ただの装飾ではない。意味を持って並んでいる。

 レオンは指で線をなぞる。

 

――流れている。

 

 点と線が繋がり、魔力の経路を形作っている。

 その途中で、違和感に引っかかった。

 同じ処理が続いているはずの箇所。

 だが、記述は一つしかない。

 

「……おかしい」

 

 本来なら、同じ記述が連続して並ぶはずだ。

 だが、そうなっていない。

 代わりに、その手前に別の記述が挟まっている。

「……この前の部分は何だ?」

 視線を寄せる。

 見覚えがある。

 

――どこかで見た。

 

 記憶を辿る。

 庭の噴水。

 水を一定量、絶えず噴き上げ続ける魔法。

 その記述の一部と、目の前の紋様が重なった。

 

――似ている。

 

 完全ではない。

 だが、方向は同じだ。

「……魔法と魔法を繋いでる?」

 違う。

「……繋がるように、なっている?」

 小さく呟く。

 

 単純に並べているわけではない。

 間に何かを挟んでいる。

 その“何か”が、同じ処理を繋いでいる。

 

 レオンはもう一度、流れを追う。

 対象を検知する部分。

 そこから先へ繋がる経路。

 そして、また同じ位置へ戻っている。

 

 終わりがない。

 途切れていない。

「……これ」

 言葉が落ちる。

 

――繰り返しの記述か。

 

 

 一度きりではない。

 同じ魔法を、連続して実行する構造。

 レオンの呼吸が、わずかに止まる。

「……AI、この部分はどういう動きをしている?」

 

≪同一処理を連続して実行する構造と推定されます≫

 

――やっぱり。

 

 一つずつ発動しているわけではない。

 最初から“続くように”なっている。

 レオンは息を呑んだ。

「……できるのか」

 

≪理論上は可能です。既存の魔法に対し、連続実行構造を付加することで成立します≫

 

 思考が加速する。

 今までは、一回ごとに詠唱していた。

 必要な回数だけ、繰り返す。

 だが。

 

――最初から必要回数分、繰り返すように指定しておけばいい。

 

 一度の詠唱で、連続して発動する。

 その発想はなかった。

 

 レオンは視線を横にずらす。

 別の箇所。

 流れが途中で分かれている部分。

「……こっちは」

 一瞬、考える。

「……分岐か?」

 

≪可能性が高いと推定されます。条件に応じた処理選択構造と考えられます≫

 

――選んでいる。

 

 ただ繰り返すだけではない。

 状況に応じて、処理を変える。

 結界は、侵入を許さない。

 侵入者を排除する。侵入者でなければ通す。

 そういう構造だ。

 レオンはゆっくりと息を吐いた。

 

――繋がっている。

 

 

 だが、単純ではない。

 脳裏に以前のやり取りがよぎる。

 詠唱を組み合わせようとしたとき、うまく繋がらなかった。

 あのときは理由がわからなかった。

 だが、今は違う。

 

「……そのままじゃ、繋がらない」

 

 順番がある。

 分岐がある。

 条件がある。

 それらを挟んで、魔法同士は初めて繋がる。

 

 レオンは紙を見下ろす。

 複雑に見えていた紋様が、少しずつ意味を持ち始める。

 

――繰り返し。

 

――分岐。

 

――接続。

 

 それぞれが役割を持ち、全体として動いている。

 

「……魔法を、……組んでる」

 

 自然に言葉が出た。

 今までとは違う。

 一つずつ発動するものではない。

 組み合わせて、動かすもの。

 設計するもの。

 

 

 レオンは背もたれに体を預けた。

 視線は、紙から離れない。

 理解しきれているわけではない。

 読めているわけでもない。

 だが。

 

――触れた。確実に。

 

 静かな部屋の中で、その確信だけが残った。

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