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マギ・エンジニアリング  作者: 竜屋
幼年編
11/18

第11話 分割と同時

【シーン①:連携】

 森の奥、少し開けた場所に出たときだった。

 気配がまとまっている。

 レオンは足を止めた。

「……いるな」

 ルーカスもすぐに気づく。

「数いるな」

 視線の先。

 木々の間に、小型の影がいくつも動いている。

 

 ハウルパピー。

 群れで行動する魔獣だ。

 単体なら問題ないが、数が揃うと厄介になる。

 連携して動く分、一体ずつ処理すると時間がかかる。

 

――まとめて処理する。

 

「突っ込むか?」

 ルーカスがいつもの調子で言う。

「待て」

「なんだ?」

「散らすんだ。

 前に出て、動かしてくれ。

 ばらけさせる」

 一瞬だけ間があった。

「……いいぜ」

 次の瞬間には、もう地面を蹴っている。

 

 速い。

 

 一直線に群れへ飛び込む。

 ハウルパピーが反応する。

 吠え、散開する。

 統率が崩れる。

 それでいい。

 

 レオンは一歩下がる。

 呼吸を整える。

 

――同時に処理する。

 

 通常、詠唱は対象ごとに一つずつ。

 だが同一魔法なら、対象だけを分離できる。

 共通部分を先に組み、そこに個別指定を重ねる。

 修練場では試している。

 

――問題は威力が足りるか。

 

≪理論上は成立します。出力は分散されますが、対象数と配分次第で致命域に到達可能です≫

 

 頭の内側に、あの平坦な声が返ってくる。

 迷いは消える。

 

 息を吸う。

 一度だけ、長く詠唱する。

「ヴェントダート……」

 

 空気が張る。

 見えない何かが、そこに組み上がる。

 

 まだ、撃たない。

 保持する。

 崩さないように、維持する。

 

 次の瞬間、短く刻む。

「アルス」「ツヴィット」「デルス」

 短く、正確に。

 散った群れ、それぞれに。

 

――揃う。

 

 一斉に放たれた。

 風が走る。

 複数の軌道が、同時に空間を切り裂く。

 一体、二体、三体――それぞれを、正確に貫く。

 混乱した残りが足を止める。

 

 その隙を、ルーカスの剣が逃さない。

 音が遅れて届く。

 地面に倒れる音。

 終わった。

 

 

 ルーカスが振り向いた。

「……なんだ今の」

 レオンは答えない。

 結果を確認する。

 全て、倒れている。

 取りこぼしはない。

 

――いける。

 

「一気に全部やったのか?」

「……そうだ」

「へえ」

 短く笑う。

「楽でいいな、それ」

 事実だった。

 効率がいい。

 無駄がない。

 

 だが。

 呼吸が、少し重い。

 胸の奥に鈍いノイズが残っている。

 これまでよりも、明らかに。

 

――なぜだ。

 

≪原因は――≫

 

「なあ、これも全部もらっていいのかよ?」

 ルーカスの大声で、途切れた。

 すでに一体の解体を始めている。

「……好きにしろ」

「多いよ。手伝えよ」

「……遠慮する」

「ホントにいらないんだな」

 気にせず作業を続ける。

 

 血が地面に広がる。

 レオンは一歩距離を取った。

 AIの返答は途切れたままだ。

 後で聞けばいい。

 

――そう思いながら、頭の片隅に引っかかりだけが残った。

 

 ルーカスが顔を上げる。

「これ、さすがに持ちきれないな」

「ああ、無理だな」

「じゃあ食うか?」

「やめろ」

 即答した。

 ルーカスが笑う。

「なんだよ」

 いつも通りだ。

 

 

 群れは全滅している。

 結果は出た。

 並列実行は成立した。

 詠唱時間も短縮できる。

 

 ただ、消耗の理由はまだわからない。

 それだけが、残っている。

最後までお読みいただきありがとうございます!

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