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マギ・エンジニアリング  作者: 竜屋
最適化編
105/111

第95話 モルティス

【シーン①:共同墓地】

 レオンは調査を始めた。

 冒険者ギルドの情報網を利用し、各地で増え始めた怪異を追う。

 

「死んだはずの人間を見た」

「埋葬後に動いた」

「夜道に首のない騎士が出た」


 どれも、以前なら酒場の与太話で終わるような内容だった。

 それが今は実際に起こりうる現象だった。

 

 レオンたちは、街外れの共同墓地へ来ていた。

 夕闇が訪れる頃、火の玉を見た者がいるという。

 

 墓石が並んでいる。

 雪は浅い。

 吐く息だけが白かった。

 

 

 レオンは墓地の片隅へ腰を下ろす。

 ガウィンは腕を組み、周囲を警戒していた。

 ヘレナはマントを寄せる。

 

「こんな場所で待ち合わせする趣味、ないんだけど」

「俺もだ」

 ガウィンが短く返した。

 

 薄曇り。

 今日は月が見えそうにない。


 陽が稜線に隠れると、途端に闇だけになった。


 ふと、墓標の影が揺れた。



【シーン②:人影】

 人影が立っていた。

 

 いつの間にか。

 正面に。

 

 気配もない。

 足音もない。

 闇の中から、そのまま滲み出たかのように。

 

 ガウィンが即座に剣へ手をかける。

 ヘレナも後ろへ下がり、ナイフを抜いた。

 レオンもアミュレットへ触れる。

 

 この感覚。

 知っている。

 

――ガレリウス。

 

 しかし、目の前の男はガレリウスよりかなり小柄だった。

 深く被ったローブ。

 隙間から覗く口元には、深い皺。

 灰色の髭。

 若作りを好んだガレリウスとは違う。

 老いた男だった。

 

 それでも、漂う空気は同質。

 世界から、少し外れている。

 

 

 ガウィンが剣を抜く。

「誰だ、お前」


 男は答えない。

 レオンだけを見ていた。



【シーン③:モルティス】

「感謝、しておる」

 低い声だった。

 

 声量は小さい。それでも、はっきりと聞こえる。

 音ではない何かが、直接伝わってくる。

 

「よくぞ、境界を崩してくれた」

 レオンは一呼吸置いた。

「……何者」

 男の口元が、わずかに歪む。

 

「我は、“幽界”に住まう亡霊」


 間が落ちる。


「モルティス」



 レオンの眉が動く。

 名前だけは知っていた。

 ヴェリスを作り上げた賢者ギニアス。

 ヴェリスを強奪した賢者ガレリウス。

 そして、三賢者最後の一人”モルティス”。

 

 ヘレナが小さく息を呑む。

「……賢者……モルティス」


 モルティスは否定も肯定もしなかった。

 ただ、静かに笑っている。

 

 

 風が吹く。

 モルティスのローブの裾が揺れた。

 

 

【シーン④:境界】

「やっぱり、ガレリウスのお仲間かよ」

 ガウィンが剣を構えなおす。

 

 踏み込もうとした。

 その間を読んで、モルティスが口を開く。

「ちがう」


 静かな声と圧。


 ガウィンの動きが止まる。

 

「ガレリウスのような強欲と、一緒にせんでくれ」

 モルティスが、わずかに肩を落とした。

「わしはもう、望むものなどない」



 雪が舞いだした。

 モルティスの吐く息だけが、白くない。

 

「素直に、礼を言いに来たのじゃ」

 モルティスが、レオンに向き直る。

 

「わしには思いもせぬ方法と力で、世の理を変えてくれた。

 そこの小僧にな」

 

 レオンは黙っていた。

 

 

 目の端で、青白い火が浮かんだ。

 一瞬で消える。

 

 

 モルティスは続けた。

「理解しておらぬのか」

 レオンの目が細くなる。

 

「ならば、教えようか」

 口角が上がる。

 

「お主が、何を成したのか」

最後までお読みいただきありがとうございます!

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