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第49回:黒猫の奇跡

冷たくなった龍馬を前にタマは、三本の尻尾を静かに揺らしていた。夜の静寂の中、タマの体から淡い光が溢れ出す。

「……しょうがないな。君を助けるのが1000年生きた僕の最後の仕事だ。貰った煮干し分は、しっかり働かされたね……坂本龍馬」

タマは三本の尻尾を龍馬の胸に重ねた。それは、猫又として1000年生きて得た強大な妖力のすべてを一つの命に注ぎ込む儀式だった。

光が強まるにつれ誇らしげだった三本の尻尾は、一本ずつ光の中に溶けて消えていく。

「……ん、……う……」

奇跡は起きた、止まっていた龍馬の鼓動が力強く時を刻み始めたのだ。

龍馬がゆっくりと目を開けた時、そこには朝日が差し込んでいた。

「……タマ? わしゃあ、生きて……」

傍らには、泥だらけで眠る一匹の黒い子猫がいた。龍馬がその体を抱き上げると、かつての妖気は消え失せ尻尾も一本だけの何処にでもいる普通の子猫に戻っていた。

(……あーあ、身体が軽いな。もう君の言葉もわからないし、予感も当たらない。でも、これでいいんだ……)

タマはただ一度、小さく「ニャー」と鳴き、龍馬の懐で安らかな寝息を立てるのだった。

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