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第48回:坂本龍馬の最期
刺客が去り、辺りに静寂が戻った。龍馬はようやく薄く目を開けたが、背中の傷から体温が奪われ指一本動かすことができなかった。
「……あー……タマ……わしゃあ、本当にドジを踏んだぜよ」
龍馬は震える手でタマを撫でようとしたが指先が地面を虚しく掻く。
「……馬鹿だな龍馬、いつもみたいに運良く逃げ切れると思ったんだろ。君は僕を世界の海へ連れて行くんじゃなかったのかい」
タマの三本の尻尾が、龍馬の頬を温めるようになぞった。龍馬は最期まで、おどけたように口角を上げた。
「……おんしゃあ、最後まで……文句の多い猫じゃったのう。でも、おんしゃがおらんと、わしの人生……退屈で死にそうじゃった……」
龍馬の瞳から次第に光が失われていく。
「……タマ、あとは……自由に……」
その言葉を最後に龍馬の腕が力なく落ちた。幕末を駆け抜けた坂本龍馬、享年三十三。
「……勝手なこと言わないでよ。僕は君の自由に付き合ってあげてたんだ。勝手に死ぬなんて許さないからね」
冷たくなった龍馬の胸の上でタマは自らの命を削る最後の仕事を決意し、夜空に向かって長く鋭く鳴くのであった。




